今日も元気で頑張るニャン

家族になった保護猫たちの日常を綴りながら、ノラ猫たちとの共存を模索するブログです。

ルイが遺してくれたもの

2022年02月16日 | (故)ルイ(新手、顔白)
ルイと言っても、朝ドラの主人公のことではありません。
前記事で引用した3年前の記事「雪の日にノラたちは。」 そこには今や常連となった3匹だけでなく、行方知れずになったミケチビや当ブログ初登場のルイの記述もあったのです。その記事を再読した時、しばしルイの思い出に浸りました。その時のルイの名前は新手くん。その後に顔白くん、続いてルイと名前を変えた。でも、ルイとの付き合いは長くは続かなかった。

家猫だったのだろうか、ルイは出会ったときから人懐こい子だった

2019年10月23日20時42分、自分の手のひらを枕にして、ルイは最後の眠りについた。
あの地獄の痙攣を含めたあらゆる苦痛にも、そして自分の身体が動かない恐怖にも耐え、最後の最後まで意識を保って介護する自分に応えてくれた。その壮絶で厳かな精神力に感動し、ルイが旅立った瞬間には思わず涙がこぼれた。

中の子たちに挨拶を怠らなかったルイ

ルイとの付き合いは8ヶ月半、身体の異変に気付いて家に保護してからは6日の短さだ。しかしルイは、その間に本当に多くのことを気付かせてくれた。その内容はルイのカテゴリーにしっかりと詰まっています。そして最後に、ルイはその身をもって命の尊さを教えてくれたのでした。

当初はサクラ(写真上)とも仲が良かったが、やがて嫌われた

人間でも何でも、若い者が命を落とすのは不条理だ。ルイはまだ推定2才に満たない若さだった。その憤りのような感情と、未知だった病への対応のまずさ、後悔、そして自責の念が、自分を不治の病と言われるFIPという病気の調査と勉強に駆り立てた。そして有望だけど高価な未承認治療薬や、ノラのFIP治療に力を入れるNPO法人の存在も知った。

保護した時はまだ元気だった

でも何より大切なことは自分自身が変わったことだ。今自分は、家の連中のみならずお付き合いしているすべての猫たちの食欲を気にしています。ルイのように食べたいのに食べれないことはないか。そうであれば、まずFIPを疑う。そして経済的にも知識的にも独りで悩むことなく、まずは相談できる当てがあるのです。そうすることによって1匹でも多くの猫たちをこの病気から救いたい。


大量の腹水を抜いた後、動けなくなったルイ

ルイが遺してくれたもの。
それは猫たちのために進化した自分なのだと、今になって思うのです。

家の子になりたいルイの望みに応えられなかったことは、今でも断腸の思いです

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天国のルイへ ~FIPという病気の話~

2021年04月27日 | (故)ルイ(新手、顔白)
やあ、ルイ
そっちでの調子はどうだい?
病気からも解放されて快適かい?
早いもので、あれからもう1年半になるんだね


ルイ、天国ではのびのびと暮らしていてほしい
(本記事の写真は再掲です)

食べたいのに食べれなくなって10日ほど
やがて現れたときはお腹がぷっくりと膨れ
動く気力もないお前を保護して休ませた
うれしかったよ
お前は、最後の力を振り絞ってわが家に来てくれたんだ

お腹の膨れたルイはもう動くことができなかった

お前の状態をネットで調べるとFIPの疑いが濃厚
不治の病で余命も長くはないという
すぐに病院に向かい、苦しそうなお前を見かねて
躊躇する先生に腹水を抜くよう頼んだ

保護した時のルイはむしろ落ち着いたように見えた

しかしその後のお前の憔悴ぶりは著しく
地獄の痙攣を伴う1週間の闘病の末、旅立った
お前は最後の最後まで意識を保ち、保護者にも呼応した
「もっと生きたい」という生への執着と精神力
お前を看取った後も、感動の余韻が消えなかった

凄まじい痙攣に歯を食いしばって耐えるルイ

お前を救う機会はもっとあったのではないか
腹水を抜いたのは死期を早めただけだったのか
自分は、無知過ぎたのではなかったか
残された者は常に後悔に苛まれる
だがその時の後悔は、特別に大きかった

