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『杉原千畝 スギハラチウネ』

2015年12月11日 | 映画(さ行)
『杉原千畝 スギハラチウネ』
監督:チェリン・グラック
出演:唐沢寿明,小雪,ボリス・シッツ,アグニェシュカ・グロホフスカ,
   塚本高史,濱田岳,二階堂智,板尾創路,滝藤賢一,石橋凌他

京都シネマで2本ハシゴした翌日、梅田で2本。
まずは前週一時閉館してリニューアルを図ったTOHOシネマズ梅田。
TCXを導入したというシアター1にて鑑賞しました。

TCXって何よと以前から思っていたのですが、
“TOHO CINEMAS EXTRA LARGE SCREEN”の略称なのですね。
独自規格のラージスクリーンで、迫力ある映像をご提供しますとのこと。
劇場全体が綺麗になったのはとても嬉しいけれど、
IMAXを知ったあとでは、そこまでの迫力はないなぁ。

第二次世界大戦下、ユダヤ難民を救うべくビザを発給しつづけ、
“日本のシンドラー”と称された杉原千畝の物語。
監督は『サイドウェイズ』(2009)のチェリン・グラックで、
アメリカ人だけど和歌山出身、バリバリ日本語ネイティブだそうです。

1934(昭和9)年の満州。満州国外交部に勤める杉原千畝(唐沢寿明)は、
日本語と英語はもちろんのこと、ロシア語やドイツ語フランス語にも堪能。
その語学力と調査能力を駆使して諜報外交官として活躍。
ソ連との北満鉄道譲渡に関わる交渉を有利に進めて評価されるが、
彼への嫉妬からか反感も多く、関東軍との間にトラブルを抱えて帰国する。

帰国後、友人で保険外交員の菊池静男(板尾創路)の妹・幸子(小雪)と知り合って結婚。
かねてから目論んでいた在モスクワ大使館への赴任が決まるが、
北満鉄道譲渡交渉のさいの千畝の働きが問題視され、ソ連から入国を拒否される。

1939(昭和14)年、リトアニアの在カウナス領事館に赴任。
やがて第二次世界大戦が勃発し、そこここでユダヤ人が圧迫を受けはじめる。
ナチスの迫害を逃れたユダヤ難民は、行き先を求めて右往左往した末、
オランダ領事ヤンから苦肉の策を授けられて日本領事館へと押し寄せる。

ビザの発給は簡単に進められるものではない。
日本からの返事を待っているうちに領事館は閉鎖されてしまうだろう。
この件に関われば、自分は職を失い、家族にも迷惑をかけることになる。
千畝は悩みに悩むが、独断でユダヤ難民へのビザ発給を決め……。

またもや思い出す『少年H』(2012)の中の台詞。
戦争が終わったとき、恥ずかしくない人間だったと言えるかどうか。
領事館の閉鎖後も、ホテルで、駅の待合室でユダヤ難民を受け入れ、
ひとりでも多くの人へとビザを発給しつづけてその数6,000人。
戦時中、命令に従うことと、人を見殺しにすることのどちらを選ぶのかと問われたら、
命令に従うことを選んでしまう人のほうが多いでしょう。
この状況下で、たとえ自分がどうなろうとも、他人の命を救おうとした人。

領事館職員に応募してきたグッジェは、ユダヤ人への偏見あらわ。
それでも事務的に仕事をこなすさいには差別的な言動は皆無でした。
その代わり、ニコリと笑うなんてこともいっさいしない彼が、
ビザを受け取ったユダヤ難民から感謝され、「あなたは善き人だ」と言われて、
それがこんなにも嬉しいものだなんてと語るシーンが印象に残っています。

亡くなってからしか名誉が回復されないとは、ばかばかしいことだと思いますが、
だからこそ、そのさなかに、後に恥ずかしくない行動をとるのはむずかしい。
「人の世話になるな、人のお世話をしろ、報いを求めるな」が信条だった人。
名誉なんて別に要らないと空の上で思っていらっしゃるかもしれません。

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