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一応、秘密の…ホミンのお話置き場です。

あるお弁当の話。5

2019-09-03 | お弁当の話。
 

 

「ママ!!ママのおべんとう!すっごくよろこんでくれたよ!!」
「そ、そうか… 良かったな」

「ん?ママのダーリン、どうして、ころがってるの?」
「あっ!!いつの間に…」

「それでね、ママ!!ママにおねがいがあるの!!」
「な、何だ?」

  

チャンミンと良い感じになると、必ずと言って良い程、邪魔が入る。

俺が吹き飛ばされたって事は…間違いなく、保護者の意思が介在している。涼しい顔をして、窓辺に立つ保護者は壁際を陣取り、腰を下ろす。


 

「遅くなるなと言ったが…随分、早かったじゃないか…」

「ん?もっとおそいほうがよかった?」

「い、いや!そんな事はない!」

「かえりはユノにおまかせだから!もっとおそくがいいなら、ユノにおねがいするけど…」

「そ、それより何だ?次のお願いは…」

 

チャンミンはかなり動揺しているのだろう。さっきまでの可愛いチャンミンを思い出し、複雑さに襲われていると、竜の大きな声が響く。

 



「ママ!おうた、おうたって!!」

「…は?」

「ママもおうた、じょうずでしょ?」

「いきなり何を言い出すんだ…」

「ぼく、ママのおうた、ききたい!!」

「歌えと言われても…」

「ききたいの!!」

「……」

 
叫ぶ竜の勢いに押され、チャンミンは頷いていた。

 

俺も聞けると、期待した。でも、竜のリクエストは子守唄らしい。そのまま、昼寝がしたいと言う竜に、チャンミンは連行されていく。

俺は保護者と共に、取り残されてしまった。

 

 

肩を落とし、項垂れていると…不思議な現象が起こる。

 

リビングと寝室は距離があり、隣り合っていないのに…そこでの光景が目の前に現れる。

もしかして、これは…保護者の力か?離れていても、竜から目を離さない為に、こんな事が出来るのか…。

 
何故か、追い出される事はない。留まる事を許され、俺も盗み見が出来そうだ。

 

 

『…ママ』

『どうした?』

『ぼくがいいっていうまで、やめないでね?』

『ああ。分かった…』

 『ママ。…また、おべんとう、つくってね…』

『…ああ』

『…こんどはおかしをもっていくって…やくそくしたの…』

『…そうなのか?』

『…ぼくのも…いっぱいいるから…』

『…ああ、分かっている。作るなら…更に大量だな…』

『…ありがとう、ママ…』



残念ながら、小さな歌声は聞き取れない。でも、竜の安心しきった寝顔と、チャンミンの慈しむような表情を目にした俺は、珍しく保護者に感謝したくて、頭を下げた。

 



「…あの、出来れば次回は…遅くに帰ってきてくれないか?」


調子に乗るなと言われたのだろうか。返事の変わりに貰ったのは、ぴしゃりと叩かれるような風だった。


 


 



 

 

 

おしまい。

 

 

 

 

 


あるお弁当の話。4

2019-09-02 | お弁当の話。

 

 

「…あいつは一体、何処で誰と…弁当を食べているんだろうな…」

 
一通りの料理を食べ終えたチャンミンがぼそりと呟く。

そこには溜息が混じっていた。俯きがちで少し寂し気な様子に見える。

俺は大事に残しておいた、愛情たっぷり海苔巻きを口にしながら、声をかける。

 

「気になるのか?」
「…そんな事はない」
「時空を超え、熱心に会いに行く相手だ。余程、特別な存在なんだろうな…」
「……」


視線を向け、表情の変化を観察していると、僅かに唇が尖った。

不貞腐れるのは…嫉妬が理由の一つなのだろうか。苦笑いを浮かべつつ、また手付かずのデザートプレートを差し出す。


「そんな顔しなくても、竜はここへ戻って来るだろう?」
「……」
「親離れはまだ先だろうから。そんなに寂しがらなくても良いじゃないか」
「…誰が寂しいと言った」


プイっとそっぽを向かれ、笑い声を漏らしてしまう。

 