旅立つ直前まで意識がはっきりしていた

「この家の子になりたい」
お前のアッピールは痛いほどわかっていた
単に食べに来るだけでない
家の周りに陣取って中の子たちとの交流を続けた
まさか、あんな形でお前を家に迎えたなんて

勝手口を開けると入りたそうに覗き込んだ

ルイよ、お前を奪ったFIPという憎き不治の病
その病気の治療に光明が差してきた
米国の大学で開発中のGS-441524という製剤
まだ製品化されてないが、その有効性が認められた

家中の連中に挨拶を欠かさなかったルイ

同じような成分を持つ 中国製品のムティアン
サプリメントの扱いだが一部の病院で使い始めた
この薬でFIPが改善した症例が続出している
ただし滅茶苦茶に高価(治るまで100万以上)のため
あちこちでクラウドファンディングが立ち上がった

家中の子たちと一緒にくつろぐ

情報源が限られるのでさらに調査が必要だけど
コルディという漢方やシクロスポリンという抗生物質
これらが有効だという報告もある
要は、諦めずに希望を持ち続ければ道は開けるのだ

わが家に来た頃はサクラ(上)と一緒に食事

ルイよ、お前には改めて謝らなければいけない
あの時の自分は、"不治の病"と聞いて落胆するばかり
お前のような精神力と執着心に欠けていたのかもしれない
またひとつ、お前に教わったな

9ヶ月という短い付き合いでも、たくさんの思い出を残してくれた

※ルイ闘病記録の詳細は「(故)ルイ」カテゴリーの3記事に綴られています。

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人知を超えた精神力 ~ルイ一周忌に捧ぐ~

2020年10月24日 | (故)ルイ(新手、顔白)
ルイ、あれからもう1年になるんだな
テンにみうと看取りが続いた昨夏
まさかお前まで続くとは
そして、ただのノラだったはずのお前が
あれだけ多くのことを教えてくれるとは

最初につけた名前は「顔白」、甘えん坊のノラだった

お前と出会った昨年の2月
はじめから人懐こかったお前は、元家猫だったに違いない
サクラやキジロとも折り合いをつけ
中のネコたちに挨拶するのが日課になった
お前はずっと、次のお迎えの候補だったよ


まるで家中ネコ社会の一員のような行動

お前がいた頃は楽しかったな
他人に迷惑をかけないお行儀のいい子だったし
愛想はいいし愛嬌もたっぷりだった
そう言えば
サクラに対して"その気"になっちゃったときもあったっけ


サクラとは仲がよかったが、そのうち色気づいてふられた 

周りを明るくする存在
ノラにもそんなのがいるんだな
サクラが新猫に追われたとき
お前が果敢に向かっていったのも覚えているよ


ルイの挨拶はどんどん積極的になっていった

お前をもっと早く迎えていたら
食べる量が落ちた理由をもっと真剣に考えていたら
まさかお前がFIPを発症するなんて・・
どんなに後悔しても、尽きることはない

勝手口を開けると入ってきそうな勢い

ただ事ではないお前の姿に
慌てて病院に連れて行ってからの1週間
お前の最後の闘いは3つの記事にしっかりと書き綴った
「頑張れ、ルイ」「ルイよ、ノラのど根性見届けた(前後編)」
そこには当時の自分の気持ちも素直に書き留めてある
お前の頑張りは、お前を介抱しながら感動で胸が詰まるほど見事だった


妻の撮ったこの写真、お腹の異様な膨らみが明白だった

本当に、お前たちノラには負の感情というものがまったくない
どんなにひどい目に遭っても、誰か(何か)を恨むということがない
どんなに不幸でも、自分の境遇を憂いたりはしない
逆境も悲運も降りかかる苦難としてありのままに受け止め
その中で自分ができる限りのことをする
そしていつも明るい未来を目指して、決して諦めることがない
そう、お前も最後の最後まで、生きようとしていたんだよな

