「先に子虎のミルクだけ持って来た…」
「クアウ!」
竜達の元に歩み寄ると、子虎の鳴き声が上がる。真っ白な保護者に埋まる竜は、機嫌取りをしているのか。反応する余裕もないようだ。
ころころ転がりながら足元までやってきて、可愛らしい反応を示す子虎を抱き上げ、苦笑いを浮かべる。
「邪魔しないように俺が飲ませても良いか?」
「カウゥ!」
子虎は相変わらず物分かりが良い。嫌がる素振りを見せない子虎だけを連れ、チャンミンの傍に戻ろうかとも思ったが、竜と引き離すのも問題かと思い直す。
チャンミンの元に戻るまで時間が掛かるが仕方ない。竜と保護者の邪魔にならない場所に腰を下ろし、子虎にミルクを与え始めた。
勢い良く、ミルクを飲み干す子虎を見つめていると、ある変化に気付く。
「お前、重くなったよな。順調に大きくなっているんだな」
「…クゥゥ」
抱き心地が以前と異なる。収まり方も腕に感じる重みも違う気がする。手ひらを動かして、毛並みや肉付きを確かめると、間違いなく子虎の成長を感じた。
「お前は…直ぐに大きくなるのか?人間で言うと…今はどの位になるんだろうな」
何の気なしに呟いてみただけだ。けれど、何故か竜の雄叫びが響き渡る。
「白とらちゃん、へんしんしてみる!?」
「…チャンミン、無理強いは駄目だ」
「んん~!ちょっとだけ~!!」
そんな会話が聞こえ、視線を移した僅かの間に、抱き心地は更に変化した。
「…ん?」
視線を落とすと、そこに居たのは…子虎ではない。人間の幼子だ。
「…こ、これは…」
状況の変化に驚き、固まる俺を見上げる幼子はパチパチと瞬きをして、空いた哺乳瓶を差し出し、
「うあう!」
可愛らしい奇声を上げ、お代わりを催促した。