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一応、秘密の…ホミンのお話置き場です。

ケーキ屋さんの… 2

2017-05-31 | ケーキ屋さん





「…ユノ様」

「大丈夫だ、チャンミン。ここにいるからな…」



頭を撫でていると、暫くして眠ったチャンミンは、魘されながら俺の名を呼ぶ。酷く辛そうな様子を目にするだけで、俺も胸が苦しくて仕方なかった。




しっかりと手を握り、チャンミンの寝顔を見つめていると、何処からか声が聞こえた。ああ、そうだ。今日も店は開けられない。知らせる貼り紙をしておかないと。


店を休むのは滅多に無い事だからか、対応が後回しになってしまった。

そこまで思い至らなかったのは、心配が大きすぎるからかも知れない。


チャンミンの傍から1秒たりとも離れたくない。想いを痛感しながらも、来客に迷惑をかける訳にはいかない。

握り締めていたチャンミンの手を離し、直ぐに戻ると囁き、額に唇を落としてから、寝室を後にした。







急いで店の扉を開けると、思った通りに誰かが立っている。



「申し訳ないが、今日の営業は…」

「こんにちは!開店時間に早いと分かってましたけど」

「…え?」

「もしかして、今日はお休みでしたか?」




明るい声を響かせるのは、一体…何処のチャンミンだ?


思いがけない、俺のチャンミンによく似た誰かの訪問に、驚くばかり。用件を伝える事も聞く事も、さっさとドアを閉める事も、勿論、出来ず、固まってしまった。


















ケーキ屋さんの…

2017-05-31 | ケーキ屋さん






「大丈夫か?チャンミン」

「……大丈夫…じゃないです」

「まだ気持ち悪いのか?」

「…気持ち悪いですけど…お腹が空きました…」

「何を食べたいんだ?」

「……」

「何なら食べられるんだ?」

「…冷たいシャリシャリの…ももシャーベット…」

「桃か?分かった。直ぐに用意してやる。缶詰があった筈だ」

「……でもユノ様は…僕の傍に居なくちゃダメです…」

「…ああ、分かった」



いつもの目覚めの時間は過ぎている。長めの眠りの効果はないのか。顔色の悪いチャンミンは、ぐったりしながらも手を延ばしてしがみつく。



「…あっ。でも、やっぱり…ユノ様は忙しいですよね。…僕は一人でも大丈夫です…」

「いいや。俺が大丈夫じゃない。チャンミンを一人には出来ない」

「…ユノ様…」

「…チャンミン」


同じ体勢で、同じような会話を繰り返していると、窓を小突く音がする。今は邪魔をするなと追い返したい気もした。けれど、力を借りるべきだと思い、窓を開け、煩い鳥を招き入れた。



数日前から具合が悪いと知っている鳥も心配だと叫び、部屋の中を飛び回る。



「おい。少し落ち着け」
「チャンミンが元気じゃない!大変だ!」
「だから、少し静かに…」


煩い鳥は落ち着かない。言っている俺も落ち着けないから、仕方ないのか。

ならば…と、チャンミンが望む桃を手に入れられないかと尋ねてみた。缶詰でも構わないと、付け足したけれど、何とでもしてやると頼もしい返事をくれる。

繋がりを最大限生かして、必ず運んでくると言った煩い鳥は早々に飛び去った。






「…ユノ様」


チャンミンは弱々しい声で名前を呼ぶ。


「チャンミン、大丈夫だからな」


優しくあちこちを撫でながら、声をかけるけれど、不安は消せない。

こんな様子は初めての事だ。いつも元気だったから余計に心配だ。チャンミンの具合の悪さの理由が分からずに、出そうな溜息は我慢していた。