「何がおかしい!!」
「いや。竜が絡むと…チャンミンは更に可愛さが増すと思って…」
「だ、誰が… か、可愛いだと!」
「竜が居る時は努力して遠慮するが…今は俺が独り占めしても良いよな?」
「な、何の話だ!!」


デザートプレートから苺を摘み、チャンミンの口へと運び入れる。大した抵抗もなく、苺は齧られ消えていく。

次を…と、催促する視線に応え、チャンミンの口へ、せっせとデザートを運んだ。

 

 

 

「…喉が渇いた」
「ああ、そうか。ちょっと待ってくれ」



彼から運ばれるフルーツはとても甘くて美味しい。自覚したくない寂しさのようなものは直ぐに消えてしまった。

竜が笑っているのなら、それが何処でも構わない。心からそう思えた。

となると…今、心にあるのは…彼に甘えたいという気持ちだ。…いや、そうじゃない。疲れを癒したいだけで…別に甘えたいって訳じゃ…ない、筈だ。

 

「お待たせ。炭酸でも良いか?」
「……」

 

返事をしなければ、彼はどういう反応を示すだろうか。彼は僕の扱いに慣れてきたのか、そんなに外れた事はしない。口にしなくても…願望を見抜いているというか…。悪くない事をしてくれる。

 
「氷はいらないよな?冷たすぎるのも好きじゃないよな?」
「……」
「ああ、でも、少し冷たいか…」
「……」



独り言を聞きながら、彼の動きを待つ。

グラスに注がれ、差し出されても首を横に振ってしまったのは、何を示したって事になるのだろうか。


僕は何も言っていない。ただ、唇を尖らせただけだ。少し、黙って考えた彼はクラスの中身を口に含み、僕の唇へと重ねた。


 

「…ん」



口内へ流れ込んできた炭酸は…軽い刺激を与えてくれる。

程よい刺激…とは思えない。もっと欲しいと思うからか?僕は口を開け、催促してしまう。


誤解するなよって言いたいのに。声が出てこない。表情を緩ませる彼はまた同じ動きをしてくれる。

それが分かった瞬間。僕は腕を伸ばして引き寄せてしまった。

 
 

「んん…」

 
これは渇きを癒す為の…必然的な行為だ。



渇いているのは喉だけじゃない。心も体も…炭酸じゃなくて彼で満たされたい。一瞬、浮かぶ考えをどう打ち消そうか、考える…つもりでも、頭は動いてくれない。

 
「…チャンミン」

 

彼が囁いただけで、ゾワゾワした。もっと強くしがみつき、自らも吸い付こうとした時。

 


 

「ママ!!たっだいまーっ!!」

 


元気な声が響き渡り、激しい強襲を受けた。

 

 

 

 

 

 







あるお弁当の話。3

2019-09-02 | お弁当の話。
 

 

「……」


見てはいけないと思うのに。どうしても、視線は保護者を追ってしまう。


よじ登った竜がチャンミンに何か耳打ちしたのは分かった。その直後、俺と保護者の元へ来たチャンミンが恐ろしい顔をして、この場を去れと言った。

俺は素直に聞き入れるしかないが…保護者が素直に聞くとは思わなかった。

 

チャンミンが信用されているとしても、保護者が竜から目を離すなんて…。興味が湧き、視線を送った時。衝撃を受けた。


いつも冷徹で容赦ない保護者の口元が緩んでいた。竜がまとわりついている時以外で、あんな表情は見たことがない。

 
余計な事と分かっていても、つい、口から言葉が漏れる。

 

「何が嬉しいんだ?」

 

俺の問いかけに返されたのは、鋭い視線だけだった。慌てて気にしないでくれと言い、距離を取った後も、何となく様子を窺ってしまった。その度に視界に入るのは、保護者のにやつく顔だった。

