夜な夜なシネマ

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『Dearダニー 君へのうた』

2015年09月12日 | 映画(た行)
『Dearダニー 君へのうた』(原題:Danny Collins)
監督:ダン・フォーゲルマン
出演:アル・パチーノ,アネット・ベニング,ジェニファー・ガーナー,ボビー・カナヴェイル,
   ジョシュ・ペック,メリッサ・ブノワ,クリストファー・プラマー他

シネ・リーブル梅田で2本ハシゴの2本目。
これまた良くて、へろへろになりながらスカイビルまで歩いた甲斐があるというもの。

おひさしぶりのアル・パチーノ
もしかすると私が見るのは『ジャックとジル』(2011)以来、
そう、ふざけた作品中でふざけたドーナツのCMをしていた彼を見て以来です。

『カーズ』(2006)や『ボルト』(2008)、『塔の上のラプンツェル』(2010)など、
優れたアニメーション作品の脚本を担当、
実写映画でも『ラブ・アゲイン』(2011)、『ラスト・ベガス』(2013)と、
私の大好きな作品の脚本家ダン・フォーゲルマンの監督デビュー作。
もちろん脚本も彼が書いた、ほんの少しの実話を含むフィクションだそうです。
ジョン・レノンがかつて新人ミュージシャンに宛てて書いた励ましの手紙が、
訳あって数十年後に宛先に届いたという、この部分が実話だとか。

ショービジネス界で大成功を収めたロック歌手ダニー・コリンズ。
新曲は何年も出していないが、老年の今もコンサート会場はどこもかしこも満員。
昔のヒット曲を歌っていればファンはそれで喜んでくれる。

酒とドラッグと女に囲まれて過ごしてきた日々は相変わらず。
金はあっても空虚で、充実感のない暮らし。
結婚は4度、今度の相手もチョー若いイケイケ女。
屋敷の雑用係と浮気しているようだが、怒る気もせず、どうでもいい。

そんなある日、ダニーの親友でマネージャーを務めるフランクが、
誕生日プレゼントだと言って1通の手紙を持ってくる。
フランクがこの日のためにコレクターと交渉を続け、やっと手に入れたものらしい。

それは43年前のダニーに宛てられたジョン・レノンからの手紙。
当時、突然人気が出た新人歌手のダニーが、
雑誌のインタビューに答えて成功への不安をつぶやいた。
それを目にしたジョン・レノンが雑誌社気付でダニーに手紙を送ったのだ。

崇拝するジョン・レノンはもうこの世にいない。
しかしその彼が若かりし頃の自分に送ってくれた手紙。
手紙を読んだダニーは、人生をやり直そうと決意する。

まずはツアーをキャンセルすると、小さなホテルに長逗留、作曲に取り組む。
そして、かつてグルーピーとの間にできた、
顔も見たことのない息子トムに会いに行くのだが……。

「音楽は人生を堕落させたりなんかしない。君自身が堕落させるのだ」。
ジョン・レノンの言葉に心を強く動かされたダニー。
赦しは金で買えないとわかっていながら、
トムとその家族に精一杯のことをしようと努めます。

ホテルの女性支配人メアリー役のアネット・ベニングが素晴らしい。
彼女とダニーの掛け合いはテンポ抜群で飽きません。
トムが難病を患っていたり、孫娘がADHD(注意欠如多動性障害)だったり、
困難は尽きないわけですが、それにうんざりさせられるような展開でもありません。
トムの妻サマンサ役のジェニファー・ガーナーも舅と夫の間で板挟みになるさまを好演。
どの登場人物も台詞そのものとテンポが良くて、さすがの脚本。

名優アル・パチーノの胸打つ演技を久しぶりに見せてもらった気がします。
エンディングもこれ以上にない、素敵で絶妙な〆。

始めるのに遅すぎることなんて何もない。
思い立ったらそのときがやりどき。

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