ブルーシャムロック

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野望の、一歩手前

2016-06-13 16:47:04 | 信・どんど晴れ
「環(女将の本名)、加計呂麻島から一人女性を引っ張ってきた というじゃないか。そ
れにしても旅館の仕事をしたいわけじゃないのに
こういった娘を連れてくるのはいけないんじゃないか。」
社長と名乗る女将の夫が女将のしたことに眉をひそめた。
「そうですねぇ。あの子は使える。今君
臨している大女将は 長男の息子である、柾樹に拘っている。何ができるわけじゃない。」
「そうだなぁ。本来ならば加賀美屋は兄夫婦が継ぐ予定だったのだ。 でも、兄貴は大阪に失踪し
たっきり帰ってこない。で、残された 義姉さんも兄貴がいなくなったらすぐ亡くなったし・・。 それに残され
た義姉さんも柾樹くんを加賀美屋から遠ざけたい 感じだった。よく彼を怒っていたな。全く関係ないとき
に 柾樹君がミスをしたら、気になることをいちいち怒っていた。」
社長はためいきをついた。「そうです
ねぇ。柾樹さんだけれども、東京の大学を卒業して、今 横浜のホテルに就職しているのですよねぇ。」
社長はニヤニヤしていた。それを見ていた女将はいささか表情を曇らせつつ
「ああ。俺のスマホにメールが来たけれども付き合っていた女性に プロポーズしたんだって
さ。」
それを見ていた女将はいささか表情を曇らせつつ
「まあ、幸せそうでなり
より。横浜でこの写真の女の子と幸せな家庭を 過ごせたらいいのにね。」
女将は心配した。
「そういえ
ば、この前言っていたよね新一の嫁さんの恵美子さん、 実家に返したほうがいいって。」
社長はショッキ
ングな事を言った妻を見た。彼女は自分の珠盤のためには
誰かを犠牲にすることを厭わない人だからだ。
「彼女は、徳之島にいるよりは
小田原にいたほうが羽ばたける人だと 思うのです。なにも加賀美屋の
仕事を手伝わず専業主婦みたいなことをしている彼女は、
島ではあまり評判のいい人ではない。 彼女には帰ってもらう代わりに、
佳奈をここで働くことを許してもらえませんか。」
いつも気丈な妻が自分にそ
う懇願するのは、何かあってのことだろうと 社長は思った。
「分かった。私は見てみぬふりをしよう。」
社長はそういった。 運命の歯車は回りだしていた。
おわり
コメント
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