湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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☆コルンゴルド:交響曲嬰へ長調

2017年07月20日 | ドイツ・オーストリア
○プレヴィン指揮LSO(DG)1996/6・CD

唯一の交響曲、大曲だが早熟なこの人にしては最晩年作であり、もともとあった「ウィーン世紀末的なもの」に多要素がくっついてもはやバーバーの作品と言ってもわからないような無個性さを示してしまっている。構造も構成もオーソドックス、作りがしっかりしすぎている。むろんバーバーの管弦楽作品そのものは素晴らしく重厚で尖鋭性もあり、それを凌駕するような旋律の美しさ、忍ばせられた懐かしく妖しい移調・・・マーラーを通して見たワグナー(決して悲劇的ではない)もしくはツェムリンスキーやスクリアビンといった様子のアダージオ・・・がこの曲を際立たせており、こういう曲に慣れたプレヴィンと腕利きのロンドン交響楽団によって万人に聴き映えのする感じに仕上げられている。しかしまあ、プレヴィンの出自が中欧にあるにせよ中欧的な音のしない演奏で、律動的でかっこいい急峻楽章ではもうマーラーの匂いはゼロである。いや、マーラーの匂いなんてはなからしない。往年のウィーンの指揮者がウィーンのオケを振ったらまったく違っていたかもしれないが、それでもこの曲は既にウィーンの神童ではない、豪華な音の好まれたアメリカの映画音楽社会と融合しすぎて(ハリウッドがこの人から得た音楽的贈り物の大きさは言うに及ばないだろう、影響はラフマニノフにも匹敵する)、いろいろと取り込んでしまった職人的な大人の作品なのだ。若いころの作品とカップリングされており、そのツェムリンスキー風作品の浅薄さを聴くにつけ、いや、これはこれで時代の音、その時代においては興味深い作品であり、名作なのだろうが、、、考えさせられる作品ではある。○。

※2012/12/3の記事です

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