最後まで意識を失うことなく、苦痛に耐えて頑張った

人間界では、トップアスリートと言えどもそれだけの精神力はないだろう
それはもう人知を超えた、神々の世界
あのときの感動は、お前の頑張りがあまりにも純粋で厳かなものだったからだ

ルイよ
短い付き合いではあったけど
お前には本当にたくさんのことを教わった
だから、このオジンがこの世にいる限り
決してお前の死を無駄にはしない
そして
いつかあの世で、巡り合えることを楽しみにしているよ


天国のルイは、また穏やかな暮らしを手に入れたに違いない
ありがとうな、ルイ

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「ルイよ、ノラのど根性見届けた」(後編) ~ルイ逝く~

2019年10月28日 | (故)ルイ(新手、顔白)
(前編より続きます)

「後悔先に立たず」なんて諺があるけど、先に立たないから"後悔"なんだろ。などと自嘲気味にぼやきながら、次々と押し寄せる津波のような後悔に浸っていた。猫という動物は最後の最後まで生きることを諦めないから、あの穏やかな様子から突如として危篤状態になるのです。これまで何度も経験しているのに、その都度慌てふためきそして後悔に襲われてきた。

ルイも同様で、突然にして一気に危篤状態になった。たまに少し頭を持ち上げるがそれ以外はまったく動かない。そのとき、ルイの手を握って驚いた。妙に冷たいのだ。ルイの意に反して身体が生きることを諦めたのだろうか。そう言えば今夜はやけに冷える。今月(10月)の初めは真夏日が続いて熱帯夜まであったのに、天気予報が今夜は11月下旬の気温だと言っていた。またしても気付くのが遅かった自分に褐を入れつつ、エアコンにストーブも足して部屋の温度を28℃以上まで上げた。

5日目が明けたときのルイ

それが功を奏したのか、ルイの動きが少し出てきて無声音ながら鳴き声も発するようになった。お尻の方が垂れ流しでその都度シートを替えて身体を拭くのはルイの負担になるので、尻尾の内側ににティッシュを詰め込んだ。30分毎くらいに濡らしたティッシュでルイの顔を拭く。すると我に返ったようにルイが反応する。口の中に水を入れると、たまにゴクンと飲み込んだ。危篤状態といってもテツやテンちゃんのときと違うのは、ルイの意識がはっきりとしていることだった。

5日目は久々の晴れ日で、夜が明けると日が昇ってきた。その日も1日ルイに付き添い、顔を拭いたり口に水を含ませたり下のティッシュを交換した。もうひとつ大事なこと。ルイの身体の向きを変えて床ずれを防ぐ。昼になって陽光に当たると、気持ちがいいのかルイは自ら目を閉じることもあった。そんなときは起こさないようにもろもろのお世話を中断した。もしかしたら回復するんじゃないだろうか、と思うこともあったが、何も食べてないルイにそんな奇跡が起こるはずがないのはわかっていた。

秋のやさしい日差しに包まれて気持ちよさそうなルイ

それは5日目の夕方のことでした。
保護部屋を覗くとルイが痙攣していた。横たわった上側の手足が3秒くらいの間隔で宙を蹴って、同時に背中がのけ反って場所が10cmほどずれていく。既に元の位置からだいぶずれているのでかなりの間痙攣していたのだろう。なだめようと中に入った途端、その痙攣が激しさを増した。強いバネのように手足が力強く宙を蹴り背骨がエビのように屈伸する。ルイはそのたびに目を見開き、歯を食いしばった。時折雄叫びのような叫び声を苦しそうに発する。身体はどんどん移動して抑えていなければ部屋中のた打ち回ったに違いない。

これほど凄い痙攣は見たことがなかった。どうすればいいのかわからない。何よりルイには意識がある。そしてこれ以上はないというほど苦しそうだった。病院に急ぐにしても準備や移動や待ち時間でどれだけ時間がかかるか。しかもルイには相当な負担になるし、そのうち痙攣が止まるかもしれない。ぐだぐだ考えている間にも痙攣は続く。2、3分静まったかと思うとまた始まる。その痙攣は、極限状態に耐えるルイの精神が崩壊するのではと心配してもまだ続いた。いつまでも続く痙攣にやはり病院に行けばよかったと後悔し始めた。モルヒネのような安定剤を投与しなければルイが最悪の最後を迎えてしまう。天にも祈る気持ちでルイを抑えたりなだめたり。やがて、1時間も続いた後にようやくその痙攣は沈静化に向かったのです。その後には、余震のような小さな痙攣が30分くらい続いた。

