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預言者伝2

2010年07月13日 | 預言者伝関連

بسم الله الرحمن الرحيم

7.ハディージャ(御満悦あれ)との結婚:

フワイリドの娘、ハディージャ(御満悦あれ)は当時最も裕福で、賢く、礼節をわきまえた立派な女性でした。彼女は自分の豊富な財産を他人に運用させることで生計を立てていました。またアブー・ハーラという夫を亡くした寡婦でもありました。預言者(平安と祝福あれ)がとても信頼のおける人物で、誠実であり、寛大な性格の持ち主であることを耳にしたハディージャは、彼にシャームへ貿易のために旅してほしいと依頼しました。彼女は誰にも与えたことのない報酬を約束し、預言者(平安と祝福あれ)はマイサラという彼女の召使と共に出かけました。

預言者(平安と祝福あれ)がマッカに戻ると、ハディージャは自分の財産が守られているだけでなく、今までに見たことがない祝福に満ちていることに気付きました。そこでマイサラに、道中、彼(平安と祝福あれ)がどのような人物であったかを尋ねたところ、彼が高貴な性格と鋭い理性の持ち主であり、非常に信頼が置ける人であることが分かりました。地位と富に恵まれていたゆえにいろいろな人に結婚の申し込みを受けてもすべて断ってきていたハディージャは、預言者(平安と祝福あれ)のことを知った後、女友人であるナフィーサに心の内を明かします。話を聞いたナフィーサは、預言者(平安と祝福あれ)にハディージャと結婚するのはどうかと打診したところ、彼は承諾しました。預言者(平安と祝福あれ)が、おじ達にこのことを話した後、彼らはハディージャ(御満悦あれ)のおじのもとへ結婚の申し込みのために足を運びました。結婚はこの後すぐに成就しました。当時の彼女は40歳、預言者(平安と祝福あれ)は25歳でした。

ハディージャは、預言者(平安と祝福あれ)が初めて結婚する女性であり、イブラーヒームを除く彼の子全員を産んだ女性でもありました。また預言者(平安と祝福あれ)は、彼女が亡くなるまで他の女性を娶ることはありませんでした。

アル=カースィム(預言者(平安と祝福あれ)はアブ・ル=カースィムとも呼ばれる)に続いて、ザイナブ、ルカイヤ、ウンムクルスーム、ファーティマ、アブドゥッラー(彼らに御満悦あれ)が誕生します。娘達は全員イスラームに帰依し、ヒジュラも経験しますが、ファーティマ以外は預言者(平安と祝福あれ)の生前に亡くなっています。なおファーティマは、預言者(平安と祝福あれ)の死後、6か月後に後を追うように亡くなりました。

 

8.カアバ修繕と深刻な危機の回避:

預言者(平安と祝福あれ)が35歳になると、クライシュ族はカアバに屋根を作り、修繕することで合意します。修繕箇所は各家に割り当てられ、工事は進められていきましたが、黒石(非常に尊重されていた天国から降下された石)を誰がそれに相応しい場所に置くかで意見がまとまらず、問題になりました。なぜなら皆がその名誉に与ることを希望したためです。揉め事は4,5日続き、やがて戦争になりかけます。

アブーウマイヤ・イブン・アル=ムギーラ・アル=マフズーミーという男が、「マスジドに最初に入って来る男に決めさせるのはどうだろう」と提案し、人々が賛成したことで何とか争いは避けることが出来ました。そして最初に入って来た男が、預言者(平安と祝福あれ)でした。入ってきた彼を見た人は、「これは信頼おける男(アミーン。当時のニックネームでもある)だ。彼なら文句はない」と言いました。

人々の問題を聞いた預言者(平安と祝福あれ)は、一枚の布に黒石を載せ、各部族に布の端を掴んで持ち上げるよう指示しました。人々はその通りに行い、石を運ぶと、預言者(平安と祝福あれ)ご自身が石を手にとってあるべき場所に置きました。このような英知ある方法でクライシュ族は戦いを回避することが出来たのでした。

 

9.召命前の預言者(平安と祝福あれ):

預言者(平安と祝福あれ)は、召命前から原因不明の不安を感じていました。当時の彼は、アッラーが啓示と預言者性を彼に賜ることになるとは露ほども思っていませんでしたし、そのようなことを夢見たこともありませんでした。アッラーは仰せになっています:「このようにわれは,わが命令によって,啓示(クルアーン)をあなたに下した。あなたは,啓典が何であるのか,また信仰がどんなものかを知らなかった。しかしわれは,これ(クルアーン)をわがしもべの中からわれの望む者を導く一条の光とした。あなたは,それによって(人びとを)正しい道に導くのである。」(クルアーン相談章52節)、「啓典があなたに届けられることは,あなたの予期しなかったところで,偏にあなたの主からの慈悲である。だから決して不信心者を支持してはならない。」(クルアーン物語章86節)

またアッラーに英知の一つに、預言者(平安と祝福あれ)を文盲とし給うたことがあります。つまり彼は何も書けず、読めない状態だったため、このことで、彼は敵たちに、啓示に関する疑惑をかけられることはありませんでした。これに関するクルアーンの言葉:「あなたはそれ(が下る)以前は,どんな啓典も読まなかった。またあなたの右手でそれを書き写しもしなかった。そうであったから,虚偽に従う者は疑いを抱いたであろう。」(クルアーン蜘蛛章48節)

また預言者(平安と祝福あれ)は純粋な理性を持ち成長し、誉れ高い人徳を備えていました。彼は長い沈黙の中で熟考しつつ、当時の人々の生活や社会の風習を眺めていました。彼らの行為の中でも良いものには協力し、悪いものにはいつものようにそれから離れるようにしていました。飲酒せず、偶像のために屠られた肉を食べず、偶像の祝い事や祭りには出席しませんでした。むしろ幼少時からこのような偶像たちから身を遠ざけており、そしてそれらを一番に嫌っていました。またアッラートとウッザー(偶像神)にかけた誓いの言葉にも耐えられませんでした。

もちろん、当初から彼が保護される運命にあったことに疑いはありません。現世を楽しみたい気持ちが起こったり、喜ばしくない当時の風習に彼が目を向けようとすると、彼を保護しようとするアッラーの力が、彼の中に入り込むのでした。これについていくつかの話が伝承されています。

(次回はいよいよ預言者(平安と祝福あれ)がアッラーから使命を授かります。)

 

(参考文献:①「預言者伝」、アブー・アルハサン・アリー・アルハサニー・アンナダウィー著、ダール・イブン・カスィール出版、P110~114

②「封印された美酒」サフィーユッラフマーン・アルムバーラクフーリー著、ダール・アルフィクル出版、P38~40)

 


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