 

 




キッチンの様子も気になりながら、別の用事を熟していると、お呼びがかかる。急いでキッチンへ向かうと、何となく、保護者が喜ぶ理由が分かった。

 

 

「これを運べば良いのか?」
「ああ、頼む」

 
弁当作りは順調に進んだのだろう。大きな重箱が並び、それを運べと言われる。何往復かしていると、他とは雰囲気の異なる包みがあると気づく。

 

「これは…」
「あ!それはぼくがもつ!!」
「これは運ばなくて良いのか?」
「うん!これはぼくがもっていくの!これはね~!ユノのだから!!」
「そうなのか?」
「うん!!ぼくがつくたんだ~! あ!ママのダーリンのもちゃんとあるからね~!」
「本当か!?」
「うん!!ママがママのダーリンのために、いっぱいアイをいれて作ったから!!ぜったい、ものすっごくおいしいよ~!」
「そうか!」


竜の言葉に微笑んでいると、二方向から視線が突き刺さる。一つはチャンミンの照れ隠しの視線。もう一つは、保護者の殺気立った視線だ。

慌てて、止めていた動きを再開させる。

 


「これで弁当は完成か?」
「あとはデザート!!」
「そうか」
「ママのダーリン!!もうちょっと、ママをかしてね~!!」
「あ?ああ。遠慮せず、二人の時間を楽しんでくれ」
「ありがとう!!やさしいままのダーリンもだいすき!!」


竜が俺にも飛びついてくれた。それはそれで嬉しい。けれど、突き刺さる視線が鋭利になり、特に保護者からの眼差しに命の危機を感じていた。

 

 


 





***

 

「じゃあ、ママ!いってくる!!」
「ああ。あまり遅くなるなよ!」
「うん!!ママ、ありがと!」



どうやって大量の重箱を運ぶのか…なんて心配は不要だ。白狼は何ともない顔をして、竜を背に乗せ飛び立つ。それと共に光に包まれた弁当たちは姿を消し、辺りは急に静かになった。

 

「…はあ」

 

一気に押し寄せる疲れが溜息になる。肩を落とし、首を延ばすように傾けていると、隣から笑い声が響く。

 

「お疲れ様」
「……」
「片付けは手伝うからな」
「…当たり前だ」
「その前に、ゆっくり休憩しないか?」
「……」

 
素直に返事が出来ない僕は、何故かムスッとしたまま、ソファーに腰を下ろした。

 

何も言わなくても、彼はテキパキと動き、弁当に詰められなかった料理達をテーブルへ並べていく。

それから…彼の為とは認めていない海苔巻きを手にして、笑顔で隣に腰を下ろした。

 

「食べても良いか?」
「す、好きにしろ…」


視線を反らし、返事をすると…彼が大きく口を開き、海苔巻きを頬張る。



「んんっ!旨い!!」
「そ、そうか?」
「チャンミンが込めてくれた大量の愛をしっかり味わうからな!!」
「誰も大量だとは言っていないだろ!!」

 

愛を込めた事自体は否定しない僕に、彼は疲れが吹き飛ぶような…満開の笑顔を返してくれた。

 

 

 

 

 







 


あるお弁当の話。2

2019-09-01 | お弁当の話。
 

 

「どうした?」
「ん?なに?ママ」

 

竜の様子がいつもと違う。出来上がるまで、保護者の元に駆け寄る事もせず、ずっと傍に居るのは急かす意味があるのかと思っていたが、どうもそれだけではなさそうだ。

ジッと手元を見つめる竜に声を掛けてみる。

 


「…やってみるか?」
「え?いいの!?」
「ああ。なら、手を洗え」
「ありがとう!!ママ!!」


元気な返事をした竜は勢い良く水を出し、丁寧に手を洗う。それから、指示を仰ぎ…珍しい落ち着き具合を披露し、海苔巻き作りに挑む。



「ママ、こう!?」
「ああ。ここを抑えながら一気に巻いてみろ」
「え!でもでも!」
「心配するな。手直しは後からでも可能だ。最初から上手く出来なくても当たり前の事だからな。躊躇わずにやってみろ」
「うん!!わかった!!」

