石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

石油と中東のニュース(8月31日)

2019-08-31 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・BP、アラスカから撤退。メキシコ湾深海、シェールガスにシフト。 *

・東邦ガス、中国からLNGを輸入

・中国浙江省に米国シェールガスの石化工場建設計画

*BPプレスリリース参照。

https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/bp-to-sell-alaska-business-to-hilcorp.html

 

(中東関連ニュース)

・サウジアラムコ、東証上場も視野に:Wall Street Journal報道。 **

・UAE、イエメン・アデンでの空爆で声明発表

・ロシア、8/31日からのシリアIdlibの停戦を発表

・イラン、濃縮ウラン保有量が制限をオーバー

・サウジ、工業・鉱物資源省を新設。大臣にBandar Al-Khorayef

・エジプト、日本とのビジネス協議会でスエズに工業団地建設を要請

 

** レポート「先の見えないアラムコIPO(株式上場)」(2018.4月)参照。

 「アラムコと国際石油企業の2019年Ⅰ-6月業績比較」を本ブログで連載中です。

 

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今週の各社プレスリリースから(8/25-8/31)

2019-08-31 | 今週のエネルギー関連新聞発表

8/27 BP 

BP to sell Alaska business to Hilcorp 

https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/bp-to-sell-alaska-business-to-hilcorp.html

8/27 Total 

Total Strengthens Its International Partnership with Qatar Petroleum  

https://www.total.com/en/media/news/press-releases/total-strengthens-its-international-partnership-qatar-petroleum

8/28 三菱商事 

オフグリッド分散電源事業者 英国BBOXXへの資本参画 

https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/pr/archive/2019/html/0000038207.html

8/30 JXTGエネルギー 

組織の改正について  

https://www.noe.jxtg-group.co.jp/newsrelease/20190830_01_03_1080071.pdf

8/30 JXTGエネルギー 

人事異動について  

https://www.noe.jxtg-group.co.jp/newsrelease/20190830_01_02_1080071.pdf

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サウジアラムコと五大国際石油企業の2019年1-6月期業績比較 (2)

2019-08-30 | 海外・国内石油企業の業績

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0478AramcoVsIoc2019JanJune.pdf

 

(圧倒的な原油生産量を誇るアラムコ!)

1. 原油・ガス生産量 (図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-6-01.pdf 参照)

 今年1-6月のアラムコの原油生産量は日量平均1千万バレル(以下B/D)であり、天然ガス生産量は石油換算で320万B/D、あわせて1,320万B/Dであった。原油生産量及び天然ガスとの合計生産量は世界一である。IOC5社で原油生産量が最も多いのはExxonMobilの236万B/Dであるが、アラムコはExxonMobilの4倍強の生産量を誇っている。そして最も原油生産量が少ないBP(130万B/D)と比べると約8倍である。

 

 一方、ガスの生産量はアラムコの320万B/D(石油換算)をIOC5社と比較すると最も多いShell(182万B/D)はアラムコの6割弱、最も少ないChevronでもアラムコの4割弱であり、原油生産量ほどの大きな差は無い。

 

 各社の原油と天然ガスの比率はアラムコが原油76%に対しガス24%で原油はガスの3倍である。これに対してIOC5社はExxonMobil及びChevronの原油:ガス比率は3対2であり、Shell及びBPは原油とガスがほぼ同量である(Totalは原油55%:ガス45%)。アラムコはIOC5社に比べ原油の比率がかなり高い。

 

 これは両者のガスに対する取り組み方の違いにあると考えられる。即ちIOC5社の場合天然ガスは外販を目的としており、特に近年は天然ガスに対する需要が増加しているため独自の開発生産に力を入れているため天然ガスの比率が高い。これに対してアラムコは原油の生産販売を目的とする国営石油会社として運営されており、またこれまで国内に大型ガス田が発見されていない。

 

アラムコの場合、天然ガスは原油生産に伴って生産される随伴ガスを自家燃料として消費し、或は国内の電力・海水淡水化国営企業に供給している。最近では電力・海水淡水化用の需要が急増している。アラムコにとって天然ガスの確保は国民生活上喫緊の課題であり、IOC各社が天然ガス販売を新たな収益源とみなしているのとは事情が異なる。

 

 なお、上記の通りアラムコとIOC各社の原油生産量には大きな格差があるが、下記に示すように売上高(Revenue or Sales)は目立った差はない(Shellはむしろアラムコより売上高が大きい)ことに留意する必要があろう。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

                               Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

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中国、世界最大のガス輸入国に:BPエネルギー統計2019年版解説シリーズ天然ガス篇 (19)

