暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

茶事のサウンド・スケープ(4)  点前

2009年10月28日 | 茶事のサウンド・スケープ
濃茶点前で竹の蓋置に柄杓を引く時の
「カッ」という音が好きです。
「喝」に通じるように聴こえ、
身が引き締まる思いがするからです。

高からず低からず、良い音を出すのは難しいことです。
師匠から稽古でも水屋で竹の音を吟味して、
蓋置を決めるくらいの心構えで・・と言われたことがあります。
なかなか出来ないことの一つですが、今でも忘れられないお言葉です。

茶筅通しで茶筅を三度打つ音は「ラン パン ウン」。
真言密教の「灑(しゃ…はらう)水」の礼に由来した
浄めの意味があるそうです。

ラン(火)は六根清浄の義、
(六根とは眼耳鼻舌身意 げんにび ぜっしんい)
パン(水)は水火不散の義、 
ウン吽(風)は風火のよく塵を払うの義

そんなことを考えると、茶筅通しの気持ちも姿勢も改まりますね。

柄杓で湯水を汲む時のかすかな音。
釜や茶碗に注ぐときの湯水の音も味わいの一つです。

盛夏の「洗い茶巾」の点前は、見た目の清々しさとともに、
水音を聞かせて涼を演出します。
茶巾を取り上げて水音を聞かせ、茶巾を絞りながら聞かせ、
茶碗の水を建水へ捨てるとき、
それぞれ違った趣の水音をさらりと楽しみます。

それから釜の音。
炭手前で、釜の蓋を閉める時や切る時、釜環を掛ける時
裏千家流ではなるべく音がしないようにいたします。
流派によってはわざと釜の蓋がすれる?音を聞かせると
お聞きしたことがあります。
いろいろあって面白いですね。

釜といえば釜鳴り。
炭をついで湯が沸いてくると、釜の内側にあるピンホールに
湯や蒸気が入って、「ジッ・・ジ・・」という音が聞こえてきます。
これが釜鳴りです。

鳴かねという特別のものを釜底につけている釜もありますが、
芦屋や天命の古釜にはついていないそうです。
釜鳴りの音色は釜の個性と思いますが、
茶席ではこの音も味わいの一つです。

心地よい音は、松林を吹きぬける風に喩えられ、
「松風」といわれています。
低い音は「雀舌(じゃくぜつ)」とか
「怒涛(どとう)」などと表現されるそうですが、
やはり「松風」がいいですね。

火相、湯相がどんぴしゃりと決まり、
「松風」が聞こえてくると、点前座の亭主はホッとします。

しばし「閑座聴松風」をお楽しみください・・・。

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