新宿少数民族の声

国際ビジネスに長年携わった経験を活かして世相を論じる。

続・America Insight

2023-07-07 07:57:54 | コラム
これがアメリカなのだ:

“Give me eight back”で良かった:
解説)これはtip、即ち「チップ」のことである。今やアメリカはインフレでチップの額が跳ね上がったそうだが、往年はそれ用に小銭(changes)を用意しておかねばならなかった。ということは、10ドル札しか持っていない場合に困るという意味で、うっかり両替を忘れると気前よく10ドルという高額のチップを奮発してしまうことになる。

この点をYM氏に語ってみたところ、「それならば、お釣りをよこせといえば良いだけのことで、ちゃんと返ってきます」と教えられた。「まさか」とは思ったが、実際にシアトルのFour Seasonsでポーターに荷物を運んで貰ったときには、入国したばかりで小銭がなかったと気が付いた。そこで10ドル札を渡して“Give me eight back.”と言ってみた。すると、彼は躊躇うことなくポケットから8ドルの小銭を取り出して“Here you are.”と返してきた。何の問題も生じなかった。

この時はこれで良かったが、良く考えてみれば、彼らが何時も小銭を持ち合わせている訳でもあるまいと思った。要するに、アメリカのような国に行ったならば、常に注意して小銭だけは持って歩くようにしなければならないのであり、「お釣りをよこせ」は最後的手段になるだろうという事。

100ドル札は両替お断り:
解説)これも言うなればチップ絡みの話だ。確かFour Seasonsでのことだったが、フロントデスク(receptionの方が通用すると思うが)に100ドル札の両替を頼んだ時のこと。誠に素気なく断られた。取り付く島もない感じだったので「何故か」と同僚たちに尋ねてみた。それは「アメリカでは100ドル札の偽造が最も多いので、ホテルは当然としても小売店でも受け取りを拒否することがあるので要注意だ」と教えられた。怖い国だなと思った。

トイレは使用禁止:
解説)Amtrak(アメリカの全国鉄道旅行公社)の列車で移動中のことだった。私は車の免許を取ろうとしたこともないので、アメリカ国内の移動には苦労が多かった。そこで、本社から200km以上南にある我が事業部の工場に単独で行く場合には、アムトラックをシアトルから最寄りの駅まで3時間かけて移動することが多かった。この列車の座席は飛行機のビジネスクラス並みにゆったりしていて足乗せも出てくるので快適だったし、食堂車も楽しめた。

あるとき、早朝の移動なのでトイレに行こうとすると詰まっていて使えない状態だった。通りがかった車掌に告げると「次の車両に行けば」と言うので行ってみれば、そこも駄目。車掌は直ぐに「使用禁止」の札を貼って、次の車両に。そこでも直ちに札を貼らざるを得なかった。彼は「この状態では他に行っても駄目だろうから降りる駅まで我慢して欲しい」と無情な宣告。

約1時間を何とか持ちこたえたが、殆どの駅は無人でトイレがあったかどうかの記憶もないので、駅まで迎えに来てくれた技術サービスマネージャーに急いで工場に行ってくれるように頼んだ。列車でトイレが詰まっていて使えないなどという事態は、我が国ではあり得ないと思うが、アメリカでは「あり得ること」なのだろうと思う。これがアメリカの労働力の質の実態なのだと理解している。

余談だが、2007年9月に利用したときには座席も小型化されていたし、食堂車もなくなりカウンターだけになっていた。だが、全窓側の席ではPCが使えるようになっていた。トイレも良くなっていたが、20世紀の車内の方が良かったと思う。

これも余談の部類に入るかも知れないが、Interstate 5というフリーウエイで南下して工場に向かうと、途中のトイレ休憩をしたくなる辺りには公衆手洗いがあり、キリスト教の信者の人たちがチャリティーでコーヒーを無料で供給してくれる。ここでは、その善意に答えて、なにがしかの小銭を入れるのが礼儀だそうだ。

マクドナルドでは利用できた:
解説)2010年1月にSM氏とLAからバークレーまで二日がかりで北上した。カリフォルニア州ではフリーウエイ沿いには何もワシントン州のような有り難いものがなく、懸命に車外の景色に注意していた。そして、McDonald’sを発見すると直ちにフリーウエイを降りてそこに向かい、トイレだけを利用していた。アメリカではこういう利用法が許されているのだそうだ。だが、流石に2店目では(解りはしないと思うが)気を遣って、ハンバーガーで昼食とした。