2019-08-29 | BP統計

BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2019」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量、貿易量及び価格のデータを抜粋して解説したものである。

 *BPホームページ:

http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html

 

(4) パイプラインによる輸出入(2018年)

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-4-G05.pdf 参照)

2018年のパイプラインによる天然ガスの国別輸出入量は概略以下のとおりである。なおパイプライン貿易では米国とカナダのように相互に輸出入を行っている国がある。例えば2018年に米国はカナダから773億㎥の天然ガスを輸入する一方、カナダとメキシコへ合わせて676億㎥を輸出している。国境をまたぐ多数の天然ガスパイプラインがあるためである。この他国境をまたがるパイプラインが発達しているヨーロッパでは輸入した天然ガスを再輸出するケースも少なくない。本項で述べる各国の天然ガス輸出量或いは輸入量は輸出入を相殺したNETの数量である。

 

(世界のパイプライン貿易の4分の1を握るロシア!)

(4-1)国別輸出量

 パイプラインによる天然ガス輸出が最も多い国はロシアでありその輸出量は1,978億㎥、世界の総輸出量の25%を占めている。ロシアの輸出先は東ヨーロッパ及び西ヨーロッパ諸国である。第2位のノルウェーの輸出量は1,143億㎥(シェア14%)であり、年間輸出量が1千億㎥を超えているのはこの2カ国だけである。両国に次いで輸出量が多いのはカナダ(554億㎥)、アルジェリア(389億㎥)、トルクメニスタン(352億㎥)であり、カナダの輸出先は米国、アルジェリアは地中海の海底パイプラインにより西ヨーロッパ諸国に輸出している。なお冒頭に述べたようにカナダは米国と相互に輸出入を行っており、輸出総量ベースでは772億㎥である。

 

上記5カ国による輸出量は全世界の55%を占めている。従来パイプラインによる輸出は北米大陸とヨーロッパ大陸が主流であったが、最近ではトルクメニスタンから中国への輸出、或いはドルフィン・パイプラインによるカタールからUAEへの輸出など北米、ヨーロッパ以外の地域でもパイプラインによる天然ガス貿易が拡大しつつあり、カタールのパイプラインによる輸出量は202億㎥に達し世界第6位である。

 

(パイプラインによる天然ガス輸入量トップはドイツ!)

(4-2)国別輸入量

 2018年にパイプラインによる天然ガスの輸入量が最も多かったのはドイツで1,008億㎥であった。これに次ぐのがイタリア(562億㎥)、中国(479億㎥)、メキシコ(457億㎥)、英国(428億㎥)、トルコ(376億㎥)である。ドイツの主たる輸入先はロシア及びノルウェーであり、イタリアはロシア、アルジェリア等から輸入している。英国はかつて天然ガスの輸出国であったが最近では純輸入国に転落しており、パイプラインのほかカタールからのLNG輸入にも踏み切っている。

 

(続く)

 

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石油と中東のニュース(8月29日)

2019-08-29 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

(中東関連ニュース)

・イラン外相、安倍首相と会談。イランには緊張増幅の意図なし

・米、中東和平案開示はイスラエル選挙後に

・中米ホンジュラス、エルサレムのイスラエルを首都と承認

・イエメン政府軍、暫定首都Adenを南部分離派から奪回

 

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サウジアラムコと五大国際石油企業の2019年1-6月期業績比較 (1)

2019-08-29 | 海外・国内石油企業の業績

 

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

 

http://mylibrary.maeda1.jp/0478AramcoVsIoc2019JanJune.pdf

 

 

はじめに

 サウジアラビアの国営石油会社Saudi Aramco(以下アラムコ)の今年1-6月の業績が発表された。アラムコは世界最大の産油量を誇り、現在は同国の国富ファンドPIF(Public Investment Fund) が100%の株式を保有しているが、政府は株式の一部(5%程度とみられる)を国際市場に放出する方針で、来年をめどに株式公開(IPO)の準備中である。このため投資家に対する情報提供を目的に今回初めて損益計算書、貸借対照表及びキャッシュフローの財務資料を公開したものである。

 

(注)財務資料の全容は下記のアラムコホームページを参照されたい。

https://www.saudiaramco.com/en/news-media/news/2019/saudi-aramco-reports-first-half-2019-net-income

 

 本稿ではアラムコの財務諸表に現れた数値の中から、石油・ガス生産量、純利益、売上、税引前利益(EBITDA)、資産・負債(貸借対照表)等についてShell, ExxonMobil, BP, Total及びChevronの五大国際石油企業(所謂International Oil Companies、以下IOC)の業績と比較検討したものである。IOCの直近4-6月期(2019年第四半期)の業績は各社の下記URLを参照ください。

