Reverse

一応、秘密の…ホミンのお話置き場です。

今日は何の日。

2019-08-03 | 白の世界






「ユノ~っ!!」

辺りに大きな叫び声が響く。徐に身体を起こし、いつもの体勢を取る。

勢い良く駆けて来たチャンミンは何かを手にしている。そのまま突撃されると…中身が散乱するんじゃないか。不意に浮かんだ予想図は直ぐに現実となった。



「うわあっ!!」

力加減を間違えた事に、後になって気付くのはよくある事だ。中身をぶちまけて唖然とするチャンミンは慌てて俺を見上げた。


「どうしよう!ユノ!!はちみつ、こぼれちゃった!!」
「…ああ、そうだな。ベタベタだ…」
「ママが分けてくれたのに!!」
「…蜂蜜か?また厄介な物を…」

チャンミンの身体だけでなく、俺の毛にも蜜はベッタリと貼り付いている。他の誰かなら…消してしまう理由になる。

けれど、チャンミンは別だ。眉を下げ、チャンミンが項垂れるなら…そのままにしておく選択肢は無い。



「…ユノと…おいしいはちみつ…ペロペロしたかったのに…」


唇をへの自に曲げるチャンミンを引き寄せ、そっと囁きかける。



「…してしまった事を悔いても仕方ない。そんな顔をするな」
「…でも…」
「…このままでも味わう事は出来るからな」
「え?そうなの?」
「…こちらの姿では舐め難いか。少し待て…」

人の姿に変わり、チャンミンを引き寄せて、先ずは頬に飛んだ蜂蜜を舐め取ってやった。


「っ…ユノ!くすぐったい!」
「…こうすれば、甘さを味わえる。チャンミンも同じようにしてみろ…」
「う、うん!わかった!!」


返事をしたチャンミンは意を決したような顔をして、俺の胸元へ顔を寄せる。

「んん…っ」

羞恥心より食欲が勝るのか。チャンミンは案外、大胆に舌を這わせてくれる


「んん!!ユノ、おいしい!!」
「…そうか」
「もっとペロペロしてもいい?」
「…ああ。好きなだけ舐めろ」

表情を緩ませたチャンミンは遠慮無く肌を舐め上げていく。一心不乱に吸い付くチャンミンを見守っていると、後方から何やら視線を感じた。



覗き見するのは不躾だろう。目で忠告をしてやる。それに気付いたのだろうう。チャンミンが母と慕う人物は隣の奴の手を掴み、その場から居なくなった。



「…今度は俺の番だ」
「あっ!」

恍惚とするチャンミンを引き剥がし、今度は俺が舌を這わす。

「ユ、ユノ!!くすぐったい!!」
「…チャンミン、そんなに逃げるな」」
「だ、だって…っ!」


身を捩り、抵抗するチャンミンは可愛い声を漏らす。少しだけ、手加減しながらも…離す気はない。あちこちに唇を押し当て、肌の柔らかさを堪能していると、チャンミンは一際大きく仰け反った。