痙攣に耐えるルイ

とてつもなく長い痙攣が治まってからルイの体勢を整え、濡れティッシュで顔を拭いて口に水を含ませた。何度も何度も水を口に含ませると、ようやく1度だけ、かすかにごくりと飲み込んだ。それでもルイの意識は、痙攣の前よりはっきりしているように見えた。あの痙攣は何だったのだろう。よく言われる旅立ちに向けての痙攣? それはもう意識を失った状態での話だろう・・。何を考えてもわかるはずもないが、とにかく治まってよかった。その後ルイの容態が安定してきたので欲目でスープを口に入れてみたが、もう飲み込むこと自体ができないようだった。あの痙攣は2度と来ないでほしい。ルイには穏やかな最後を迎えてもらいたい。いややっぱり、できれば回復してもらいたい。


地獄の痙攣に耐え抜いたルイは、その後も本当によく頑張った

その後もルイは頑張りました。28℃~30℃の室温の部屋で、時折顔や口を湿らしてもらって、限界状態の中で、何と36時間も頑張り続けたのでした。下の方はもう出るものすらなかった。ルイは最後まで意識を持ち続け、保護者が触ると反応した。危篤状態になってから50時間を過ぎた頃はもう感動しかなかった。その感動が愛着に変わり始めた7日目の未明、その日当地に大洪水と水害をもたらすことになる豪雨が少しづつ降り始めた頃でした。部屋に入ると、ルイが待ってましたとばかりに大きく深呼吸して、静かに息を引き取った。対光反射もなく臨終を確認しました。ルイの身体は身づくろいをしてしばらくそのまま寝かせておいた。壮絶な最後の闘いを終えたルイに、休ませてやりたいと思ったのです。

深い虚脱感が残った。最後の最後まで意識を持ち続け、そして諦めなかったルイ。あの地獄のような長い痙攣にも歯を食い縛って耐え抜いたルイ。しかし運命はそんなルイに報いることはなかった。ルイはどんな思いで旅立ったのだろう。自分は、少しはルイの支えになったのだろうか。お疲れさん。心の中でルイに何度も声をかけながら、自分も知らぬ間に寝入っていたのでした。

その日の夕方、病院から検査結果の連絡があった。コロナウィルス抗体値の結果は400の倍数で400未満ならまず大丈夫、3200以上はほぼ陽性。それらの数値と実際の症状からFIPかどうか判断する。ルイの値は1600で1週間後の再測定が望まれるとのことだったが、症状的にまずFIPで間違いないだろうと。「今後の治療としては・・」と続けたところで先生の話を遮って、ルイの死亡を告げた。ルイの身体は、本記事の前編を書いた一昨日に合同葬で荼毘に付しました。



後悔はまだ止まらなかったけどもう出尽くした感じだった。その内容を書き出してみました。
・あのとき保護しなかったら、ルイは自分らしく最後を迎えることができたのでは?
・腹水を抜かなければもう少し長く生きられた?
・健康だったら自分から逃げただろうルイが自分にいじられて落ち着けた?
・何より、元気だった頃の夏に家に迎えていればこんなことにはならなかった?
・早い段階でチューブなど付けて、栄養補給していれば回復した?
・痙攣のときは直ぐに病院に連れて行くべきだった? 
最後のは結果的に元に戻ったのでとりあえず解消した。一番強かった後悔は4番目だ。でもこうしてみると、やり過ぎた後悔とやればよかったという後悔が混在している。結局何をしてもしなくても、後悔することになるんだな。人間とはそういうものなんだ。

世の中には無数の命があって、毎年新たに生まれてくる。その命の数だけ生き様があり、生涯があり、そして終わり方がある。かつてチビが事故死したときにその無念さを慮ったが、チビにしてもルイにしてもたまたま自分と出会ったわけで、人知れず朽ち果てていくノラなんて数えきれないほどいる。だからいちいち感動していたら切りがない。そういう考え方もあるだろう。



