石油と中東

石油(含、天然ガス)と中東関連のニュースをウォッチしその影響を探ります。

OPEC内部で対外路線の違いが浮き彫りに(「OPEC加盟国拡大」改題)

2006-07-30 | OPECの動向

全文は「石油文化」ホームページをご覧ください。

なお本稿は先に4回にわたり連載した「(ニュース解説)OPEC総会で加盟国拡大を非公式協議」を改題し、内容を一部手直ししたものです。

 (要旨)

  去る6月1日にベネズエラで開催されたOPEC総会で、主催国のベネズエラのチャベス大統領は、アンゴラ、スーダン、エクアドルの3カ国をOPECの正式メンバーに加え、ボリビアをオブザーバーとするOPECの拡大提案を行ったと言われる。

  OPECは1960年に設立され、現在の加盟国は11カ国である。設立当初は欧米石油企業(いわゆるメジャー)に握られていた石油価格の支配権を産油国に取り戻すことが主眼であった。その後OPECは強力なカルテル機構となり、1970年代の二度のオイル・ショックでその力を見せ付けた。しかし1980年代後半には価格支配力を失った。

  現在OPECの復権が言われている。このような状況下でベネズエラがOPECの拡大を狙っているのは米国に対抗するためにOPECを利用しようとする極めて政治的な陰謀と言えるであろう。しかし石油価格が高い時代も低い時代もOPECは非難の矢面に立たされてきたため、OPEC穏健派は「政治はタブー」と肝に銘じている。

  OPECは消費国との対決ではなく対話を望んでいる。そして対話のパートナーにEUを選んだ。OPECとEUの対話は2005年に始まり、今年6月に第3回が行われた。今回の対話ではテクノロジー・センターの設立、エネルギー政策円卓会議など具体的な行動計画が合意された。

  OPECは産消対話の相手として、世界最大のエネルギー消費国の米国あるいは中国やインドなどではなく、EUを選んだ。OPECの主要メンバーは、中東北アフリカ(MENA)諸国である。ヨーロッパとMENAには長い抗争の歴史があり、それ故にお互いを知り尽くした間柄である。それがOPECが対話の相手にEUを選んだ理由であろう。

 (目次)

1.ベネズエラがアンゴラなど3カ国のOPEC加盟を提案

2.生産量のシェア以上に急落したOPECの輸出シェア

3.石油を武器にしたくないOPEC穏健派

4.OPECの産消対話のパートナーはEU

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原油価格が明暗を分けたExxonMobil本社と日本子会社東燃ゼネラル石油の対照的な業績

2006-07-29 | 今週のエネルギー関連新聞発表

 今週、世界最大の石油会社ExxonMobil(エクソン)と日本の子会社東燃ゼネラル石油が上半期の業績を公表したが、原油価格の高騰がはっきりと両社の明暗を分けている。

  エクソンの発表によれば、同社の上半期の純利益(Net Income)は188億ドル(115円換算で約2.2兆円)に達し前年同期比の21%増である。特に第二四半期(4-6月)だけを見ると104億ドルであり前年同期比36%となっている。利益188億ドルのうち135億ドルが上流部門であり、同社が原油価格高騰の恩恵を受けていることを如実に示している。

 これに対して子会社の東燃ゼネラル石油は、前回(2月)の予想を大幅に下回る中間業績修正を発表した。これによると上半期の営業利益(単体)は前回予想の135億円に対しわずか2億円にとどまっている。同社の説明によれば、業績悪化の要因は原材料コスト(原油価格)がバレルあたり12ドルも急騰したためである。なお4月に堺工場で火災事故が発生し操業が一時停止したが、その影響は「原油価格上昇の影響に比べ軽微にとどまった」としている。

***** 最新の業界ニュース(プレスリリース)を見る。 → 「石油文化」ホームページ *****

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BP統計に見るエネルギー資源の埋蔵量・生産量・消費量(その3:石油+天然ガス篇)

