そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

ノモンハン事件を検証しなかった日本、そして今また・・・

2016-08-19 | 安倍晋三
もうかなり前のことである。中国戦線に二回行ったという、酪農家の古老がいた。酒が進むと、アルミのへちゃげた弁当箱を持ち出してきた。一目でかなりの年代物とわかる品物である。爺様はこの弁当を腰に巻いて、弾がこれにあたって一命をとりとめたというのである。
場所はソ満国境の”ノモンハン”であるというのである。こんなに近くに日本が泥沼の戦争に入っていった、引き金というか象徴的事件を体験した人がいたことに驚いた。
爺様はほとんどの戦友をその時亡くした。1936年(昭和14年)のことである。九死に一生を得た農家の次男坊だった爺様は故郷の長野に帰り、二年ほどして再び中国戦線に駆り出されその地で終戦を迎える。戦後は北海道に入植し酪農をすることになる。
爺様はノモンハンについては、弁当箱で偶然生き残ったこと以外はほとんど聞いても話すことはなかった。ノモンハンは、単なるモンゴルと満州国の国境紛争ではない。日本の傀儡国家満州とソビエトの衛星国のモンゴルとの領土紛争である。それぞれが裏にソビエトと日本がいたのであるが、日本と満州にとって、何の意味もないこの戦争(紛争)は日本が一方的に敗北した。戦果は何もなく、ソ連の主張通りとなった。戦死者は73%にもなり2万人にも及んだ。遺体はほとんど放置されたままであった。現在でも大量の遺骨の収集がなされている。
連日の勝利報道で日本中が沸いた。戦果のない終戦で小松原師団長は軍の意向として、井置中佐に自決勧告をして決着を図った。ノモンハン事件とは、国家が現場の軍を遺棄した戦いであると言える。

ノモンハン事件の最も大きな問題は、なぜ紛争を起こしたか。なぜ敗北したか、なぜ国家は責任を取らなかったかであるが、事実を隠蔽することで上部がこのことから逃れたのである。この事件の検証をしなかったし、それを教訓化しなかったのである。そして、二年後の太平洋戦争へと突入するのである。
国家の判断は間違いなかった、軍部の作戦は間違いなかった、敗北したのは現場が間違ったというロジックは、いまだに官僚の中に生きている。
ノモンハン事件の敗北の事実を踏まえ、しっかり検証しておけばその後の戦争はなかったはずであるが、敗北を辞書に持たない軍、とりわけ陸軍にその裁量はなかった。太平洋戦争は、ノモンハン事件の生き写し戦争と言える。

翻って現在を見るとこの構図に酷似する。アベノミクスはいつも勝利し、無制限な成功宣伝を繰り返し、勝利の数字を並べる。報道の自由度が世界の73位の日本国民はの多くはこれを信用し、ひたすら突き進むのである。国家は、半数以上を遺棄し貧困層へと招き、遺棄するのである。

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5 コメント

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Unknown (Unknown)
2016-08-20 23:36:57
MIC
先生のおっしゃることいつも感心してます。
お互いに憲法守ってゆきましょう。
Unknown (タンケ)
2016-08-21 04:28:45
深謀遠慮に欠け責任取らぬ指導者らが多くの戦争を企んできたが、今も似た者が政治やっている日本だ。昔から本質は何も変わっていない。進歩していない。騙し方や策略や厚かましさが増した分、寧ろさらに悪くなった。

その犠牲になるのは庶民なのにも係らず庶民はそんな悪徳政治屋らに今も投票しているという救いようのない習い性も同じままだ。
Unknown (きなこ)
2016-08-22 04:02:37
ノモンハンの体験者!すごいですね~!
あの辺りの歴史に興味があって、虹色のトロツキー、という漫画を読みました、めッッちゃくちゃ酷かったそうですね(〇o〇;))))!
漠然と中国の歴史とか、日本との関係、みたいなところへの興味から入ったのですが(^.^;
北海道は、中国大陸経験者が多いと聞きました。
Unknown (きなこ)
2016-08-22 05:33:05
>国家の判断は間違いなかった、軍部の作戦は間違いなかった、敗北したのは現場が間違ったというロジックは、いまだに官僚の中に生きている。

これは何処でも有りうることで、最近には新しい馬具で有りはしないかと疑っていますが、どうでしょうね。
現場現実を平易に観ることが解決の道だと思います。
Unknown (タンケ)
2016-08-22 14:06:35
上記写真に写った多くの兵士たちが「果たして生き残っただろうか・・」と思い煩うようなまともな人間性や感性ある人々が多ければ、そもそも戦争など起こらない、戦争始めたりなどしないだろうに。

世間知らず大アマ苦労知らずで救いようのない馬鹿アベシンゾーなどは自身が戦争に行くなど絶対にないことを知っているから、他人を犠牲にばかりし続ける。一体いつまでこんなどうしようもない屑輩を首相になど据えておくのだろうか、この日本なる国は?

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