夜な夜なシネマ

映画と本と音楽と、猫が好き。駄作にも愛を。

今年観た映画50音順〈か行〉

2012年12月23日 | 映画(か行)
《か》
『哀しき獣』(英題:The Yellow Sea)
今年初めに公開された、『チェイサー』(2008)の監督による2010年の韓国作品。
北朝鮮とロシアに接する中国領の延辺朝鮮族自治州で暮らす、
韓国系中国人のタクシー運転手グナム。貧困に喘いでいる。
韓国へ出稼ぎに行きたいという妻のために多額の借金をつくって送りだすが、
その後、妻とは連絡が取れず、やむを得ず幼い娘を母親に預けている。
借金取りに追われ、一攫千金を狙って手を出した賭け麻雀で大負けしたところへ、
裏社会を仕切るミョンから、韓国である男を殺せば借金を棒引きにしてやると言われ……。
暗くて重くて凄惨な本作に惹きつけられました。
痛烈に面白かったのは、男性陣はみんな自分の妻や愛人の浮気を疑っていて、
けれども本当に浮気していたのかどうかは明らかにされていないこと。
男性陣とその妻、もしくは愛人との絡みのシーンはあるのに、
男性陣が自分の女の浮気相手と考えている男との絡みのシーンはないんです。
グナムに見られていることに気づいた被害者の妻と銀行員の表情の差も興味深い。
あぁ、これは銀行員の単なる横恋慕に過ぎなかったのだとわかります。
非常に面白い一作でした。

《き》
『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』(原題:Captain America: The First Avenger)
夏に公開された『アベンジャーズ』の構成メンバーのひとりで、
やはりマーベル・コミックのヒーロー“キャプテン・アメリカ”を実写映画化。
第二次大戦下のアメリカ。虚弱体質ゆえに入隊テストに落ち続けるスティーブ。
親友のバッキーは堂々と戦場へと赴き、スティーブは悲しくて仕方ない。
そんなスティーブに声をかけたのが謎の軍医アースキン博士。
極秘実験の被験者第1号となったスティーブは凄い肉体をゲット。
人間とは思えない運動能力も獲得し、意気揚々とするが、
この実験を知るカルト集団に博士が殺害されて、実験は頓挫。
スティーブは軍の宣伝活動するだけのマスコットになるのだが……。
本編以上におもしろかったのが本編の一部に組み込まれている『アベンジャーズ』の予告編。
『マイティ・ソー』(2011)も同様で心が躍りました。

《く》
『クリスマスのその夜に』(英題:Home for Christmas)
2010年のノルウェー/ドイツ/スウェーデン作品。
独特の雰囲気が大好きだった『キッチン・ストーリー』(2003)と同監督。
クリスマスイヴを迎えたノルウェーの小さな町の群像劇です。
妻トネから家を追い出された男パウルは、わが子に会おうとサンタクロースに変装し、
トネの新しい恋人のふりをして家に上がり込む。
医師のクヌートは、妻エリサとろくに過ごす時間もない。
今夜も急患の電話に駆けつけるとコソボ出身のカップルが出産間近。
少年トマスは、同じ学校の上級生の少女ビントゥとばったり。
イスラム家庭のためクリスマスを祝わないというビントゥに話を合わせ、一緒に過ごすことに。
中年女のカリンは、不倫相手のクリステンの「クリスマス後に離婚する」という言葉を信じていたが、
コトが終わるや「離婚はできない」という彼に激怒。
故郷に帰る金もない老年の男ヨルダンは、孤独なイヴを覚悟するが、
昔つきあっていたヨハンヌと再会して……。
冒頭のシーンから穏やかな話ではないのではと不安が走りましたが、
そのシーンの結末が明らかにされるラストでは、心がほんわか温かく。

《け》
『月光ノ仮面』
古典落語の『粗忽長屋』をモチーフとした、芸人・板尾創路の監督第2作。
舞台は1947(昭和22)年。顔中に包帯を巻いた復員兵(板尾創路)が寄席に姿を現す。
勝手に高座に上がって追い出される場面に出くわしたのが、
森乃家一門を率いる森乃家楽天師匠の愛娘、弥生。
弥生はその復員兵が楽天の弟子で、自分の婚約者・森乃家うさぎだと思い込む。
記憶喪失らしき彼を楽天師匠と弟子一同は温かく迎え入れるのだが……。
終盤に本物のうさぎ(浅野忠信)が帰ってきて、
戦友だった偽物をどうかうさぎとして認めてやってほしいと言います。
この辺りまでは結構おもしろかったのですが、最後は寄席で銃の乱射。
狂気の殺戮シーンで締めくくられ、言いたいことがさっぱりわからず。

《こ》
『コーマン帝国』(原題:Corman's World: Exploits of a Hollywood Rebel)
ジャック・ニコルソンにつられて泣いてしまったドキュメンタリー。
100万ドルを上限とする低予算での映画製作にこだわり、
B級映画の帝王と呼ばれるハリウッドの異端児ロジャー・コーマン
本人へのインタビューに加え、ロバート・デ・ニーロ、マーティン・スコセッシ、
ロン・ハワード、ジョナサン・デミ、ジョン・セイルズ、ジョー・ダンテ、
ピーター・ボグダノビッチ、ピーター・フォンダなどなど、
コーマンと繋がりの深い錚々たる顔ぶれへのインタビューと、コーマンの代表作にて構成。
「B級映画なのに、たまに間違って名作ができたりするんだ」との
ジャック・ニコルソンの言葉に笑わされます。
アカデミーからは徹底的に無視される運命かと思いきや、
第82回アカデミー賞でアカデミー名誉賞を授与されました。
いいドキュメンタリーを見せてもらった、そうしみじみ思えた1本。

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