 

ExxonMobil:

https://news.exxonmobil.com/press-release/exxonmobil-earns-31-billion-second-quarter-2019

Shell:

https://www.shell.com/media/news-and-media-releases/2019/second-quarter-2019-results-announcement.html

BP:

https://www.bp.com/en/global/corporate/news-and-insights/press-releases/second-quarter-2019-results.html

Total:

https://www.total.com/en/media/news/press-releases/second-quarter-and-first-half-2019-results

Chevron:

https://www.chevron.com/stories/chevron-reports-second-quarter-net-income-of-4-3-billion

 

 またIOC五社の昨年1-12月決算及び今年4-6月(第2四半期)の決算比較並びに今年4-6月期のIOC五社と日系石油企業(JXTG、出光興産)のレポートもあわせてご参照ください。

「五大国際石油企業2018年業績速報シリーズ」(2018.3.2付け)

http://mylibrary.maeda1.jp/0459OilMajor2018.pdf

「五大国際石油企業2019年4-6月期決算速報」

http://mylibrary.maeda1.jp/0475OilMajor2019-2ndQtr.pdf

「JXTG/出光興産と五大国際石油企業の2019年4-6月期業績比較」

http://mylibrary.maeda1.jp/0476MajorJxtgIdemitsu2019AprJun.pdf

 

 なお、アラムコ及びIOCの決算基準及び定義は各社によって異なり、単純に比較することは困難ですが、できる限り基準を揃え、各社資料の用語(英語表記)を併記して読者の判定に委ねることとしますのでご了承ください。

 

(続く)

 

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見果てぬ平和 - 中東の戦後70年(7)

2019-08-28 | その他

(英語版)

(アラビア語版)

 

第1章:民族主義と社会主義のうねり

 

1.大西洋憲章

 戦争の当事者たちはそれぞれに戦争開始直後から戦争が終結した場合の戦後新秩序について構想を練るのが常である。それは一対一の国同士の場合は敵国領土の自国への編入或いは敵国にいかほどの賠償を支払わせるかと言うことであったが、第一次大戦、第二次大戦の両大戦では戦後世界をどうするかと言う地球的規模の新秩序の構想がそれに加わった。

 

 第二次世界大戦を例にとれば開戦直後もしくは勝敗の決着がつく前の段階で連合国側及び枢軸国側双方に戦後構想があったはずである。しかし結果は戦勝国となった連合国の描いた戦後世界秩序がすべての始まりとなった。当然のことながら日独伊の枢軸国が描く戦後像は闇に葬られた。と言うより戦勝国である連合国側が痕跡をとどめないまでに抹殺したと言うべきであろう。

 

 それでは連合国側の戦後構想とはどのようなものであったろうか。それは1941年8月、ルーズベルト米国大統領とチャーチル英国首相が宣言した「大西洋憲章」に始まる。英国とフランスがドイツ第三帝国に宣戦を布告し第二次大戦がはじまった1939年から2年後のことである。因みに当時の米国は英仏を側面支援していたものの参戦していたわけではない。米国が日独伊の枢軸国に正式に宣戦布告し、連合国の一員として正面に立ちはだかったのは同年12月7日に日本軍が真珠湾を奇襲攻撃した翌8日である。

 

 1941年、米英が宣言した「大西洋憲章」は全文8か条で構成されているが、その第一条から第三条には次のように記されている[1]

 

一、兩國ハ領土的其ノ他ノ増大ヲ求メス。 (領土拡大意図の否定)

二、兩國ハ關係國民ノ自由ニ表明セル希望ト一致セサル領土的變更ノ行ハルルコトヲ欲セス。 (領土変更における関係国の人民の意思の尊重)

三、兩國ハ一切ノ國民カ其ノ下ニ生活セントスル政體ヲ選擇スルノ權利ヲ尊重ス。兩國ハ主權及自治ヲ強奪セラレタル者ニ主權及自治カ返還セラルルコトヲ希望ス。 (政府形態を選択する人民の権利)

 

 第一次世界大戦後のヴェルサイユ体制(パリ講和会議)はそれまでの植民地主義、帝国主義さらに敗戦国に対する制裁や懲罰的賠償と言った旧来の方式が色濃く表れた。オスマントルコ帝国に対しては同国が支配していた現在のシリア、レバノン(いわゆるレバント地方)及びヨルダン、パレスチナ、イラク等の中東地域を前者はフランスが、そして後者は英国が植民地支配する体制となった。これは第一次大戦中の1916年に両国(及びロシア)が締結したサイクス・ピコ協定に基づくものである(同協定を含め有名な「英国の三枚舌外交」とされるフセイン・マクマホン協定、バルフォア宣言についてはプロローグ4,5、6章参照)。またドイツに対しては領土割譲と共に厳しい再軍備規制が課せられた。しかしそのことがかえってナチス・ドイツを生む原因となりわずか20年後に第二次世界大戦が発生したのである。大西洋憲章はこの失敗を教訓としたものであり、政治、外交に対する米国の建国以来の(そして70年後の現在も変わらない)理想主義を高らかに歌い上げたものである。

