石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

日本の年間軍事支出は世界10位:世界及び中東主要国の軍事費と武器輸出入(5)

2024-05-07 | その他

(世界ランクシリーズ その7 2024年版)

 

6.世界の武器輸出国と輸入国

 ここでは世界の武器の輸出入額を取り上げる。各国の輸出入額は年度によって大きく変動するため、2014年から2023年までの10年間の累計額について比較検討を行う。

 

(世界の4割を占める巨大な武器輸出国―米国!)

(1)主要国の武器輸出額(2014年~2023年累計額)

(表http://rank.maeda1.jp/7-T06.pdf及び図http://rank.maeda1.jp/7-G06.pdf参照)

 2014年から2023年までの10か年間の武器輸出累計額は世界全体で2,850億ドルであり、年間平均では285億ドルになる。国別では米国が際立って多く、同国の10年間の輸出総額は1,080億ドルである。これに次ぐのはロシアの460億ドルであった。世界全体に占める割合はそれぞれ38%及び16%であり、2か国を合わせると世界の武器輸出額の5割強を占めている。

 

 米国、ロシアに次いで輸出額が多いのはフランスの257億ドルであるが、米国あるいはロシアの2乃至4分の1にとどまっている。これら3カ国に続いて10年間の累計輸出額が100億ドルを超えているのはドイツ(169億ドル)、中国(167億ドル)、英国(111億ドル)である。なお次項(輸入額)に触れるとおり中国は輸入額でも世界第7位であり輸出入双方で世界上位10カ国に入っているのは同国だけである。

 

 武器輸出額7位から10位はイタリア、イスラエル、スペイン及び韓国である。上位10か国のうちヨーロッパ諸国が半数を占めており、ヨーロッパは世界的な武器生産地域であることがわかる。なお上位10カ国は戦闘機、艦船、戦車、ミサイルなど高額な兵器を得意としているため輸出額が膨らんでいる。しかし世界の多くの紛争地域では小銃、機関銃、地雷、ロケットなど小型火器が使われている。その意味ではトルコ(輸出総額32億ドル、世界12位)は米国あるいはロシアに比べ金額的には少ないが影響力は小さくないと言えよう。なおトルコは攻撃型UAV(ドローン)の輸出に力を入れているが、このような比較的安価なIT兵器は今後トルコを含めた開発途上国の有力な輸出商品になるものと思われる[i]

 

(続く)

 

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     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

[i] レポート「中東に広まるドローン(UCAV)の開発と軍事利用」参照。

 

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見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(151)

2024-05-07 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第6章:現代イスラームテロの系譜(6

 

151やすやすと国境を越えるイスラーム・テロ(2/4)

イラン革命に呼応してサウジアラビアではマフディ(救世主)を名乗る人物によるマッカ大神殿占拠事件が発生した。サウジアラビアのファハド国王はテロを力づくで抑えつけたが、この事件で宗教の怖さを再認識し政教一致国家のイランを敵視するようになる。

 

その一方でサウド家の宗教的立場を正統化するため、彼は1986年に自らを「マッカ・マディナの二大聖都の守護者」と名乗るようになる。サウド家自身はあくまで世俗権力である。国王のほかに聖都の守護者というもっともらしい称号を付け加えて宗教的な権威づけを行ったのである。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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