石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

中東と石油のニュース(6月12日)

2024-06-12 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

・原油価格もみ合い。FRB会合の結論待ち。Brent $81.49,  WTI $77.56

(中東関連ニュース)

・国連安保理、米のGaza停戦案を可決。ロシア棄権

・ガザの人道危機は休戦を待てない:ヨルダン国王が精力的な外交展開

・ロシアでBRICS外相会合、サウジ外相も出席

・イラン:BRICS会合は単独主義の対抗策と高く評価

・イスラエル議会、超正統派ユダヤ教徒の徴兵案復活。国防相は手ぬるいと批判

 

・エジプト:5月のインフレ率28.1%、専門家予想を下回る

・Forbes ME、中東企業100社番付発表。アラムコがトップ

・サウジ電気自動車メーカーCeer、韓国現代と20億ドルの部品輸入契約

 

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ENEOSの年間売上高をしのぐアラムコ利益:邦系2社vs IOCs/Aramco2023年(度)業績比較(8完)

2024-06-12 | 海外・国内石油企業の業績

6.財務キャッシュフロー 

(財務に熱心なアラムコ/メジャーズ、関心の薄い日系!)

(1) 2023年(度)財務キャッシュフロー

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-06.pdf 参照)

 2023年(度)の財務キャッシュフローを比較するとENEOSは▲3,310億円(▲23億ドル、換算レート:145円/ドル)であり、出光は▲2,805億円(19億ドル、換算レート:144.6円/ドル)であった。一方メジャー5社はShellが▲382億ドルと最も大きく、次いでExxonMobil(▲343億ドル)、Chevron(▲301億ドル)、TotalEnergies(▲297億ドル)、bp (▲134億ドル)であり、またアラムコは▲1,362億ドルであった。ExxonMobilと比べた場合、アラムコは4倍であり、一方出光は20分の1にとどまっている。

 

(極めてダイナミックなアラムコとメジャー5社の財務キャッシュフロー!)

(2) 2019年(度)~23年(度)財務キャッシュフローの推移

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-16.pdf 参照)

 2019年のメジャー5社の財務キャッシュフローはShellの▲352億ドルを筆頭に、ChevronはShellの6割(▲198億ドル)であった。その他3社は70億ドル前後であり、各社の財務戦略には大きな違いが見られた。同年度の日系2社のそれはENEOSが▲11億ドル、出光は15億ドルのプラスであった。またアラムコは▲653億ドルであった。アラムコの財務C/Fが飛び抜けて高く、メジャーズもその多くが300億ドル前後あるのに対して、邦系2社の財務C/Fは極めて少ない。

 

2020年(度)は世界的なコロナ禍と経済縮小の影響を受けてメジャーズ5社は財務改善に走り、ExxonMobilなど3社はプラスに転換、Shellの財務キャッシュフローも前年の5分の1の規模に縮小している。ところが2021年には一転してメジャーズ各社は積極的な財政出動を行っており、ExxonMobil(▲354億ドル)、Shell(▲347億ドル)の2社が▲300億ドルを超え、TotalEnergies、Chevronは250億ドル前後、最も少ないbpも▲181億ドルのキャッシュフローであった。これに対し日系2社は大きな変化は見られず、この傾向は2022年(度)も引き継がれた。

 

 これに対してアラムコの財務C/Fを年々増加しており2022年に千億ドルの大台を突破、2023年の財務C/Fは1,362億ドルに達している。メジャーズ5社も2021年以降年間財務C/Fはほぼ200億ドルを超える水準を維持している。アラムコとメジャーズは極めてダイナミックな財務活動を行っていると言えよう。

 

以上

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

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ENEOSの年間売上高をしのぐアラムコ利益:邦系2社vs IOCs/Aramco2023年(度)業績比較(7)

2024-06-11 | 海外・国内石油企業の業績

4.投資キャッシュフロー 

(▲100億ドルを超えるメジャーズ及びアラムコ!)

(1)2023年(度)投資キャッシュフロー

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-05.pdf 参照)

 2023年(度)の投資キャッシュフローを比較するとENEOSは▲2,410億円(▲17億ドル、換算レート:145円/ドル)であり、出光は▲658億円(5億ドル、換算レート:144.6円/ドル)であった。一方メジャー5社はExxonMobilが▲193億ドルと最も大きく、次いでShell(▲177億ドル)、TotalEnergies(▲165億ドル)、Chevron(▲152億ドル)、bp(▲149億ドル)であり、5社ともに投資キャッシュフローは100億ドルを超えている。アラムコの投資C/Fは▲144億ドルでありメジャー5社よりも少ない。

 

(5カ年平均▲400億ドルのアラムコ、▲170億ドルのExxonMobil、一桁台の出光!)