「も、もうだめ!!」
「…まだ綺麗になっていないだろう」
「それでもだめなの!!」

チャンミンは頬を膨らませ、それまでより強めの抗議をする。



「…でも」
「のこりのはちみつで…もっといいことしたいの!!」
「…何?」

俺の想像した良い事と、チャンミンが言う良い事には隔たりがある。
何かを思い出したチャンミンがさっきの奴らの元へ駆けて行ったせいか、悲鳴と破裂音が響く。


それから暫くして、違う食べ物を手にして戻って来たチャンミンは俺の膝を占領し、蜂蜜を垂らしたデザートを口まで運ばれ、ご満悦だ。




「…これを食べ終わったら、湯浴みだからな」
「うん!!いいよ~!」


無邪気に返事をしたチャンミンは、俺の自制心を擽るように、小さな声で囁く。


「ユノの好きなとこまで、ぺろぺろしていいからね~」


意味深な笑みを浮かべるチャンミンは、まだ残る蜂蜜と俺の肌にも吸い付いていた。







おしまい。













今日は何の日。

2019-06-17 | 白の世界





「ユノーっ!」


チャンミンの元気な声が響くから、いつも通りに身構える。間を置かず、奇声を上げ、狙いを定めたチャンミンが突撃してきた。


「ユノ!ユノ!ユノっ!」
「…落ち着け、チャンミン」
「ムリムリ!むりっ!」


大きく見開かれ、キラキラ光る眼差しは、期待感を示している。額にかかる前髪を梳きながら、次の言葉を待ってみた。



「ユノ!おさんぽしたい!!」
「…散歩か?昨日もしただろう?」
「今日がいいの!!おさんぽ!おさんぽ!!」
「…ああ、分かった」


チャンミンの願いは、叶えるしか選択肢がない。徐に立ち上がり、本来の姿へ戻る。慣れたように跨がるチャンミンを乗せ、窓から空へと駆け上った。


風を切り、空を駆けていく。このまま駆け続けるのかと問えば、更なる要求が耳に届く。チャンミンの指示に直ぐさま応じた。









誰も近寄れない高台に降り立ち、人の姿へと変わり、チャンミンと寄り添う。





「…ここで何をするんだ?」

「ユノ、知ってる?今日のお月さま!いちごなんだよ!」

「…何?」

「チーちゃんとチャミナくんがおしえてくれたの!」

「…苺の…月か?」

「えーっとね。ほんとの名前は…すとろべりー…むーん…だったかな?」

「…ああ、…この時期の満月の別称か」

「いちごのお月さま!!ユノといっしょに見たかったの!」


胸元へ埋まるチャンミンは可愛い笑顔を見せる。




「だいすきな人と見ると、いいって言うからね!ぜったいにユノと見たかったんだ~!」


何処までも埋まりたいと思うせいなのか、ズルズル滑り落ちそうなチャンミンを抱き留めながら、夜空を仰いだ。




「うわ!いちごのお月さま!きれいだね!」

「…確かに。綺麗な満月だな…」


遮るものは何もない。夜空に浮かぶ月は、形を満たし…煌々と輝いている。




「…ねえ、ユノ。いちごのお月さまって、赤くないの?」
「…そうだな」
「囓ったら、甘いかな…それともすっぱい?」
「…どうだろうな」
「ん~!どっちかな~」


チャンミンが望めば、月を手繰り寄せてやろうかとも思う。けれど、その前に。違う方法を試したくなる。



「…月を囓るのも良いが…それより確実性な甘さを感じさせてやる…」
「ん?」



顔を寄せ、唇を重ねれば、チャンミンは更に蕩ける笑顔を見せてくれた。 












おしまい。


今日は何の日

2019-05-23 | 白の世界


 

 

「ユノーっ!!!」


元気な雄叫びを聞き、姿を変え、チャンミンの前に姿を現わす。間髪を入れず、飛び付いてきたチャンミンは最大級の笑顔を浮かべ、興奮気味に口を開いた。

 

「ユノ!!今日が何のひか、しってる!?」
「…何?」
「チーちゃんと、チャミナくんからきいたんだけど!!」
「……」


ここまでの流れで、この先は予想出来る。余計な情報を吹き込まれたのなら咎めたいが…問題児達の発言は俺に取っては悦びに繋がる筈だ。

「ユノ!!今日はね!!」
「…チャンミン。答えを言うなら…行動で示してくれないか」
「え?」
「…今日が何の日なのか、俺が当てる。だから、チャンミンは身を以て示してくれ」
「うん!!わかった!!」


直ぐさま提案を受け入れ、笑顔を輝かせるチャンミンは大きく頷いた。腰を降ろせと言われ、大人しく従うと…チャンミンはいつものように膝へ乗ってきた。

 


「えーっとね。じゃあ、ユノは目をとじて!!」
「…ああ」
「いいっていうまで、あけちゃだめだよ?」
「…ああ」


目蓋を閉じ、返事をすると…チャンミンの手の平が頬へと添えられる。



「…じゃあ、いくよ?」
「…ああ」

「……」
「……」


「……」
「……」


「……」
「…チャンミン?」

「ああ、もう!ユノ!!喋っちゃだめ!!」


沈黙が長く続くとは思っていない。薄目を開けると、頬を赤く染めるチャンミンは眉間に皺を寄せ、何かと戦っているように思えた。

への字に曲がる唇は羞恥心を表しているのだろうか。余りにも可憐な様子を黙って見ていられない。


「…いつもしているのに、照れるのか?」
「だって!こんな風に構えるユノにしたこと、ないもん!」
「…勢いをつけ、遠慮せず、思い切りすれば良いだろう?」
「だって!ジッと見るユノは…カッコいいんだもん!!恥ずかしくなっちゃう…」
「…チャンミン」


会話を経てから、ハッとしたチャンミンはまた勝手な行動をした俺を責める。

 

「…悪かった。黙るから、早くキスをしてくれ…」

「うん…」


優しく促すと、漸く、唇が押し当てられた。待ち望んだ柔らかさを受け止めていると、急に離れたチャンミンが叫び声を上げる。



「ユノ!!今、なんていった!?」
「…何の事だ」
「今日がキスのひだって、しってたの!?」
「…チャンミン。俺が髪飾りに変わり、常に共に居る事を忘れているのか?」
「あ!そうか!!」


問題児達との会話なら、全て監視済みだ。そこに今頃、合点がいくチャンミンは、可愛い照れ笑いを見せてから、また唇を重ねてくれた。

 

 

 


キスの日!


