反転―闇社会の守護神と呼ばれて (幻冬舎アウトロー文庫) | |
田中 森一 | |
幻冬舎 |
まず、バブル前後の政財界をめぐる事件の真相や裏側が赤裸々に描かれているのが、臨場感があって大変面白かった。
1987年にバブルの恩恵を最大限に受けた信託銀行に入社した私も、渦中で経験していたことだったので。
また、特捜検事の仕事のノウハウが、裏をかくことにより、そのまま裏社会の依頼人のために使えるということも非常に面白かった。しかし、人間である以上、価値判断に従って動くべきで、その法知識を、どちらのために使うかということは重大な問題である。
実は、田中氏をモデルにしたかのようなドラマ「ある日、嵐のように」を2001年にNHKでやっていて(マキノノゾミ脚本)、佐藤浩市が、辣腕特捜検事から裏社会の代理人弁護士に転じるという設定だったし、香川照之(前はこんな役ばっかりだったのよね)が、転落するIT社長を演じていて、ホリエモン事件を予言していてすごいなと最近の再放送を見て思ったのだが。
ヤクザと警察は紙一重というが、実際、その論理は、寄って立つ基盤が法かそうでないかだけで、大して違いはないのかもしれない。
とくに、組織の論理が絶対で、仁義をきるとか、筋を通すとか、裏切り者は許さないとか、そういうことは共通している。
田中氏が弁護士になってからしたことは、もちろん非難に値することもあるだろうが、摘発されたのが、検察出身でありながら検察の裏をかき、妨害することへのっ見せしめという要素があるならば、それは、正義よりも組織の論理を優先することになり,
やはり、法の番人として、あるべき姿ではないと思う。
上告審の行方を注視したい。