ねこ庭の独り言

ちいさな猫庭で、風にそよぐ雑草の繰り言

国会という所

2017-03-06 23:25:39 | 徒然の記

  中山千夏氏著「国会という所」(昭和61年刊 岩波新書)を読了。

 先日のブログで、辛淑玉氏のことを取り上げたとき、中山千夏氏と故永六輔氏が登場する古い動画について述べました。

 「外国に攻められても、日本は憲法があるから戦えない。」

「いいことじゃない。日本人は平和憲法を守って、外国の軍隊に殺されればいい。」

「そう、日本人は、全部殺されればいいんだ。」

 どちらの言葉だったかは忘れていますが、中山氏と辛氏の会話でした。先日図書館で、恒例の廃棄図書の日に、偶然にもこの本を見つけましたので、貰ってきました。参議院議員として、六年間在籍した国会を、国民に紹介するという内容です。どうして氏が動画のような会話をするようになったのか、ヒントがないかと期待したからです。

 残念ながら、氏が「前書き」で述べている通り、国会という建物、国会という組織の解説、議員の活動実態等々、「国会ハンドブック」とか「国会の役割早わかり」というような、簡便書の類でした。外観から見ますと、国会議事堂は人気のない大きな建物ですが、中には売店あり、床屋あり、食堂ありで、賑わっています。両院をつなぐ地下道が何本かあり、行き交う議員や、清掃員など、結構喧騒でもあると、初めて知りました。

 新米議員だった氏が、明治以来のしきたりを守る国会の時代錯誤に驚き、率直に批判する面白さもありました。テレビで放映される国会中継も、こうした裏話を知ると、席で居眠りしている議員たちの姿が納得できました。本会議で、法案の提案者である所管大臣が、趣旨説明を行いますが、これがなんと「お経読み」と言われているとのこと。つまり法案の趣旨説明を、お経のように朗読するとの意味です。

 これが終わると、各党の質問者が質問をします。これもまた、事前に用意した原稿を棒読みするだけ。つまり、提案者も質問者も、用意された原稿を所定の時間内で朗読するという儀式なのだと、氏は批判します。少し長くなりますが、氏の言葉を転記します。

「大臣たちは、答案アンチョコともいうべき紙綴りを持ち、これを繰りつつ該当ページを読む。」「一通り終わると、つぎの質問者が登場し同じことを繰り返すのだが、」「反問の恐れがないから、答弁は的外れ、いや外したものが続出だ。」「質問も質問で、各党間の連絡がないせいか、」「先の党が聞き、同じ答弁が返ってくるに決まっているような質問を、」「いくつも重ねる。」

 「たまらんのは、観客議員である。」「ことに参議院は、新聞や衆議院の会議録などで、もうわかっている芝居を、」「もう一度見せられるわけだ。」「豪胆な人は大声で、退屈だと言い、」「小心な人は、小声で、苦行ですなあとこぼす。」「多くが居眠りし、あるいはあらぬことを考えながら、ひたすら時が過ぎるのを待っている。」

 これが31年前の本会議ですが、この通りの情景が今もテレビで映し出されています。「国会の常識は、世間での非常識」というべき事例を、氏は無数に書き出しています。党に属しない一人会派の氏は、民主主義の国会では、無力だということがよく分かります。そんな状況でよくも六年間我慢したものだと、感心もしますが、失望もします。この程度の内容の本なら、中山氏が書かずとも、ジャーナリストが小遣い稼ぎにやれそうな気がしてなりません。それとも、議員の歳費とか、年金や退職金、あるいはいろいろな日当や手当など、ジャーナリストが書いたら潰されてしまうのかもしれません。

 で、結局、動画の発言につながる発見はありませんでした。そこで、いつものようにネットの情報を探してみることとします。

 昭和23年に生まれた氏は、今年69才です。昭和45年代、時の女性解放運動(ウーマン・リブ)に参画したのち、反差別、反戦などの市民活動に取り組んだということです。昭和52年には、芸術家や知識人からなる政治団体・革新自由連合の結成に参加し、代表の一人となっています。

 別の情報では、こんなものもあります。 

「時に社民党、民主党、共産党などと共闘することはあるが、根っからの政党政治嫌いで、支持政党はなく、政治的支援は無所属候補、無所属議員に限っている。」

 詳しいことは分かりませんが、昭和45年に女性解放運動に参加した頃から、左翼思想に傾いたのでしょうか。政党でなく、個人的に、氏は福島みずほ氏の熱烈な応援者です。だから私には無縁な人物であるということが、よく分かりました。これ以上付け加えることもありませんし、何か時間の無駄をしたような、余計な道草を食ったような、中途半端な気持ちです。

  最後に強いて述べるとしたら、昨日と同じ言葉です。

  「日本には、いろいろな人がいるものです。宮沢氏もしかり、五木氏もしかり、そしてもちろん私もしかり、在日の辛淑玉氏もしかり、中山千夏氏もしかり。みんな許容している、寛大な日本になぜ感謝しないのでしよう。不思議でなりません。」

 
 
コメント (8)
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