 

竜は緊張の面持ちで呼吸を止め、集中力を高め、行動を起こす。

 

「うわ!!」

「そのまま、しっかり抑えるんだ」

「こ、こう?」

「ああ」

「ママ!たすけて!!」

「あ?ああ、ちょっと待て…」

「ママ、ママ!!」

「落ち着け」

 

興奮気味の竜を宥めながら、練習を重ねた。


竜は手先が器用なのだろう。少し、完成した海苔巻きは形が歪でも、大失敗ではない。

 

「上手じゃないか。もっと回数を重ねれば、完璧な仕上がりになるだろうな」

「ほんとう?」

「ああ」

 

心配そうに見上げる竜に頷き返すと、勢い良く飛び付かれる。そのままよじ登ってきた竜は急に小声になり、耳打ちしてきた。

 



「…つぎはユノのぶんをつくりたいの…」

「は?」

「でも、はずかしいから…ないしょにして!」

 
突然のいじらしさを見せられると、応えない訳にいかない。竜を降ろし、スタスタと歩いて行き、キッチンの入り口に立つ二人を追っ払った。

 

 

  

 

 

「ママ、これでいい!?」
「ああ」
「ほんとにほんと?これでいい?」
「ああ。大丈夫だからやってみろ」

 

それまでより一段と慎重になるのは、保護者への想いの強さを示しているようで、微笑ましく思う。


意を決した竜の動きを見守り、要所だけ手助けをして、作業を続ける。余計な事だと思いながら、浮かぶ疑問を口にした。

 


「どうして急に、自分で作りたいと思たんだ?」

「ん?」

「弁当を届ける相手と何かあったのか?」

「んーとね」

 

竜は言葉を選びながら…なのか。嫌がる素振りもなく答えてくれる。

 

「ぼく、シソンちゃんに…なにかしてあげたいけど…なにをするのがいいのか、わからなかったの。ぼくはまだママじじゃないけど…ぼくはずっとずっと前のママだから…なにかしたいと思って。ぼくがうれしいのは…ってかんがえて…あ!ぼくのママのおいしいごはんだ!って思って…」

「……」

「で、ママにおべんとうをおねがいしたんだけど…やっぱり、ぼくもなにかしたいなって思って…」

「……」

「ママみたいなママになるれんしゅう…したいな~!って思って…。って思ったら、いっつもぼくのわがままをきいてくれるユノにもなにかしたいなって思ったの!!」

「…よく分からないが…要するに…成長したってことなのか…」

「ねえ、ママ!ユノ、よろこんでくれるかな~?」

「それは間違いないだろう。嬉しさの余りに泣くんじゃないか?」

「えーーー!」

「こら、大声を出すな!保護者が戻ってるだろう!」

「それはダメ!まだないしょ!!」

「だったら、大人しくしろ」

「うん!わかった!!」

 

出会った相手との関係性は何となくの想像でしかないが。竜にとって良い出会い。意味のある出会いだったのだろう。


そこまで頼られる事は素直に嬉しい。産んだ覚えはないが…自分の子のような不思議な感覚も心地よい。

 


「ママもママのダーリンにつくる?」

「それは…」

「ぼくもママのダーリンのぶん、つくろうかな!」

「それはやめておけ。保護者に奪われるだろうからな」

「えー!」

「だ、だから、彼の分は僕が…」

「ママ!!ぼくのとくべつおっきなのはママがつくってね!!」

「あ、ああ」

 

そんなやり取りを繰り返しながら。竜のリクエスト以上の弁当作りは延々と続いた。

 

 

 






 


あるお弁当の話。1

2019-09-01 | お弁当の話。


 

 

 

