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一応、秘密の…ホミンのお話置き場です。

七夕 9

2017-07-11 | 七夕
 

 

 

「チャンミン?婚礼衣装は私達が用意するのだけど、どの形態が良み?」
「やっぱり、旧式の衣装が良いかしら。それとも、露出を増やして…斬新奇抜な物にしてみる?」
「アクセントに赤の差し色を入れようと思うのだけど…」
「…って、貴方達!何をしているの!」
 

ユノと分け合っていた甘い時間は、賑やかな発言を繰り返しながら現れた姉様達によって強制終了となった。姉様達に咎められると、自分のしていた事が恥ずかしくなる。だけど、ほんわかとした雰囲気を纏ったままの長がくれた慰めの言葉のお陰で、苦笑いで済ませる事が出来た。

 

ユノが正式に挨拶にくるのを僕は大人しく待たなければならない。それまでは今までの居場所に戻ると聞かされただけで、込み上がる涙を我慢出来なくなった。

 
出会ってから、ほんの数時間しか経っていない。それでも、僕はもう…ユノを深く愛している。
ユノに見送られ、別れる時。胸が張り裂けそうになた。牛車揺られ、帰路につく間。まだ明るい空を見上げては、同じような事だけを思っていた。

 
 

話が纏まった事に、父上も大喜びしてくれた。優しい父上は、僕の意思を尊重する気だったらしく、拒む権利はあったみたいだ。でも、そんなものは必要ない。僕は一秒でも早くお嫁に行きたいと真顔で言った。驚いていた父上は姉様達の話を聞き、納得してくれた。寂しくなると言って、少し複雑そうに笑った。

 

 


自室に戻ると直ぐに、定位置に収まってみる。今朝していたのと同じように、縫いかけの着物に手を延した。でも、何かが違う。それは気のせいと言える事かも知れない。でも、洩れた溜息と胸中の息苦しさは消えそうもない。あれ程、熱心に励んでいた縫い物が楽しく思えそうにない。人の心は移り気で、変ってしまうものと聞いていた。実際に体感するまで、僕には無縁の事だと思っていた。

明らかに、ハッキリと…。僕は変わってしまった。それは何かの間違いかと言い聞かせ、作業を続けようと思った。けれど…針を刺す感覚も鈍っている気がして、どうしようもない。手にした着物を傍らに置き、惚気る事にした。



「…ああ、ユノに…早く会いたい…」


目を閉じると、鮮やかな感覚が蘇るよう…。ユノが与えてくれた口付けの素晴らしさを思い出しては…切ない吐息を溢していた。

 

 

 

 

 

 

 



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