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『ピース オブ ケイク』

2015年09月14日 | 映画(は行)
『ピース オブ ケイク』
監督:田口トモロヲ
出演:多部未華子,綾野剛,松坂桃李,木村文乃,光宗薫,菅田将暉,
   中村倫也,安藤玉恵,森岡龍,山田キヌヲ,柄本佑,峯田和伸他

仕事帰りにTOHOシネマズ伊丹にて。

その出演作の多さがハンパじゃない俳優、田口トモロヲ
塚本晋也監督の『鉄男 TETSUO』(1989)でぶっ飛んだ主役を演じたものの、
特徴的な顔をしているわけでもなく、むしろ印象に残りにくい顔。
だから、その後もしばらくはどの人が田口トモロヲなのかわからなくて、
エンドロールを見るたびに「え、どこに出てはったん」と驚きました。
ちゃんと顔を認識できたのはどの作品からだったのか。
だけど彼が『プロジェクトX』のナレーションを担当するようになってから、
世間の認知度がグッと上がったため、顔も見つけやすくなりました。

『恋文日和』(2004)の原作者でもあるジョージ朝倉の同名コミックを映画化。
100本を軽く超える映画に出演しているトモロヲさんですが、
メガホンを取るのは『アイデン&ティティ』(2003)、『色即ぜねれいしょん』(2008)以来の3本目。
この3本には出演することなく、監督に徹しています。
逆に監督作多数、俳優としての出演作数本の廣木隆一監督が映画監督役でゲスト出演。

好きになられるのはいつも自分のほう。
コクられてなんとなくつきあって、その場の雰囲気に流されて、
なんとなくいい感じになると断れなくて二股も。
そんな恋愛を重ねてきた25歳の梅宮志乃(多部未華子)。

同じ職場に勤める正樹(柄本佑)とつきあっていたが、
二股がバレてふられた志乃は、仕事も辞めるはめに。
親友のナナコ(木村文乃)、同じく親友でオカマの天ちゃん(松坂桃李)に励まされ、
木造のオンボロアパートに引っ越し完了。
これからは恋愛も仕事もちゃんとしようと心に誓う。

ところが、隣室から顔を出したヒゲ面の男を見た瞬間、心が揺らぐ。
これは間違いなく一目惚れ。いかんいかんと自分を叱るが、
翌日、天ちゃんの紹介でレンタルビデオ店のバイトの面接に行くと、
現れた店長は隣室の男、菅原京志郎(綾野剛)。
彼には同棲中のあかり(山田キヌヲ)という性格悪そうな彼女がいたが、
志乃の京志郎への想いは募るばかりで……。

あと数年で還暦を迎える田口トモロヲがこんな作品を撮るとは。
いつになく甘えたモードの綾野剛と、大人になった多部ちゃんは、
見ているこちらが気恥ずかしくなるほど。
だからって清々しい青春映画というわけではなく、やることはやる。
だってこの多部ちゃん、ほとんどヤリマンだもの。(^^;
女性が脱ぐシーンこそないけれど、きわどい台詞とシーンが結構あります。

ということで、いろいろと違和感が拭えず、ちょっとビミョーではあるのですが、
オカマ役がとても楽しそうな松坂桃李に釣られ、
京志郎の弟役で登場する森岡龍も可愛く、
ちょい役で出演するクドカンにも和まされ、
劇団の座長役の峯田和伸の“ねるとん紅鯨団”を観ていた世代にしかわからない台詞に爆笑させられ、
後味もいいものだから、悪くなかったという感想になるのでした。

個人的には笑いながら考えさせられてしまったのが、
志乃があかりについて京志郎にまくしたてるシーン。
あかりが自殺するのではないかと心配で、こっそり会いに行っていた京志郎。
そのことについて志乃は怒ります。
「そんな女こそいちばんしたたかで、死ぬことなんてあり得ない」。

というのも、昔々、上司から結婚したときの話を思い出したから。
相手の女性から「結婚してくれなければ死ぬ」と迫られたそうです。
「勝手に死ねばと今なら言えるけど、そのときは若かったから、
俺のせいで彼女を死なせたらあかんなと思ってん」。
そして結婚、長らく別居、離婚はできないまま(他界)。
男性のほうがなんだかんだで優しいのでしょうかね。余談でした。

ちなみに“a piece of cake”は朝飯前とかお茶の子さいさいの意味。
幸せすぎると不幸の準備をしてしまうけれど、恋愛にそんな準備は不要。

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