 

こうして戦後の中東でも理想実現に向かって国民国家の独立運動が始まった。その嚆矢が1946年のヨルダン王国及びシリア共和国の成立であった。もちろん両国成立の背景には複雑な事情が絡んでおり、国民国家の独立と単純に割り切ることはできない。しかしあえて単純化するとすればヨルダン王国は英国とアラブの名門部族ハーシム家が結んだフセイン・マクマホン協定の産物であり、シリア共和国はフランスが帝国主義支配の隠れ蓑として作り上げた極めて脆弱な共和国だったのである。

 

ヨルダン、シリアに続いてこの後中東では次々と国家が成立する。しかしそこにあるのは民族(血)と宗教(心)と政治思想(智)が溶け合うことなく自己主張を重ねる世界であり、さらに米国とソ連の東西対立の代理戦争の世界であった。

 

(続く)

 

荒葉 一也

E-mail: areha_kazuya@jcom.home.ne.jp

 

ホームページ:OCIN INITIATIVE 

(目次)

 

 



[1] 東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室 日本政治・国際関係データベースより

http://www.ioc.u-

tokyo.ac.jp/~worldjpn/documents/texts/docs/19410814.D1J.html

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中国、世界最大のガス輸入国に:BPエネルギー統計2019年版解説シリーズ天然ガス篇 (18)

2019-08-28 | BP統計

BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2019」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量、貿易量及び価格のデータを抜粋して解説したものである。

 *BPホームページ:

http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html

 

(3) LNG貿易(続き)

(LNG輸入大国に躍り出た中国!)

(3-3) 2009年~2018年の国別輸入量の推移

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-4-G04.pdf 参照)

 世界全体のLNG輸入量は2009年の2,497億㎥から2018年には1.7倍の4,310億㎥に増加している。10年間を通じて輸入量が最も多いのは日本であり、2009年の889億㎥が2018年には1.3倍の1,130億㎥に増加している。この間特に2011年、2012年の両年は対前年伸び率が二桁の大幅な伸びを示している。これは原発の運転停止のため火力発電用LNGの輸入が急増したことが主な要因である。その一方、2015年及び2016年は連続して前年より減少しており10年間の平均増加率は2.9%である。この間の世界のLNG輸入平均増加率は6.4%であり日本のそれは2分の1以下である。この結果日本のLNG輸入が世界全体に占める割合は2012年の36.9%をピークに一貫して下がり続けており2017年はついに3割を切り2018年のシェアは26.2%であった。

 

これに対して昨年日本に次いで世界第2位のLNG輸入大国になったのが中国である。2009年の中国のLNG輸入量は80億㎥であり日本の10分の1、韓国の5分の1強に過ぎず、インド、台湾などよりも少なかった。しかしその後は急激に増加し、2012年には200億㎥、2016年には300億㎥、そして2018年にはついに700億㎥を突破、10年間で10倍に急増、韓国をしのぐ世界2位のLNG輸入大国になったのである。この結果世界に占める割合も2009年の3.2%から2018年には17%に拡大している。

 

日本、中国に次いで輸入量が多いのは韓国であるが日本との差は大きい。同国の輸入量は2009年が353億㎥であり、2018年には602億㎥に増加しているが、それでも日本の輸入量の約半分である。

 

この他の主なLNG輸入国はインド、台湾、スペイン、トルコであるが、上位5か国は全てアジア諸国であり、特にそのうち4カ国(日本、韓国、中国、台湾)は極東アジアの工業国である。日本、韓国及び台湾は国内にガス資源が殆ど無く、またパイプラインで近隣国から輸入する手段も無いため天然ガスをLNGに依存しているのである。なお2000年には10カ国にとどまっていたLNGの輸入国の数は現在30カ国以上に増加しており、LNG受入設備を建設中の国もある。今後LNG貿易はこれまでの需給直結型に加え、市場での転売を目的とした貿易型も増えると見られ、LNG貿易に参入する国は多様化するものと見込まれる。

 

(続く)

 

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        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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石油と中東のニュース(8月27日)

2019-08-27 | 今日のニュース

(参考)原油価格チャート:https://www.dailyfx.com/crude-oil

(石油関連ニュース)

・米中貿易協議再開発言で原油価格上昇。WTI $54.58, Brent $59.74

・イラン、拿捕解除のタンカーを210万バレルの積み荷毎売却。売却先は不明

(中東関連ニュース)

・状況が許せばイラン大統領と会談の用意あり:トランプ大統領、仏大統領との共同記者会見で語る。9月末のNY国連総会で実現か?