2006-07-27 | 今週のエネルギー関連新聞発表

全文は「石油文化」ホームページをご覧ください。

その1:石油篇(「ピークオイル論を検証する」)

その2:天然ガス篇(「急増する需要と偏在するガス田」)

 

(要約)

 石油と天然ガスはエネルギーの中枢をなしている炭化水素資源である。BPが毎年公表するエネルギー統計の2006年版「BP Statistical Review of World Energy June 2006」(以下「BP統計」)に示された石油と天然ガスのデータについて、天然ガスを石油に換算して両者を合計した埋蔵量、生産量及び消費量について分析する。

  石油と天然ガスを合計した全世界の埋蔵量は、2兆3,320億バレル(石油換算、以下同じ)である。埋蔵量のうち51%は中東に、23%は欧州・中央アジア(主としてロシア)にあり、両地域で世界の埋蔵量の4分の3を占めている。国別で埋蔵量が最も多いのはロシアの3,750億バレルで、世界全体の16%を占め、これに続くのがサウジアラビア、イラン、カタール、UAE等のOPEC諸国である。このような中でエネルギーの大消費国である米国が世界第10位の埋蔵量を有していることは注目に価する。

 生産量ではロシアが世界最大の石油・天然ガス生産国であり、その合計は1,986万B/Dに達している。これに次ぐのが米国の1,589万B/Dであり、また中国は世界第6位の生産国である。米国及び中国はエネルギーの輸入大国であるが、生産量も多いことに留意すべきであろう。

  消費量は米国が3,157万B/Dであるが、これは世界全体の4分の1を占めており、他の国を圧倒している。このほか石油・天然ガスの消費大国としては日本、ドイツ、イタリアなどの非産油・ガス国があり、また近年目覚しい経済成長を遂げている中国、インドもエネルギー消費大国の一角を占めている。

  世界全体に占める地域別の埋蔵量と消費量を比較すると、中東は埋蔵量では世界の51%であるが、消費量は8%にとどまっており、これに対して北米或いはアジア・大洋州の埋蔵量は世界の5%程度に過ぎないにもかかわらず、消費量では24~29%を占めている。北米の可採年数(R/P)はわずか11年であり、米国、中国、インドなどの消費大国は今後石油或いは天然ガスの中東への依存度が一層増大するものと予想される。

  ある国の生産量が消費量を上回る場合、その国は輸出余力があることを示し、逆の場合は自給率が低いことを表す。輸出余力の高い国は、ロシア、サウジアラビア、ノルウェーなどである。特にロシアとサウジアラビアはそれぞれ1千万B/D前後という飛びぬけて高い輸出余力を持っている。一方、自給率が低い先進国としては、ほぼ全量を輸入に頼っている日本やドイツ(自給率7%)がある。米国はロシアに次ぐ世界第2位の石油・天然ガスの生産国であるが、消費量が生産量の2倍であり自給率は50%にとどまっている。中国、インドの自給率はそれぞれ58%、42%である。但し両国は近年目覚しい経済発展を遂げており、それに伴って石油・天然ガスの需要が急増している。従って自給率が今後さらに低くなることは間違いない。

目次

1. まえがき

2. 2005年末の石油と天然ガスの合計埋蔵量(地域別、国別)

3. 2005年の石油と天然ガスの合計生産量(国別)

4. 2005年の石油と天然ガスの合計消費量(国別)

5. 埋蔵量、生産量、消費量及び可採年数の地域別比較

6. 輸出余力の高い国と自給率の低い国

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BP統計に見るエネルギー資源の埋蔵量・生産量・消費量(その2:天然ガス篇)

2006-07-21 | 海外・国内石油企業の業績

(本文は石油文化ホームページをご覧ください)

(要約)

