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教員不足 少人数学級に影

2024年05月15日 | 教育・学校

35人以下 やっと実現したのに弾力運用で40人

「しんぶん赤旗」2024年5月15日

 教員の長時間労働や志願者減少の影響を受け、教員不足に年々拍車がかかっています。今年度もすでに各地で深刻な不足が生じています。川崎市では4月の教員不足が市基準で131・5人となり、少人数学級が後退する学校まで出ています。(佐久間亮、島田勇登)

川崎、過去最多迫る

 川崎市の昨年4月の教員不足数は61・5人でした。年度途中に産育休や病気などによる離・休職者が出たことで今年2月には過去最多の146・5人を記録。今年度は4月からこの過去最多に迫る状況です。

 現在法律上の学級編成の標準は小学1~5年生まで35人以下です。川崎市では教員不足のため4学校5学級で標準を上回る36~40人編成としています。市教育委員会は、教員の志願者減少などを要因に挙げます。

 一方、川崎市教職員連絡会の大前博事務局次長は「少子化で教員が余るといって正規教員の採用を抑制してきたことが最大の原因だ」と批判。教員不足が学校の長時間労働に拍車をかけ、産休取得を同僚に謝らなければならないような職場環境の悪化をもたらし、さらに志願者が減る悪循環になっていると語ります。

千葉県、異例の通知

 千葉県では2月に県教委が、小学5年生以下でも実情に応じ36~40人編成にする「弾力的な運用」が可能だとする通知を市町村教委あてに出しました。2学級を1学級にし36~40人編成にした場合、教員を2人配置することなどが条件です。

 表向きは教員不足対策とは異なるものの、文部科学省が「例外的に許容」とする対応をわざわざ抜き出して通知にするのは異例。弾力運用を口実に35人以下学級を見直し、年度途中の休職者に備える自治体が出てくるのではと懸念の声があがります。

 同県教委は、1校で何人も教員が不足すれば弾力運用の複数教員配置に影響が及ぶ可能性もあるとしつつ「そうした事態は考えにくい」としています。

 全教千葉教職員組合の浅野涼平書記長は、年度途中に3人が産育休に入るのに代替教員のめどが1人もついていない学校もあるとし、県教委の見通しの甘さを指摘します。

 弾力運用で小学校低学年の35人以下学級が40人ぎりぎりの編成に見直されたある学校のベテラン教員は、この学校が現在抱える困難を考えるとやむを得ない面もあるとしつつ、こう語ります。

 「学校に余裕があれば弾力運用は必要ない。コロナ危機をへてやっと35人以下学級が実現したのに、また狭い教室に押し込められる。子どもたちが一番の被害者です」

これでは学校がもたない

残業代不支給を継続

 教員不足の要因の一つが、各地で過労死の悲劇を生みだしている異常な長時間労働です。文部科学省の2022年の調査では、小中学校とも持ち帰り残業も含めた1日の労働時間の平均は約11時間半に上り、中学校では4割近い教員が過労死認定ラインの月80時間を超える時間外労働をしていました。

 精神疾患による休職者数も過去最多を更新し続け、22年度は6539人です。

 文科省は昨年6月に中央教育審議会(文科相の諮問機関)に長時間労働解消に向け特別部会を設置。同部会は1年近い議論を経て13日に「審議まとめ」を策定しました。しかし審議まとめを見た教員からは「『このままでは学校がもたない』という現状をいっそう深刻化させかねない」との声が上がります。

 労働基準法は1日の労働時間を8時間と定めています。時間外労働には割増賃金を払わなければならず、違反した雇い主には6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

 しかし、公立学校の教員は「教職給与特別法」で例外扱いとされ、月給の4%を教職調整額として一律に支給される代わりに、残業代は出ません。時間外労働は「自主的な活動」とされ、行政は残業代を負担せず、管理職が刑罰に問われることもありません。

 自民党は、特別部会の設置直前に提言を発表し、議論前から残業代支給を「選択肢とは言えない」と否定。その代わり教職調整額を10%以上に引き上げるとしました。

 残業代支給をめぐって特別部会では▽自主的な活動と労働時間の切り分けが困難▽残業を指示する管理職の負担が増える▽給与の負担は都道府県、服務監督は市町村教委と分かれているので残業代による労働時間抑制効果がない―などの意見が出る一方、教職員組合や全国高等学校PTA連合会は残業代支給を求める意見書を提出しました。

