暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

サンリツ服部美術館・・・ 国宝 「不二山」

2015年08月10日 | 美術館・博物館
                 諏訪湖と入道雲  高島城天守閣より (2015年8月4日)

ずっーと前から逢いたかった白楽茶碗・銘「不二山」。
長野県諏訪湖畔にあるサンリツ服部美術館所蔵の国宝です。
「不二山」は門外不出だそうで、こちらでしか見ることができません。

三度目の正直、今夏の旅でやっと叶いました。
一度目はだいぶ昔、旅の途中にサンリツ服部美術館へふらっと寄った時のこと、
「不二山」は常設されてないそうでご縁がありませんでした。
二度目は4年前、「不二山」が展示されているというので、同名のAkatuki庵さんと車で出かける計画でした。
あいにく雪や凍結が心配な冬季だったので、家人に反対され断念しました。
・・・そして三度目、満を期して8月4日に「花ひらく琳派-絵画とやきものでたどる装飾美の系譜」へ。
特別出品-本阿弥光悦作「国宝」白楽茶碗 銘・不二山 と書いてありました。

                      
                             サンリツ服部美術館のエントランス

中へ入り、同時開催の服部一郎コレクション近現代絵画展「カンヴァスに見いだす美」を拝見しました。
二十数点の油絵が展示されている会場は程よい広さと空間を保ち、完全な貸切状態で見ることができました。
ルノワール「洗濯女」、シャガール「サーカス」、ルオー「飾りの花」も好いけれど・・・
「この中で一点だけ持ち帰るとしたら、どれ?」と私。
「コレにする」とツレアイ。
びっくりしました! 心の中で決めていた作品と同じだったから・・・。

それはベルナール・ビュフェの「振り子時計」。
中央にに4時を指している四角い振り子時計、白い壁の背景、茶色の2つのテーブルが幾何学的に描かれたシンプルな絵でした。
色彩溢れる絵の中で、水墨画のように静謐で、いつまでも見ていたい心地よさを感じたのです。

                       
                              高島城(別名・諏訪の浮城とも)   

第二会場は「花ひらく琳派-絵画とやきものでたどる装飾美の系譜」。
「不二山」を見たくってやってきたせいか、第3章の「琳派の時代のやきもの 楽茶碗」が心に残りました。
五つの黒楽茶碗、同じ黒でもそれぞれ作者の個性を感じ、魅力あふれる茶碗ばかりでした。
中でも一番のお気に入りは道入造の銘「初午」、馬上杯の形状、持ち手から下が土見せでしょうか? 
他の黒楽茶碗とは違う、道入の斬新な意欲とセンスを感じます。

国宝・銘「不二山」は独立ケースなので、自由に何回も回って観ることができます。高台と茶碗の内側が見えないのが残念ですが・・・。

そういえば、楽美術館茶会の時のお話で、当代・十五代楽吉左衛門氏が特別に「不二山」を手に取って見せて頂く機会があったそうです。
門外不出の名碗を手にしてどのような感想を持ったのか・・・恐れながら伺ったことがありましたが、記憶が朧で・・・。
箆で見事なまでそぎ落とされた名碗は手に取ると意外なほど軽かったそうで、箆使いの名手である当代に大いなる感動と刺激を与えたに相違ありません。

                        

・・・そんなことを思い出しながら、ほぼ貸切状態で「不二山」を何度もまわりました。

長次郎が生み出した赤や黒の楽茶碗とは趣が違い、一言でいえば端整な茶碗です。
形が角ばって胴が絶壁のように切り立ち、口は少しだけ反っています。
口作りもおとなしく、全体の形や低い高台から瀬戸黒や志野茶碗を連想しました。
形状にも惹かれますが、白と黒の対比がモダンでシックです。
上部のほぼ半分が白、下部は黒、黒といっても灰色の部分と黒の部分が微妙に入り交じり、深みのあるを景色を生み出していました。

素地は白土、白釉が厚くかかっているそうですが、釉薬に灰がかかり、偶然窯の中で茶碗の下半分が黒色に変色したと言われています。
光悦自身によって「不二山」と命名され、自筆の共箱が展示されていました。
白雪を頂いた不二山に見立てたものとも、無二の出来という意味から名付けられたとも言われています。
光悦の娘が嫁に行くときに振袖裂に包んで持たせたので、一名「振袖茶碗」とも呼ばれているそうです。

三度目の正直だけでなく、またいつか逢いに来ますね・・・きっと。 
                                    

       花ひらく琳派
       絵画とやきものでたどる装飾美の系譜
         特別出品-本阿弥光悦作「国宝」白楽茶碗 銘・不二山


         2015年7月18日~11月15日
         サンリツ服部美術館(長野県諏訪市湖岸通り2-1-1)
            

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