でも自分は思うのです。ルイは自分と出会い、その最後を自分に見届けさせることによって自分を感動させ、ひとつの命の営みと尊さを教えてくれた。自分がそれを克明に書き伝え、読んでくれた人が同じ気持ちになってくれたなら、ルイというノラの生と死が無駄ではなかったことにはならないだろうか。だから自分は、これからも書き続けていこうと。

ルイよ、君はその身をもって命の尊さを教えてくれたんだね
最後の力を振り絞って、わが家まで来てくれて本当に嬉しかった
ありがとう、そして

REST IN PEACE, 
RUI




※お知らせ
ルイの記事は「サクラとルイ」から独立させた「(故)ルイ」カテゴリーに移しました。「サクラとルイ」カテゴリーは「サクラと黄白」に変更。初期のルイの記事は独立していないため、「一見さん」もしくは「サクラと黄白」カテゴリーに残っています。

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「ルイよ、ノラのど根性見届けた」(前編) ~ルイ逝く~

2019年10月26日 | (故)ルイ(新手、顔白)
それはひとつの命の壮絶な、そして厳かな最後の闘病でした。
生きることへの素直さと執着心。骨と皮になった悲惨なルイを懸命に看病しながら、その生きようとする姿に感動すら覚えていた。しかしルイは、再度の大災害を当地に引き起こす豪雨が降り始めた昨日の未明に、静かに息を引き取りました。昨日は近所の川が次々と氾濫するニュースを見ながら、儀式のように襲ってくる後悔に浸りました。そんな自分の気持ちも含めて、一部始終を克明に記録した日記を基にルイの闘病をまとめてみます。

前記事「頑張れルイ、・・」でルイが1リットルの腹水を抜いたと書きましたが、それは腹水の全量ではなく見た目で少なくともあと500ccくらいはお腹に残っていた。腹水を抜くと栄養まで一緒に失う。先生はルイの体力低下を懸念して残したのだと思います。ただそれは腹水が再び吸収されればの話だ。腹水の量はもともと圧バランスや浸透圧(濃度差)で血管や腹膜から出入りすることで調整される。腹水が溜まるのは何らかの異常で再吸収されなくなったからで、もしその異常が解消されれば吸収される可能性もあり、そうなればルイにとっては貴重な栄養だ。それでも検査結果を待たずに腹水を抜いたのは、ルイの食欲回復と呼吸を楽にするためでした。

しかしまだそれだけ腹水が残っているということは、ルイの実質体重が3kgを切っていたことを意味する。日記で確認するとルイは保護して病院に連れていく1週間ほど前からほぼ残すようになり、3日ほど前からは殆ど何も口にしていない。そうなる前にも既に食べる量が激減している。ルイは極端な栄養失調状態だったのだ。ところが腹水を抜いた後も肝心の食欲が回復しない。いや、食欲はあった。ドライもウェットも食べようと試みる。特に匂いの強いウェットには首を伸ばしてくるし、チュールなどにはガバッと起き上がってきた。しかしお腹が痛いのか気持ちが悪いのか、2口3口でぴたりと止まってしまうのでした。

殆ど動こうとしないルイはケージから出てくつろぐことが多かった

腹水を抜いてからのルイは幾分楽になったかのように見えた。ケージにいれば人が近付くと出たいと鳴くし、トイレも自分で用をたした。ただ、動きは必要最低限でそれ以外は移動しようとすらしない。わが家まで歩いてきたのに、保護した途端に動かなくなったのは気になった。特に腹水を抜いてからは注意して看ていたが、体力の低下は明らかだった。ルイの介抱は、如何にして食べてもらうかに尽きました。