 BPが毎年公表するエネルギー統計の最新版「BP Statistical Review of World Energy June 2006」(以下「BP統計」)によれば2005年末現在の世界の天然ガス埋蔵量は約180兆立方米(以下tcm: trillion cubic meters)であった。同じ年の天然ガス生産量は2.8tcm、R/P(可採年数)は65年である。これは石油のR/Pの1.6倍であり比較的余裕がある。石油と同じく全世界の埋蔵量の4分の3が中東地域と欧州・中央アジア地域に集中しているが、石油が特に中東地域に集中しているのに比べ、天然ガスの場合はこの両地域がほぼ同じ埋蔵量を有している。国別に見るとロシアの埋蔵量が世界全体の3割弱を占め、これに次ぐのがイランとカタールである。これら3カ国で世界の埋蔵量の半分強を占めている。

 生産量ではロシアと米国が突出しており、消費量では米国が世界全体の4分の1を占めている。全生産量(2.8tcm)のうち26%(0.7tcm)がパイプライン或いはLNG(液化天然ガス)として輸出されている。

 世界的なエネルギー需要の増加に加え、中でもクリーンエネルギーと位置づけられた天然ガスに対する需要は今後ますます大きくなるものと思われる。最近では需要増に埋蔵量の増加が追いつかないためR/Pは2001年の70年をピークに年々低くなっている。

 天然ガスの需要拡大に対応してパイプライン、LNG搬出・受入施設及びLNG専用運搬船の建設計画が進められている。これまで天然ガスは生産者と需要家が直結しており両者は比較的穏やかな関係であった。しかし、中国、インドなどが需要家として世界の天然ガス市場に台頭してきており、今後は石油と同様の熾烈な資源獲得競争が展開される気配である。

 目次

1. 2005年の全世界、地域別および国別埋蔵量

2. 2005年の地域別及び国別の生産量と消費量

3. 2005年のパイプライン及びLNGによる輸出入状況

4. 1980~2005年の埋蔵量、生産量及び可採年数(R/P)の推移

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(ニュース解説)OPEC総会で加盟国拡大を非公式協議(第4回)

2006-07-12 | OPECの動向

(前回までの内容)

第1回:ベネズエラがアンゴラなど3カ国のOPEC加盟を提案

第2回:生産量のシェア以上に急落したOPECの輸出シェア

第3回:石油を武器にしたくないOPEC穏健派

 

第4回(最終回):OPECの産消対話のパートナーはEU

  OPECとEUの第1回対話は昨年6月にブリュッセルのEU本部で行われた。そして同年12月にはウィーンのOPEC本部で第2回、今年6月再びブリュッセルで第3回が開かれた。3回目の対話では後述するように具体的な共同作業計画が合意され、両者の対話は軌道に乗りつつあるようである。

  産油国と消費国の対話、いわゆる産消対話としては「国際エネルギー・フォーラム」(International Energy Forum, 以下IEF)が長い歴史を有している。IEFは湾岸戦争を契機として1991年に第1回会議が仏で行われ、以後隔年に開催、2002年には大阪で第8回IEFが開かている。そして今年4月にはカタールのドーハで第10回会議が開催され59カ国のエネルギー担当の閣僚級および6国際機関の代表が参加した。因みに日本からは二階経済産業大臣及び遠山外務大臣政務官が出席している。

  IEFはこのように大規模な国際会議に発展したが、それに反して具体的な成果は殆ど生まれていない。2004年のIEF開催時には原油価格が45ドル/バレルに高騰し、また第10回会議が行われた今年4月には市場で75ドル/バレルの史上最高値となったにもかかわらず、産油国と消費国の両者が協力して油価の沈静化を図る動きは見られなかった。会議では消費国側が産油国の余剰生産能力の不足を非難し、一方産油国側は、石油価格高騰の原因は消費国特に米国の精製能力の不足と欧米の投機資金の動きにあると非難し、両者は不毛な議論を繰り返したのである。会議閉幕後に発表された「結語」では「高油価が世界経済、特に発展途上国に与える影響の可能性について懸念を表明した」との一文が盛り込まれたにとどまった。そして「対話と協力を強化する必要性を打ち出した」と言う表現こそ会議が何の成果も無く小田原評定であったことを如実に示している。