(2)2019年(度)~23年(度)投資キャッシュフローの推移

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-15.pdf 参照)

 2019年のアラムコの投資キャッシュフロー▲472億ドルである。メジャー5社はExxonMobilの▲231億ドルを筆頭にTotalEnergies及びbpが▲170億ドル強で並び、Shellは▲158億ドル、Chevronが最も少ない▲115億ドルであった。これに対してENEOSは▲34億ドル、出光は▲12億ドルであった。

 

 2020年はアラムコが▲56億ドルと大幅に減少、その他各社も前年比で減少した。続く2021~2022年はアラムコの投資C/Fは反転、2022年には1千億ドルを超えた。メジャーズ各社も増勢を示したが、日系2社は減少しており、出光の場合2022年度は5億ドルの純減となっている。2023年はアラムコが▲144億ドルとメジャーズを下回る投資C/Fとなっている。

 

 アラムコの投資C/Fは過去5年間で大きな増減を繰り返しているが、5カ年平均で見ると年間▲414億ドルである。メジャーズ5社の場合、ExxonMobilの▲172億ドルが最も多く、Chevronの▲103億ドルが最も少ない。これに対しENEOSの5カ年平均は▲24億ドルであり、出光は平均▲6億ドルとアラムコ、欧米メジャーズに比べ大きく見劣りする。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

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見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(166)

2024-06-11 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第6章:現代イスラームテロの系譜(21

 

166 敵と味方を峻別する一神教(5/6)

ところがイラク戦争は全く別の次元で始まり、別の次元で終わった。米国がイラク戦争の開戦理由とした大量破壊兵器は見つからず、またフセイン政権とアルカイダとの関係も証明できなかった。湾岸戦争ではクウェイト解放という大義名分があったが、イラク戦争が何だったのか米国は答えられない。

 

それでも米国は戦争により圧制者サダム・フセインの政権が倒れ、イラクに民主政権誕生の素地が生まれたと主張した。しかしフセイン政権崩壊後のイラクはまるでパンドラの箱を開けたかのごとき様相を示した。3年後の2006年、サダム・フセインは公開裁判を経て処刑されたが、イラクはスンニ派とシーア派が攻守を変えた政争に明け暮れている。そこに付け込んだのが「イラクとシリア(或いはシャーム)のイスラム国(略称ISIS)」であり、後にアブ・バクル・アル・バグダーディが自らカリフを名乗る「IS(イスラム国)」となって猛威を振るっている。

 

(続く)

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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中東と石油のニュース(6月10日)

2024-06-10 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

 

(中東関連ニュース)

・イスラエル、人質4名救出。空爆でパレスチナ人210名死亡

・イスラエル戦時内閣のGantz元国防相、ガザ戦後体制不備を理由に内閣離脱

・イラン監督者評議会、大統領選候補者6名を発表。6月28日に選挙

・イエメンフーシ派、公海上の商船2隻をミサイル攻撃

・トルコ;ドローン製造Baykar社、輸出十大企業の一社に加わる

・和歌山串本にトルコ艦船来航。エルトゥールル号慰霊祭に参加

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ENEOSの年間売上高をしのぐアラムコ利益:邦系2社vs IOCs/Aramco2023年(度)業績比較(6)

2024-06-10 | 海外・国内石油企業の業績

3.営業キャッシュフロー 

(アラムコの営業C/FはExxonMobilの2.6倍、ENEOSの20倍!)

(1) 2023年(度)営業キャッシュフロー

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-04.pdf 参照)

 2023年(度)の営業キャッシュフローを比較するとENEOSは1兆103億円(70億ドル、換算レート:145円/ドル)であり、出光は3,770億円(26億ドル、換算レート:144.6円/ドル)であった。メジャー5社はExxonMobilが554億ドルと最も大きく、次いでShell(542億ドル)、TotalEnergies(407億ドル)、Chevron(356億ドル)、bp(320億ドル)であった。一方、アラムコの営業C/Fはこれら各社を大きく上回る1,434億ドルであり、これはExxonMobilの2.6倍、ENEOSの20倍である。

 

(営業の稼ぐ力をそがれているENEOS/出光!)

