「ああ!もっといっしょにあそびたかったな~!」
「キュウ!」
「カルル!」
「またみんなであそびにこようね!」
「キュあ!」
「カルルっ!」
「ママ!おかし、おかわり!」
「キュウ!」
「カルル!」
「何を勝手な事ばかり言っている!」
「まあまあ、チャンミン。落ち着いて…」
「そうだよ!ママ!プリプリしないの!」
「キュウ!」
「カルル!」
「お前ら!いい加減にしろよ!!」
狼妃はもてなすと言っていた。竜や子達もその気だった。でも、呻る狼帝と保護者の静かで恐ろしい闘いを継続させるのは問題有りだと判断し、俺達は先を急ぐと発つ事にした。
手土産にと貰った菓子を全て平らげた竜はまだ足りないと喚いている。怒るチャンミンを宥めているけど、効果はイマイチだ。
「白とらちゃん、ももろうちゃんに会いたくなったら、いつでも言ってね?ぼくもいっしょにビューンと飛んでいくから!」
「カルル!」
「あ!でも、こっそりじゃないとユノと赤狼ちゃんがプリプリするね~。こっそり飛んでいこうね~!」
「カオウ!」
「…チャンミン」
「あっ!」
大声でのやり取りは内緒話になっていない。保護者に呼ばれ、ハッとする竜はニマニマしながらチャンミンに飛び付いてくる。
「ママもいつでも言ってね?ももろうちゃんとおとうとちゃんに会いたかったら…。ぼくがユノにおねがいして…いつでもとんでいくからね」
「…ああ」
別れを誰よりも寂しがっていたチャンミンへの優しい言葉は俺からも頼みたい内容だ。協力は惜しまないと、浮かぶ想いを口にしようとした時。チャンミンが急に目を見開き、竜を羽交い締めにした。
「なに、ママ?!くるしいんだけど!」
「二人きりになってから、保護者と何をした?!」
「え?」
「まさかと思うが…深くまで交わったのか?」
「ん?なに?」
「だ、だから…」
言葉を選びながらも聞かずには居られない。そんなチャンミンの問い掛けに、竜は首を傾げ続ける。
「んん?」
「どうやって、保護者を説得したんだ!?」
「ユノをせっとく…?」
「何をして、保護者の機嫌を直したんだ!!」
「ああ!にんむのこと?ん~とねぇ!ママがママのダーリンとしたように…」
「…っつ!?」
「いっぱいあかしをつけてあげたの!!」
「…あ?」
竜はニマニマして、具体的な説明を始めた。
恐らくだが…保護者はもっと踏み込んだ進展を望んでいただろう。でも、竜の無邪気さに負け…軽めの触れ合いで納得した。そんな推察は間違っているのだろうか。
黙って橇を引く保護者の後ろ姿には哀愁が漂う…と、感じてしまう。
黙って橇を引く保護者の後ろ姿には哀愁が漂う…と、感じてしまう。
「じゃ、じゃあ…交わっていないんだな?」
「ん?まじわる…?」
「いや、何でも無い!」
「えー?もしかして、ぼく、ユノともっと何かすればよかったの?」
「いいや!それで良かったんだ!まだ何もしなくて良い!!」
「そうなの?」
分かり易く安堵したチャンミンは大きく息を吐き出し、竜を抱き寄せる。
「…まだそのままで居てくれ」
「ん?」
「…まだまだ子供で良い…」
竜はチャンミンの胸元に埋まり、笑顔を見せる。
「だってね、ママ!ぼく、ぼくのおとうとのお世話がいそがしくなるんだもん!」
「は?」
意味深にニマっと笑う竜と対照的に、チャンミンは唖然としている。
でもやはり、保護者としては不満があるのだろう。橇は突然わ乱高下を始め…チャンミンは怯え、竜と子虎達は奇声を上げて喜んでいた。