通院の翌日(保護2日目)には殆ど食べなかったルイも、あれやこれや試すうちに3日目には少し食べるようになった。保護されればノラ時代とは待遇が違う。カリカリは中の猫の食べ残しではなくて新しいのだし、おやつに使う高級なものも与えてみた。ウェットは冷蔵庫に保管した古いのではなくて開けたばかりで新しい。さらにおやつタイプの高級レトルトまで至れり尽くせりの内容だ。ルイが食欲をそそられたことは間違いない。しかしやはり、5口6口食べるとぴたりと止まってしまう。そのうちカリカリには見向きもしなくなった。それでも諦めずに試していると、フィリックスのレトルトなら少し食べることがわかった。それとシーバを数粒。

3日めの夕方には腹水がまた少し漏れていた。トイレも使っていたが、シート上でお漏らしして下半身が濡れてしまった。それでも鳴き声が少し元気になって、機嫌は徐々に回復しているようだった。

お腹から少し腹水をこぼしたルイ

4日目、とにかく栄養が必要と強制給餌を再開した。最初はミオの療養食。前回は殆ど抵抗しなかったルイが今度は嫌がった。シリンジで3回か4回、3ccほど飲ませると立ち上がって逃げていく。 えっ、立って歩けるんだ! ルイには災難だが、その光景は嬉しかった。ルイは1mほど歩くとまた伏せるので、追いかけてまた3ccほど飲ませる。 と、また逃げる。これを繰り返して20ccほど飲ませた。なるほどこの手がある。栄養補給とリハビリを兼ねて一石二鳥だ。しかし次にチュールをモンペチスープで希釈してあげると、今度は逃げなかった。

ただ、こんな強制給餌では到底栄養が足りない。ルイはいくら動かないと言っても、最低でも基礎代謝分として1日に160Kcalは必要なんです。苦労して強制給餌で20cc飲ませてもせいぜい15Kcalあるかないか。これを1日3回やったとしても全然足りない。結局強制給餌は、栄養的には水分補給くらいの意味しかない。栄養を摂取するにはとにかく乾物、カリカリを食べてもらう必要がある。カリカリなら、重量あたりのエネルギーがウェットの8~10倍あるのです。

それで一番可能性のあったシーバで、いろいろあげ方を工夫してみた。すると、他の乾物と混ぜず器も使わず5粒ほどを鼻先に置くと食べた。一度に多く置くとダメで、5粒くらいを食べ終わってから次のを置く。ルイがじっと見つめたらしめたもの。そのうち首を伸ばして、亀のようにパクッと1粒づつ食べたのです。次第に間隔が空いてきてそのうち食べなくなったが、そのときは合計で30粒も食べた。よし、この調子だ。容態も安定してきたし、将来に向けて少し光明が見えた気がしたのでした。

ガリガリに痩せてはいるが、それなりに穏やかに見えた

ところがその日の夜半、5日目に入った頃のこと。保護部屋を覗くと、2m以上にわたって茶色い水のような下痢便を延々と垂らした先にルイが倒れていた。時間をかけて下半身を拭き洗いして、体勢を整えようとしたがルイの様子は明らかに変わっていた。脱力状態で頭すら持ち上がらない。横になってしまって伏せの状態を維持することもできなかった。ルイの突然の変化に慌てふためきながら、考えてみれば2週間近くも殆ど食べてないルイが力尽きるのは時間の問題だったのだと改めて思い知る。それまで何の手も打たずに、ルイの頑張りに甘えるだけだった自分にほとほと嫌気がさした。ルイは明らかに危篤状態でした。脳裏にテツやテンちゃんを看取ったときの状況が蘇る。あの経験からすればあと半日か。ルイはそんな感じだった。

急に力尽きた感じになったルイ
身体を拭いたときは、浮き出た骨が痛々しかった

山のような後悔に襲われながら、ルイを独りにはしないと心に決めた。でも、ルイは自分が付き添うことで安心するのだろうか。つい数日前まで自然を駆け回る自由奔放なノラだったルイ。自分はルイにとって餌やり爺さんくらいの存在でしかなかっただろう。などとぐだぐだ考えながらルイの看病を続けた。そのとき自分は、その後にルイの生に向けた不屈の根性と驚異の精神力を見ることになろうとは、思いもしなかったのでした。

自分では殆ど身動きしないが、ルイの意識ははっきりしている

※1記事に納めたかったのですが文章力(構成力?)のなさで長くなってしまいました。
  後編に続きます。

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