(2)2019年(度)~2023年(度)営業キャッシュフローの推移

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-14.pdf 参照)

 2019年(度)から2023年(度)までの5年間の営業キャッシュフローの推移を見ると、アラムコ及びメジャーズと邦系2社の動きは大きく異なる。即ち、アラムコ及びメジャーズ計6社は2019年から2020年にかけて急落した後、2021年、2022年はV字回復し、2023年は減少している。これは売上高或いは原油価格の推移(前項2(2))と非常に近似している。

 

これに対してENEOS及び出光はメジャーズと全く逆に、2020年度は前年度よりキャッシュフローが増加しており、2021年度は大きく減少、2022年度は営業C/Fがマイナスであり、これはC/Fの流れとしては極めて異常と言える。

 

同年のENEOS決算説明資料を見ると、法人所得税・消費税の支払い等による資金減少要因が税引き前利益等の資本増加要因を上回ったため、としており、出光も同様の説明を行っている。政府の指導によりガソリン等の末端価格の激変緩和措置に伴い支払い消費税が増加した等の特殊要因があったためである。このような措置は原油及び製品価格の激変から消費者及び石油精製企業双方を保護しようとする政府の政策によるものであり、メジャーズと異なる極めて特殊な操業環境の結果である。両社の営業の稼ぐ力がそがれていると言えよう。

 

 年(度)別の推移を具体的に見ると、2019年はアラムコが1,111億ドルと突出して多く、メジャーズではShellの422億ドルが最も多く、他の4社が200億ドル台であった。ENEOSの営業キャッシュフローは47億ドルにとどまり、出光の場合は▲3億ドルであった。

 

2020年(度)にはアラムコ及びメジャーズ5社は大幅に減少したが、邦系2社は逆に前年度を上回るキャッシュフローを生み出している。但し金額的にはメジャーズで最も少ないChevronよりも低い水準にとどまっている。2021年、22年にかけてアラムコ及びメジャーズの営業キャッシュフローは大幅に改善し、2022年(度)のアラムコのC/Fは過去5年間で最も多い1,862億ドルに達した。メジャーズの中ではExxonMobilが768億ドルで最も多く、次いでShell(684億ドル)、Chevron(496億ドル)、TotalEnergies(474億ドル)、bp(409億ドル)であった。

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

                   Tel/Fax; 042-360-1284, 携帯; 090-9157-3642

                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

 

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見果てぬ平和 ― 中東の戦後75年(165)

2024-06-08 | 中東諸国の動向

(英語版)

(アラビア語版)

 

(目次)

 

第6章:現代イスラームテロの系譜(20

 

165 敵と味方を峻別する一神教(4/6)

イスラームの場合、原理主義はムハンマドの布教初期の精神に立ち返ろうと呼びかけるサラフィー主義、つまり復古主義である。原理主義者たちは教義と組織を近代社会に合わせようとしているのではなくむしろその逆である。

 

なぜそのような復古主義が大手を振ってまかり通るのか。それはイスラームがたかだか7世紀余り前、すでにある程度の世界規模の通商体制が整った14世紀に生まれたためと考えられる。原理主義者たちは7百年前の当時に戻ることが可能だと説く。キリスト教にも原理主義はあるが(元来「原理主義」という言葉は米国福音派の機関紙名が起源である)、キリスト教が生まれた今から2千年前は農耕牧畜の農奴社会の時代であり、生活のすべてを復古することはあり得ず、ただキリストの教えの原点に立ち返ろうということになる。ところがイスラームの原理主義者たちはできるだけ昔の生活を取り戻そうと本気で考える。

 

原理主義者たちは自分が絶対正しいと信じ込んでいるだけに拙速に自分たちの理想の実現に取り組む。この結果、彼らは対決する相手だけではなく、一般市民からも敬遠される。それでも彼らの勢力が衰えない間は、彼らは一般市民を無理やり従わせようとする。従わない者は「異端者」或いは「背教者」として暴力的に排除される。そして彼らの思想に同調或いは感化された過激な若者をテロリストとして利用し、自爆テロで命を落とした場合は「殉教者」として祭りあげる。教義に逆らえない一般市民はただただ過激な原理主義の嵐が通り過ぎるのを耐えて待つことになる。

 

(続く)

 

 

荒葉 一也

E-mail: Arehakazuya1@gmail.com

 

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今週の各社プレスリリースから(6/2-6/8)

2024-06-08 | 今週のエネルギー関連新聞発表

6/2 OPEC

Saudi Arabia, Russia, Iraq, the United Arab Emirates, Kuwait, Kazakhstan, Algeria, and Oman met in person in Riyadh on the sidelines of the 37th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting (ONOMM)

https://www.opec.org/opec_web/en/press_room/7339.htm

 

6/2 OPEC

37th OPEC and non-OPEC Ministerial Meeting

https://www.opec.org/opec_web/en/press_room/7337.htm

 

6/3 ENEOSホールディングス

中央技術研究所をリニューアルします! ~新研究棟へ研究機能を集約し、イノベーションを加速~

https://www.hd.eneos.co.jp/newsrelease/upload_pdf/20240603_01_01_0906370.pdf

 