・トランプ大統領、シーシ・エジプト大統領と会談

・イラン外相、仏を電撃訪問。マクロン大統領と会談。米側とは接触なし

・サウジ/UAE、イエメン支援のジェッダ会議で結束を強調

 

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中国、世界最大のガス輸入国に:BPエネルギー統計2019年版解説シリーズ天然ガス篇 (17)

2019-08-27 | BP統計

(注)本レポートは「マイライブラリー」で一括してご覧いただけます。

http://mylibrary.maeda1.jp/0477BpGas2019.pdf

 

BPが毎年恒例の「BP Statistical Review of World Energy 2019」を発表した。以下は同レポートの中から天然ガスに関する埋蔵量、生産量、消費量、貿易量及び価格のデータを抜粋して解説したものである。

 *BPホームページ:

http://www.bp.com/en/global/corporate/energy-economics/statistical-review-of-world-energy.html

 

(3) LNG貿易(続き)

(急成長するオーストラリアと米国のLNG輸出シェア!)

(3-2) 2009年~2018年の国別輸出量の推移

(図http://bpdatabase.maeda1.jp/2-4-G03.pdf 参照)

2009年に2,497億㎥であったLNGの輸出量は毎年伸び、翌2010年は前年比21%の大幅な伸びを示し3,000億㎥を突破した。2012年から2015年までは停滞したが、2017年及び2018年は9%台の高い増加率を示した。その結果2018年のLNGの輸出総量は4,310億㎥に達した。これは2009年の1.7倍であり、この間の年平均成長率は6.4%を記録している。

 

国別で見ると2009年当時はカタールの輸出量は518億㎥で全世界に占める割合は21%であり、これに次いでマレーシアが300億㎥強(12%)、インドネシア270億㎥(11%)、オーストラリア250億㎥(10%)であった。その後2009年から2011年にかけてカタールの輸出量が急激に増加、2011年には1千億億㎥を突破、世界に占める割合も3割を超えている。カタールは年産7,700万トン体制と呼ばれる世界最大のLNG生産能力を確立したことが飛躍の大きな要因である。このころから米国でシェールガスの開発が急速に発展しカタールの対米輸出の目論見が外れたため同国の過剰設備が危惧されたが[1]、福島原発事故によるLNGの突発的需要増で設備はフル稼働の状況となった。日本にとっては不幸な原発事故ではあったが、カタールには思わぬ僥倖だったと言えよう。但し2013年の1,058億㎥、シェア32%をピークにカタールの輸出量は足踏み状態となり、その結果市場シェアは下降気味であり、2016年には30%を割り、更に2018年のシェアは2010年の水準に逆戻りしている。

 

一方でロシアがLNG輸出能力を高めつつあり、またオーストラリアでは新しいLNG輸出基地が稼働を始め、さらに米国でも輸出が始まるなどカタールの地位を脅かす動きが出ている。特にオーストラリアの伸びが著しく、2018年の輸出量は2009年の4倍弱の918億㎥に達し、世界シェアも2割を超えカタールに次ぐ世界第2位の地位を確立している。

 

近年急速に輸出を伸ばしているのが米国である。同国は2015年まで数億㎥の輸出にとどまっていたが、シェールガスの開発により国内需要を上回る天然ガスが生産されるようになり、LNGの輸出基地建設に着手した。この結果輸出量は2016年に40億㎥、2017年は172億㎥に急増、2018年にはついに284億㎥を輸出し、世界第4位のLNG輸出大国になっている。

 

 インドネシアはかつてカタールと並ぶLNG輸出大国であったが、ここ数年LNG輸出量は減少に歯止めがかからず2010年の324億㎥をピークに減少、過去2年間は200億㎥をわずかに上回る状況である。同国は大きな人口を抱えているため今後輸出余力が乏しくなるのは間違いなく、かつて石油の輸出国から純輸入国に転落したようにいずれ天然ガスについても同様の道を歩む可能性は否定できない。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

        前田 高行         〒183-0027東京都府中市本町2-31-13-601

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                               E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp



[1] 拙稿「シェールガス、カタールを走らす」参照。

http://mylibrary.maeda1.jp/0148ShaleGasQatar.pdf 

 

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