  利害関係が複雑に錯綜する多数の国家と国際機関が一同に会する国際会議は、最近のWTOに見られるように暗礁に乗り上げる例が多く、現在のIEFもその悪弊に陥っているようである。IEFにはサウジアラビアのナイミ石油相が出席していたが、彼も会議には情報交換以外殆ど期待していなかったと思われる。

  しかしロシアに次ぐ世界第二位の産油国であり、大きな輸出余力を有すると見られるサウジアラビアに対して、世界の石油消費国は熱い視線を送ると同時に同国の増産ペースの鈍さに怨嗟の声すら漏らしている。その非難をかわすためにも、サウジアラビアは単なる対話にとどまらない、消費国との具体的な協力行動に動き出す必要性を痛感している。それが一年前から始まったOPEC-EU対話である。

  第1回、第2回の二度にわたる協議でOPECとEUは石油を取り巻く環境を分析して認識を共有するとともに、取り組むべき共通の課題について議論を深めてきた。会議終了の都度発表される共同記者発表が議論の深化の様子をはっきりと示している。そして第3回の会議では両者が今後共同で取り組む具体的な5つの行動計画が合意された。それらは、(1)EU-OPEC テクノロジー・センターの設立(2007年初めに専門家の準備会合を開催)、(2)炭化水素資源の獲得と備蓄に関する会議(9月21日にリヤドで開催)、(3)エネルギー政策に関する円卓会議(11月24日にブリュッセルで開催)、(4)石油精製部門の投資の必要性に関する共同研究を数ヶ月以内に立ち上げること、及び(5)投機資金が石油価格に与える影響に関して本年12月第1週に共同事業を開催すること、の5つの行動計画である。

  このようにOPECとEUの産消対話は着実に深まっている。OPECが対話の相手としてEUを選んだ(或いはEUがOPECを対話の場に引き込むことができた)のは何故であろうか。OPECの産消対話の相手としては、EUの他にも世界最大の石油消費国である米国、或いは中国、日本、インドなどアジアの消費大国が考えられる。OPECがこれらの国々に先立ってEUとの対話を優先させた理由はいくつか考えられる。

  米国の場合はその自由競争・市場経済信奉論および米国至上主義的な姿勢が問題と思われる。即ち自由競争・市場経済を信奉する米国はOPECが有するカルテル的性格を本質的に嫌っており、OPECを直接対話の相手とはみなしていない。そして米国一強時代の中で同国がしばしば見せる強圧的で一方的な態度は、OPECにとってとても対話の相手にならないと言うことであろう。

  中国、日本、インド等のアジア各国についてはどうだろうか。今後アジアがOPECの最大のマーケットになることは間違いなく、中東産油国が主要メンバーであるOPECとしては地政学的に見てもアジアが最重点地域であろう。しかし現在のアジアの大消費国は、不安定な石油市場の中で需要者として結束することはない。それどころか各国は自国が必要とする石油を確保するためにお互いに鎬を削っている有様である。もし中国、日本、インドが結束してOPECとの産消対話を求めればOPECもそれに応じるであろうが、現状ではそれは望むべくも無い状況と言えよう。

   結局、OPECは対話の相手としてEUを選んだ。中東とヨーロッパは政治・社会・経済・文化のあらゆる面で大きな差異がある。そして両者の間には長い抗争の歴史もある。サウジアラビアなどOPEC穏健派の中東産油国がEUとの対話を進めるのは驚きの感がある。しかし逆説的に言うならば、長い抗争の歴史を経たからこそお互いに相手の考えを理解し現実的で前向きの話し合いができる、と言うことなのであろう。OPECは、米国或いはアジア諸国との対話のレベルがそこまで達していないと判断しているようである。

   OPECとEUは第4回対話を来年7月ウィーンで行うことで合意している。

  以上

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BP統計に見るエネルギー資源の埋蔵量・生産量・消費量とその問題点(その1:石油篇)

2006-07-10 | その他

(本文は石油文化ホームページをご覧ください)

(要約)

