金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
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59:阿部泰郎 監修 『室町時代の少女革命 「新蔵人(しんくろうど)」絵巻の世界』

2017-05-12 16:44:24 | 17 本の感想
阿部泰郎 監修 『室町時代の少女革命: 『新蔵人(しんくろうど)』絵巻の世界』(笠間書院)
★★★★☆

【Amazonの内容紹介】

少女は男となることを望んだ…!
男装して宮中にあがり、帝の愛をめぐって姉と争う少女の物語絵巻。
男性だけが成仏できるとされた時代、女性はどのように生きたのか―。
人物絵の隣に台詞が書かれた「室町時代のマンガ」とも言える、
ユニークな佳品。
マンガ的吹き出しつき現代語訳に加え、絵巻全体を写真で紹介。
本作品が持つ意義も多方面から、あますところなく伝えます。

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ネットで見かけて手に取った本。
『新蔵人』という物語の存在自体を知らなかったので、
新鮮な気持ちで、非常に興味深く読めた。
一冊に「絵巻物の図版とあらすじ・古文・解説」がおさまっていて、
わかりやすく易しい内容になっているのも良い。

しかし、帯から予想したほど劇的な内容ではなかったな。
ヒロインにまったく好感が持てず、ツッコミどころ満載。
ヒロインの家族はなかなかにキャラが立っているのだが、
そのキャラクターを活かせておらず、素人目に見ても
物語としての出来はあまりよくないんじゃないかと思う。

〈主な登場人物〉

父&母:「親の言うことも聞かないだろうから、好きなように生きなさい」と
  なかなか先進的な考えを持ってそれを実行している。

長女:「出家したい! 出家したい! 頭丸めてすっきり!」

長男:帝の覚えめでたく、家柄不相応に取り立てられるが、
   結婚したとたん、嫁におぼれて出仕しなくなる。

次女:登場人物中、唯一の常識人に思える。妹に嫌な思いさせられても、
   最終的には親切だし。

三女:ヒロイン。男として生きたい! と言ってたくせに、
   帝の子を産んだ姉に嫉妬したあげく、帝のお手がついて「してやったり」。
   帝に湿っぽく恨み言を言ったりして、サバサバを気取ったネチネチ女。

ヒロインの中途半端さは、ある意味リアルなのかもしれない。
思いあがった行動を取り続けたあげく、顰蹙を買い、
帝の愛も失って終わる。
ヒロイン補正がないあたりは好感が持てる。

解説を読むと、男の枠にも女の枠にもおさまることができないヒロインが、
中性的な存在である尼になるという展開の意味もわかり、楽しかった。



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