 教育研究者有志20人が呼びかけた残業代支給などを求める署名に18万人超の賛同が集まるなか、審議まとめに書き込まれたのは、残業代不支給制度の維持と教職調整額の10%以上への引き上げ。書きぶりも自民党の提言を引き写したかのようです。

低い教育予算を放置

 中教審は19年にも長時間労働解消をうたう答申を出しています。このときも残業代不支給制度に手を付けず、教職員定数の改善目標もなし。その結果、教員不足が深刻化し、文科省の21年4月の調査でも全国で2086人の教員が未配置となっていました。

 首都圏の小学校のある中堅教員は、教育委員会から業務改善の指示は盛んにくるが、労働時間が短くなった実感は全くないと断言。「在校時間を短くするため学校は午後8時に閉まるようになったが、みんなパソコンを持ち帰り、家で仕事をしている」といいます。

 この学校では、学級担任を受け持つはずだった新卒教員が着任早々職場を去りました。理由は分からないものの「年度初めは業務量が非常に多く、全員遅くまで学校に残っていた。イメージと違ったのでは」と推測。現在は教頭や専科教員で回しているものの「来年度まで担任が未配置の可能性もある」と声を落とします。

 19年の答申を取りまとめた小川正人東大名誉教授は当時、残業代支給には「1年間で9千億円から1兆数千億円が必要です。しかし、財源のめどはありません」(「朝日」18年12月24日付)と語っています。一方、盛山正仁文科相は5月14日の会見で、教職調整額を10%にした場合の国費負担は約720億円増となると語っています。地方負担分を合わせても約2160億円増です。

 前出の中堅教員の場合、月間時間外労働は平均50時間程度だといいます。4%が10%になると教職調整額は1万5千円から3万8千円に増えます。ただし残業代なら4・5倍の約17万円です。さらに時間外労働が80時間になれば残業代は30万円近くに増えますが、教職調整額なら3万8千円のままです。

 残業代不支給制度の継続は、国際的に見ても低い日本の公的教育予算を増やさず、教職調整額のわずかな増額と引き換えに「定額働かせ放題」を温存するものです。

 全国知事会などは、教職員の配置基準を定めた「義務教育標準法」の見直しによる定数改善を求めていました。審議まとめは、標準法見直しで増えるのは活用目的を限定しない基礎定数なので、教員の負担軽減につながらない可能性があると主張。政府の政策目的に沿って教員を配置する加配定数の改善を優先するとしました。

 教員が受け持つ授業時数に上限を設けることで長時間労働を抑止する案も、管理職の裁量を縛るとして採用しませんでした。

 

命と健康守る仕組みこそ

三坂彰彦弁護士に聞く

 日本弁護士連合会は2021年の意見書で、教員に労働基準法の労働時間規制を適用するよう求めています。意見書作成に関わった三坂彰彦弁護士に聞きました。

 労基法は憲法27条に基づき労働条件の最低基準を定めた法律です。時間外労働に割増賃金の支払いや罰則を科すのは労働者の生命と健康を守るためです。多くの教員が過労死や精神疾患に追い込まれるもとで、労基法の労働時間規制の適用は不可欠になっています。

 教員は高度な専門性があり裁量が大きく残業代支給になじまないとの指摘があります。しかし、そもそも労働時間が過労死ラインに達しているような職場で高度な専門性の発揮は困難です。私立や国立学校の教員には労基法が適用されていますし、医師のうち勤務医も労基法の残業規制の適用対象です。

    残業承認で管理職の負担が増えるとの指摘もありますが、これは現在の管理職数を前提とした場合の話です。また、民間企業でも定型的な業務は包括的な承認で対応しています。

 残業代支払いを義務化しても労働時間抑制の効果は期待できないとの指摘もありますが、県教委は教職員の人事権を持つなど市町村教委と緊密な連携関係にあり、市町村が県の給与負担を考慮しないことは考えられません。

 残業代は賃金の25~50%が割り増しされるので教員を増やす強い動機になります。一方で基本給の一定割合で定められる教職調整額には労働時間抑制の効果はありません。

 教員の時間外労働の最大の原因は1人当たりの業務量が多すぎることです。業務量削減には持ち授業時数の削減と少人数学級の推進、そしてそのための教員の抜本的増員が必要です。労働時間規制の適用は、その方向を動機付ける最も効果的な手段と言えます。


スケスケで向こうまで丸見えだった景色も緑が多くなりました。



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