 BPが毎年公表するエネルギー統計の2006年版「BP Statistical Review of World Energy June 2006」(以下「BP統計」)によれば2005年末現在の世界の石油埋蔵量は約1兆2千億バレルであった。同じ年の石油生産量は日量8,100万バレル(以下B/D)であり、R/P(可採年数)は40.6年である。言い換えれば、2005年の生産レベルを続ければ40年強で採掘可能な石油が枯渇することになる。国別ではサウジアラビアが世界の石油埋蔵量の22%を占め飛びぬけて大きい。上位5カ国は中東産油国であり、中東地域の埋蔵量は世界全体の6割強である。

  生産量ではサウジアラビアが1,100万B/Dで最も多く、次いでロシアが960万B/Dである。米国、中国は世界第一位及び第二位の石油消費国であるが、同時に世界有数の産油国でもあり、それぞれ680万B/D、360万B/Dの石油を生産している。世界一の石油消費国は米国(2,070万B/D)であり、実に世界の4分の1の石油を消費している。日本は米国、中国に次ぐ世界3位(540万B/D)の石油消費国である。

  石油の生産と消費の地域バランスを見ると、アジア大洋州は消費量が生産量を大幅に上回っており1,600万B/D強が不足している。北米及びヨーロッパ・中央アジア地域も同様に域内の需給バランスはマイナス(供給不足)である。これに対し需給バランスがプラスなのは中東、アフリカ及び中南米であり、特に中東は大幅な供給能力を有している。地球規模で見ると、石油は中東、アフリカ、中南米の各地域からアジア、北米などの地域に流れていることを示している。

 第二次オイルショック(1978年)から2005年までの石油の価格と消費量、生産量及び埋蔵量の推移を比較すると、原油価格は第二次オイルショック時代および現在(2000年以降)の二度にわたり急騰しており、その間の20年は低迷している。これに対し生産量及び消費量は、第二次オイルショック後一時低落したが1980年代後半以降は一貫して増加している。

 石油埋蔵量は2002年までは毎年300億バレル近く増加していたが、2003年以降は急落し、2004年、2005年には60億バレル程度に落ち込んでいる。その理由は90年代に探鉱開発投資が抑制され新油田の発見がなかったためとする見方と、他方、地球上で新油田を発見できる余地が少なくなったためとする見方がある。後者の場合、今後この傾向が続くと石油の生産は近い将来頭打ちとなり、これに伴って石油価格が上昇する恐れがある。これが最近話題になっている「ピークオイル論」である。

 最近の石油価格の高騰により探鉱開発投資が再び活発になっている。これにより石油埋蔵量が追加され、増加し続ける需要をカバーする生産量を確保できるのか、それとも「ピークオイル論」のように石油生産量が限界に達するのか、その見極めはここ数年が勝負であろう。

以上

(本文は石油文化ホームページをご覧ください)

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(ニュース解説)OPEC総会で加盟国拡大を非公式協議(第3回)

2006-07-04 | OPECの動向

(前回までの内容)

第1回:ベネズエラがアンゴラなど3カ国のOPEC加盟を提案

第2回:生産量のシェア以上に急落したOPECの輸出シェア

 

第3回:石油を武器にしたくないOPEC穏健派

  世界の石油生産に占めるOPECのシェアは第一次オイルショック当時の55%から2004年には42%に低下したが、輸出のシェア低下はそれ以上に激しく87%から51%へと4割も低下している。かつて1970年代にはOPECの一挙手一投足が全世界の耳目を集め、石油消費国と石油企業はOPECの言動に一喜一憂していた。しかし最近ではOPEC総会こそ注目を集めるものの、普段はNYMEX(ニューヨーク商品取引所)やロンドンの石油先物市場の動きに注目が集まっている。

