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アメリカは、北朝鮮を核爆撃する

2016-09-13 23:24:48 | 徒然の記

 日高義樹氏著「アメリカは、北朝鮮を核爆撃する」(平成15年刊 徳間書店) 読了。

氏は昭和10年に名古屋市に生まれ、東京大学卒業後にNHKに入社している。ニューヨーク、ワシントンで勤務し、後にハーバード大学客員教授、ハドソン研究所で首席研究員をしている。以前テレビで見かけた顔だが、現在氏が存命なのかどうか知らない。

 NHKが、あまり国益を考えない報道機関だと知って以来、NHK関係者と聞けば、身構えてしまう癖がついてしまった。ことに、「お言葉報道」で、新聞協会賞を受賞するなど茶番劇の当事者を演じてからというもの、軽蔑せずにおれなくなった。

 読後の感想を具体的に述べる前に、日高氏の全体としての印象を語っておこう。意外だが、氏は改憲論者で、自国防衛の重要性を主張する点で、私と一致する。しかし徹頭徹尾親米派で、日本人としての魂の抜けた評論家だ。現実的な論点を展開する割には、肝心の魂が失せているという、優秀な、典型的東大生の一人だった。

 こういう点をシッカリ胸に刻んでおけば、知らないことを沢山教えてもらい、秋の夜の読書には有意義だった。まず、グアム島のアメリカ軍基地についてのレポートは、知らないことだらけだった。

「グアム島は、アジア大陸に最も近いアメリカの領土である。」「だが領土というだけで、州には昇格していない。」「グアム島の住民たちには、アメリカの州が享受している各種の権利が、全く与えられていないといってよい。」「グアム島は、アメリカ軍が誰に気兼ねすることなく、自由に使える場所なのである。」

「アンダーソン基地には、5000メートルの長い滑走路が二本と、何本かの誘導路が作られている。」「世界にある、アメリカ軍のどの基地よりも広い。」「それこそ見渡す限り、地の果てまでの基地である。」「南北がほぼ百七十キロ、幅十数キロの島であるが、北端に空軍基地アンダーソン、南の端にアガナ海軍基地がある。

「以前は設備らしい設備はなく、警備も全くないような場所だった。」「だが今や、厳重な警戒体制がしかれ、補給基地建設が急ピッチで進められている。」「アメリカ軍は全力を挙げてグアムの補給体制を強化しているが、」「これが完成すれば、アメリカ軍にとって最も重要な基地になるはずである。」

 観光地のグアムに、こじんまりとした米軍基地があるのだとばかり思っていたが、事実は大違いだった。「グアム島はアメリカ領で、外国の新聞に非難されるいわれもなければ、」「反戦グループのデモを受ける心配もない。」「アメリカのインテリグループもいないから、国内の反政府勢力の動きを心配する必要もない。」

 なるほどそうだったのかと、納得したが、これから先が凄い。

 「アメリカ海軍はアガナを根拠地として、潜水艦隊を南シナ海から東シナ海、そして日本海へ出動させ、北朝鮮の海軍に対抗することにしている。このグアム島が、今や北朝鮮攻撃の最前線基地となっている。」

 空軍の爆撃部隊も、海軍の原子力空母も集積し、戦争の拠点をハワイから移そうとしているのだから、生半可な基地ではない。氏の説明によると、この基地が完成すれば、韓国駐留の米軍も日本の基地にいる米軍も使わず、戦争遂行が可能となるらしい。こうなると、沖縄の海兵隊の移動という話だも現実のこととして受け取れる。

 興味を惹かされたのは、北朝鮮に振り回されたアメリカの大統領の失敗談だ。日本の外務省がだらしないと、不満を募らせている自分だが、米国まで踊らされたと知ると考え直したくなる。

 「アメリカは北朝鮮に対して、外交交渉で軍事力の拡大を阻止しようとしてきたが、完全に失敗してしまった。」「そもそも二十年以上も前の1979年、当時のカーター大統領が、北朝鮮が核兵器製造能力を持った時、これを徹底的に排除できなかったことから始まっている。」

 「カーター大統領は完全に北朝鮮に翻弄され、核兵器やミサイルの開発続行を許してしまった。カーター大統領とそのブレーンが、外交能力を全く持っていなかったことに原因がある。」「北朝鮮どころか、軍事問題全般について、およそ理解していなかった。大統領は北朝鮮に警戒心を持っておらず、金日成が何をやっているか知ろうともしなかった。」

 「もっと無様だったのは、クリントン大統領だろう。」「1994年に約束に反し、北朝鮮が核開発をしているのを知り、爆撃しようとしたが、ソウルを火の海にするぞと脅され止めてしまった。開発を止めるという北朝鮮の空約束を信じ、石油50万トンを毎年タダでやる約束をした。」

 「五十万トンといえば、北朝鮮の一年間の石油使用量の40%にあたる。北朝鮮はクリントン大統領を騙しながら、着々と核兵器の開発を続けた。」

 話し合いで物事を決めようとする、人道的平和主義の大統領の時、アメリカの外交は大きな失敗をしているような気がしてならない。カーター氏は勿論だが、クリントン氏もそうだったし、現在ではオバマ氏がそうである。国際社会では、相手を信じることからはじめると、その理想主義はたいてたい悪辣な暴力の行使に負けてしまう。綺麗事で済まそうとすると、相手は武力で事態を拡大してゆく。国際社会の厳しい現実を受け入れられないのは、日本の外務省だけでなかったということか。

 簡単に終わろうと思っていたのに、今回もうまくいかなかった。米国が見ている日本について、衝撃的だった事実を述べるスペースが無くなってしまった。

 拉致問題、安保法案、憲法等、肝心なことが残っている。それともう一つ、どうして氏がべったりの親米派なのか・・・・・、残念ながらこれも明日にしよう。

 

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