6/3 石油連盟

石油連盟会長コメント 第37回OPECおよび非OPEC閣僚会合の終了にあたって

https://www.paj.gr.jp/news/957

 

6/4 経済産業省

「令和5年度エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2024)が閣議決定されました

https://www.meti.go.jp/press/2024/06/20240604001/20240604001.html

 

6/4 経済産業省

2024年度夏季の電力需給対策を取りまとめました

https://www.meti.go.jp/press/2024/06/20240604002/20240604002.html

 

6/4 TotalEnergies

TotalEnergies Increases LNG Deliveries to Asia with Two New Medium and Long-Term Contracts

https://totalenergies.com/news/press-releases/totalenergies-increases-lng-deliveries-asia-two-new-medium-and-long-term

 

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中東と石油のニュース(6月7日)

2024-06-07 | 今日のニュース

(石油関連ニュース)

原油/天然ガス価格チャート:https://tradingeconomics.com/commodity/brent-crude-oil

・FRB、9月に利下げの観測受け原油価格下落。Brent $78.74, WTI $74.46

・IEF、2030年の世界石油需要1.1兆B/D。石油ガスに4.3兆ドル投資必要

・サウジ石油相:2025-27年に生産能力を1,300万B/Dに28年には1,230万B/D

(中東関連ニュース)

・イスラエル軍、ガザ小学校攻撃、婦女子14人含む30人死亡

・UAE大統領、アフガニスタン内相と会談

・米、トルコにF-16戦闘機40機売却。スウェーデンNATO加盟承認の見返り

・香港キャセイ航空、今秋にリヤド直航便開設

 

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ENEOSの年間売上高をしのぐアラムコ利益:邦系2社vs IOCs/Aramco2023年(度)業績比較(5)

2024-06-07 | 海外・国内石油企業の業績

2.売上高 (続き)

(原油価格とほぼ連動するアラムコとメジャーズ、影響の薄いENEOS/出光!)

(2)2019年(度)~23年(度)年間売上高の推移

(図http://menadabase.maeda1.jp/2-D-5-12.pdf 参照)

 2018年(度)から2023年(度)までの5年間の年間売上高の推移を見ると、まず目につくのは原油価格との連動性である。アラムコとメジャーズ5社は原油価格の変動との相関性が極めて高いのに比べ、邦系2社の売上高は相関性が低い。ENEOSと出光の変動が少ない理由はアラムコ及びメジャーズは原油販売が大きな割合を占めるため原油価格の変動に左右されやすいのに対し、邦系2社は原油を仕入れて製品を売る精製専業であることが一因である。そして本稿の冒頭でも触れた通り原油仕入れ価格の変動をほぼ自動的に製品価格に転嫁できる制度に助けられているため原油価格の騰落は売り上げに影響されない。また国内の石油市場が成熟しており需要が好不況に左右されにくいことも売上高の変動幅が少ない一因と言えよう。

 

 具体的に各社の年(度)売上推移を見ると、2019年(度)のアラムコ売上高は3,298億ドルであった。メジャーズ5社の中ではShellが3,449億ドルとアラムコを上回り、次いでbp 2,784億ドル、ExxonMobil 2,649億ドル、TotalEnergies 2,003億ドルでChevronがメジャーズでは最も少ない1,399億ドルであった。これに対してENEOSは10兆100億円(919億ドル、換算レート109円/ドル)、出光は6兆4百億円(同556億ドル、108.7円/ドル)であった。ExxonMobilの売上高はアラムコの8割であり、ENEOSはアラムコの3割弱にとどまっている。

 

 Brent原油の年間平均価格は2019年の64ドル/バレルが翌2020年には42ドルに急落、しかし続く2年間は原油価格が急騰、2021年の71ドルから2022年には101ドルに達している。そして2023年は83ドル/バレルに再び落ち込んでいる。

 

 アラムコ及びメジャーズ5社の売上高は多少異なる様相を示しているものの、ほぼ原油価格の騰落と歩調を合わせている。例えば原油価格とアラムコ、ExxonMobil及びENEOSの対前年増減比を並べると以下のとおりでありENEOSと他の違いが明らかである。

              2020/2019年   2021/2020年   2022/2021年   2023/2022年

原油価格      ▲35% →     70%   →     43%   →     ▲18%

アラムコ      ▲30% →     74%   →     51%   →     ▲18%

ExxonMobil     ▲32% →     57%   →     45%   →     ▲17%

ENEOS         ▲21% →     35%   →     14%   →     ▲14%

 

(続く)

 

本稿に関するコメント、ご意見をお聞かせください。

     前田 高行     〒183-0027 東京都府中市本町2-31-13-601

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                   E-mail; maeda1@jcom.home.ne.jp

 

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