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『悪の法則』

2013年12月02日 | 映画(あ行)
『悪の法則』(原題:The Counselor)
監督:リドリー・スコット
出演:マイケル・ファスベンダー,ペネロペ・クルス,キャメロン・ディアス,
   ハビエル・バルデム,ブラッド・ピット,ジョン・レグイザモ他

前述の『清須会議』の終映時刻が本作の開始時刻。
しかも上映劇場は同フロアではなく、隣のTOHOシネマズ梅田別館。
出入り口すぐの端っこの席を確保してそろりと入場。

某レビューサイトでは評判が芳しくないので悩みましたが、
ものすごく評価が高い『陽だまりの彼女』がイマイチだったりしたので、百聞は一見にしかず。
結果、この日観た3本のうち、一瞬たりとも眠気に襲われなかったのは本作のみ。

脂の乗りどきのイケメン弁護士“カウンセラー”は、美しい恋人ローラにプロポーズ。
彼女に最上級の贈り物をと、金を工面するために手を出した闇のビジネス。
ド派手な暮らしぶりの実業家ライナーから、裏社会の住人ウェストリーを紹介され、
メキシコの麻薬カルテルの取引に一枚噛むことにする。

ところが、予期せぬことが起きる。
女囚人ルースの頼みで、彼女の息子の釈放にかかる400ドルを出してやったところ、
出所した息子が何者かに惨殺される。
その息子は実は麻薬カルテルの運び屋で、彼の荷物が狙われたらしい。
荷物はどこへ持ち去られたかわからず、ブツを失った麻薬カルテルは激怒。
グルだと思われたカウンセラーは絶体絶命の危機に陥るのだが……。

原題は“The Counselor”。
何か法則があるんかいなと言いたくなりそうな邦題が付いているうえ、
たいして重要ではないであろう事情の説明はすべて省かれているため、
話がわかりにくいように思えるかもしれませんが、実はいたってシンプルです。
主人公の男性が愛する女性のために犯した罪ゆえ、
最後はその女性までも失ってしまうという、それだけのこと。
主人公の知らないところで次々と悪いことが起き、気づいたときにはもう遅い。

本作にも残酷なシーンはそこそこ出てきますが、
それを映したらB級になるというところは映さないのがさすがリドリー・スコット監督。
たとえば、終盤カウンセラーが受け取るDVDは、
おそらくローラを映したスナッフフィルム(実際の殺人の様子を撮影した映像)ですが、
カウンセラーが内容を察知して泣き崩れるだけ。
ウェストリーの首がぶった切られるシーンも、悪趣味となるすんでの所で留まっています。

主人公にだけ名前が与えられていません。
本当の悪人にとって、名前を与えるほどの存在ですらなかったということかと。
みんな彼のことを「カウンセラー」と呼びます。
弁護士もしくは助言者の意味もあるカウンセラーが、他人に助言を求める不条理。

芸達者が揃っているので、その表情を見ているだけで面白い。
『リバー・ランズ・スルー・イット』(1992)を観たときには、
世の中にこんなに美しい男性がいるのかと感激したブラピは、
いまやチンピラを演じさせれば鉄板。
ローラを演じるペネロペ・クルスの実生活での夫ハビエル・バルデムが、
恋人のマルキナ役のキャメロン・ディアスが車のフロントガラスにまたがる姿を
呆気にとられて見つめる表情は絶品です。
チータと自分を重ね合わせる捕食者、マルキナが本気で怖い。
個人的に気になる役者、ジョン・レグイザモはブツの運び屋で短時間登場。
声を聞いているだけでやっぱりなんだかワラけます。

引き込まれる会話、キレ味抜群の苦笑してしまった台詞も多数。
400ドル払って息子を釈放してくれるならしゃぶってあげるよと言うルースに、
カウンセラーは「380ドル足りない」。
つまりは、おめぇのおしゃぶりなんて20ドルの価値しかないぜってことですね。
また、窮地に追い込まれたカウンセラーがウェストリーと訪れたカフェで注文するのは「毒薬」。
なかなか気が利いています。(^^;

取り戻したい世界は、過ちを犯した時点とはすでに世界が異なっている。
これがもっとも心に残った台詞。
『清須会議』じゃないけれど、行動を起こす前に心の中の誰かに問いましょう。
本当にそれでいいのかと。

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