「ママ-!!おべんとうつくって!!!」
「…ふぁ!?」


寝込みを襲われ、反応出来ない。手加減と言うものを知らない竜は人の腹の上で叫び、暴れる。



「えーっとね!おにくと…ぴざと…のりまき!!それから…サンドイッチと…ぱえりやと…おにく!!それとね!!」
「…さっきから何を言ってるんだ!」
「ママ!おべんとう!!いっぱいつくって!!」
「何?食べたい物じゃないのか?」
「たべたいよ~?でも、おべんとうにして!」
「…弁当にしないといけないのか?」
「うん!!そう!!」


何処で何をする為に必要な物なのか、聞くまでもない。竜の願いを聞き入れる事は既に癖になっている。




「…食材を用意するには…」
「いますぐつくって!!」
「何?」
「おいわいだから!!はやくはやく!!」



何の祝いだ…と、疑問を浮かべた僅か数分後。彼と財団職員の手によって、竜のリクエストを叶える為の食材がキッチンへと運び込まれていた。

 

 




 

「…これなら、食材じゃなくて出来上がった料理を運んでくれても良かったんじゃないのか…?」

 
パジャマ姿でキッチンへ向かい、まだ睡魔を引き摺った頭で考えていると、いつもよりテンションが高い竜が飛び込んでくる。

 

「ママ!おべんとう、できた!?」
「そんなに早く作れる訳ないだろう!」
「えー!そうなの?ママなら、ちょちょい!って、できるでしょ?」
「無理だ!そんなに急ぐなら、今からでも出来上がったものを頼めば良いだろう」
「それはダメ!!ママのおいしいごはんじゃないと!ぼくからのぷれぜんとにならないの!」
「…プレゼント?誰かの為の弁当なのか?」
「うん!!あ!ぼくもたべるけどね~!」
「誰の為なんだ?それはどんな関係性の相手だ」
「えー?いわないとダメ?」
「言えない相手なのか!?」
「んーと!ユノがひみつだって言ったからね。ちょっとしか言えない!」
「保護者も公認なのか?なら、怪しい相手じゃないのか…」
「ママ!!おにく!!」
「落ち着け!!」


何がなんだか、合点がいかない。それでも、竜に急かされながら、エプロンを身につけ、下ごしらえを開始した。

 

 

 



***

 

「ほら、口を開けろ」
「えー?なになに?」
「味見させてやる」
「うわい!!んん!!おいしい!ママ、このおにくっ、おいしいよ!!」
「そうか。それは味付けをアレンジしてみたんだ。口にあったなら良かった…」
「ママ!!もっとたべたい!!」
「おい、こら!!味見と言っただろ!誰が本格的に食べろと言った!!」
「んんっ!!やっぱり、このおにく!!おいしいっ!!」

 


キッチンはいつもより賑やかだ。竜のリクエストを叶える為、チャンミンが奮闘してるのはまだ分かる。

いつもなら、離れた場所で遊びながら出来上がりを待つ竜がそばを離れないから、賑やかさは継続中だ。

 

早朝から、指令を受け従ったが…断片的な情報しか知らない。ここの所、夜な夜な出掛けていた竜と保護者は同じベ所へと迎い、何かをしているらしい。その先で出逢った誰かに、チャンミンお手製の弁当を届けたいなんて。その発想は微笑ましいが…。ほんの少しだけ、羨ましくも思う。

 


 

「味見ばかりしていると、弁当に詰められないぞ!」

「えー!おべんとう、できなくなるの?」

「いつまで経っても完成しない!それでも良いのか!?」

「それはダメ!!」

 


チャンミンの口調はそれなりに尖っているが、竜は全く動じていない。チャンミンも本気で怒っているようには見えない。


わちゃわちゃとした、楽しげなやり取りを目にして、募るのは…やっぱり嫉妬心なのだろうか。

 

手伝いに入りたいが…二人の邪魔をしてはいけないような気もする。



複雑さを抱えているのは、恐らく、俺だけじゃない。キッチンの入り口で佇む保護者も難しい顔をして、竜の様子を見守っていた。