  そしてOPECは1970年代のオイルショックの際に国際社会に与えた強烈な政治的インパクトを喪失している。ベネズエラのチャベス大統領が狙っているのはまさにこの政治的インパクトを取り戻すことであろう。彼がOPEC加盟候補に挙げたアンゴラ、スーダン、エクアドル(以上はメンバー候補国)及びボリビア(オブザーバー候補国)がいずれも南米とアフリカの国々であることは興味深い。ロシアやノルウェーなど元々OPECに参加する意思の無い国はともかく、中米のメキシコや中央アジアのカザフスタンのように百万B/D以上の石油輸出量を誇る国を差し置いて、ベネズエラが4カ国をOPECに加えようとする意図は余りにもあからさまである。それは米国に対抗するためにOPECを利用しようとする極めて政治的な陰謀としか言いようが無い。  

  OPEC設立は、当時の巨大石油会社(いわゆるセブン・メジャーズ)から石油価格の支配権を取り戻そうとする産油国の資源ナショナリズムの表れであった。従って当初のOPECに政治的な色合いが強かったことは否定できない。その端的な例が1973年の第一次オイルショックである。イスラエル支援国家に対する禁輸措置を発動したのはOAPEC(アラブ石油輸出国機構)であったが、サウジアラビアなどOAPECの主要メンバーは同時にOPECメンバーである。従って世界はOAPEC即ちOPECとみなした。その後もOPEC総会で決定される加盟国の生産枠とそれによる原油価格の変動が世界経済に大きな影響を与え、OPECの行動はますます政治的なものとみなされる傾向が強くなった。このため米国を初めとする西欧先進国は、OPECが石油の生産を抑え価格を高騰させて世界経済を混乱に陥れた張本人であると非難した。

  しかし1980~90年代に石油価格が低迷すると、欧米先進国は今度は、世界経済を安定させるためにOPECは減産すべきであり、石油市場混乱の原因はOPECにあると非難した。確かに生産枠を遵守しない一部のOPEC産油国によって供給過多になったことは事実である。しかし1980年代にはOPECの生産シェアが3割以下にまで低下していることから、供給過剰と価格暴落の原因をOPECだけに押し付けるのは公平性を欠くであろう。

  さらに近年の価格暴騰についても、米国及び同国が主導するIEAなどはその原因に産油国の増産投資の不足をあげている。価格高騰で多額の石油収入を得ているOPECに対する強い牽制である。しかし石油価格高騰で潤っているのはOPECだけではない。ロシアや国際石油会社もその恩恵を最大限に受けている。ロシアは最近対外債務を前倒しで全額返済しており、世界最大の石油会社エクソンモービルの昨年の純利益は4兆円に達しているのである。彼らはまさに「漁夫の利」をむさぼっていると言えよう。

  石油価格が高い時も低い時もOPECは非難の矢面に立たされてきた。このためOPECの穏健派は「石油を武器に」と言った発言は軽々しく口にしない。OPECは石油を武器にして欧米を敵に回す危うさを体験的に知り抜いている。彼らは「政治はタブー」と肝に銘じているのである。

  OPEC非公式協議でのベネズエラ提案は却下された。サウジアラビアなどの穏健派は石油を政治的道具とすることに強く反対している。急進派と言われたリビアもイランもベネズエラに同調しなかった。リビアは米国との関係を改善し国際社会に復帰したばかりであり米国を敵に回す愚を避けた。米国と鋭く対立しているイランは、ハメネイ師が石油を武器にするとほのめかしているが、向こう見ずのチャベス・ベネズエラ大統領に同調すれば更なる孤立化を招くであろうことも承知している。

  OPECは消費国との対決ではなく対話を望んでいる。そして将来のエネルギー問題を話し合うパートナーとしてEUを選んだ。OPECの対話の相手は世界最大の石油消費国の米国ではなく、また日本、中国、インドなどアジアの大消費国でもない。OPECの主要メンバーは中東諸国である。中東とヨーロッパ - この二つの地域は長い対立と抗争の歴史を経ておりお互いを知り尽くした間柄である。だからこそOPECとEUは対話のテーブルに付けるのかもしれない。

  次回(最終回)は、OPECとEUの産消対話について。

 (今後の予定)

 第4回:OPECの産消対話のパートナーはEU

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