\(^o^)/

 

 

おしまい。

 

 

 

 

 


今日は何の日。

2019-04-06 | 白の世界




「ユノーっ!!」


チャンミンの雄叫びと共に大きな足音も聞こえる。ゆったりと身を起こし、体勢を整えた頃合いを見計らうように、チャンミンが突撃してきた。

見開かれた目はきらきらと輝き、期待感に満ちている。何が理由か、尋ねる前にチャンミンは飛び跳ねながら、口を開いた。


「ユノっ!今日、なんの日か、知ってる!?」
「…さあ」
「今日はね!!ユノの日!!」
「…何?」
「今日はね!しろの日!なんだって!」
「…白の日?」
「真っ白なユノの日!あ、白とらちゃんもだ!」
「…そうか」


異世界の語呂合わせに興味はない。特別だと言われても、ピンと来ない。けれど、チャンミンが喜ぶなら…こじつけでも構わないと思う。

得意気なチャンミンの頭を撫でながら、問いかけてみる。


「…今日が俺の日なら、何をしてくれるんだ?」
「ん~と。ユノは何をしてほしい?」
「…チャンミンは俺の願いを聞き入れてくれるのか?」
「うん!」

明朗な返事をされ、多少なりとも戸惑うのは何故だろうか。ニコニコ微笑むチャンミンに見上げられ、考えてしまう。


「ユノ、はやく言って?」
「…そうだな」
「ぼく、なんでもするよ?」
「…本当にか?」
「うん!」

チャンミンを疑うつもりはない。けれど、何でも良い訳ではないだろうと…冷静に考えてしまう。

「…チャンミン、俺は…」

出来るのなら…深くまで触れ合いたい。そう言い掛けた。その時、離れた場所から竜の行方を追う声が上がる。


「あっ!そうだ!まっ白ケーキ!!」

大事な用件を忘れていたと叫ぶチャンミンは、母と慕う奴の元へ駆けて行ってしまった。


こうなる事は予測出来た。期待はしていない。特段、何も思わない。今の心境を決め付けてみても、何故か溜息が洩れそうだ。

それでも、落胆はしていない。誰に対しての強がりなのか、分からないが…深呼吸をした時、また雄叫びが響き、チャンミンが戻って来る。



「ユノ!!ケーキをとりにいこ!!」
「…ケーキ?」
「ママがちゅうもんしてくれたんだよ~!ユノみたいに、まっ白のクリームいっぱいケーキ!!」
「……」
「ぼくがね~!ユノの日だって言ったらね!!ママがユノみたいな大っきなケーキをたのんでくれたの!!」
「…そうか」


俺の願いなど、忘れられても良い。チャンミンの笑顔を目にし、心の底から思った。

けれど、今日は特別な日らしい。急に顔を寄せたチャンミンが耳打ちしてくれる。



「…いつもユノがアーンしてくれるけどね。…今日は、ぼくがユノにアーンするからね…」


小声で言う必要があるのかと、問いたかった。でも、細かな部分はどうでも良い。にんまり笑うチャンミンが巻きついてくれるから、それだけで満足だ。


「あっ!そうだ!!白とらちゃんもむかえに行かないと!」
「……」
「ユノ、しんぱいしなくても大丈夫だよ?今日は…まっ白の日だけど、ぼくのユノの日だからね。ユノにだけ、アーンするからね!」
「…そうか」


チャンミンに指摘されるほど、俺は表情を変えていただろうか。そんな疑問も後回しにして。ご機嫌なチャンミンを背負い、その先の楽しみを期待して、飛び立った。











おしまい。







今日は何の日。

2019-03-27 | 白の世界




「ユノー!!」

俺の傍を離れ…食べ物を強請りに行っていたチャンミンが大声を上げながら突撃してくる。徐に身体を起こし、体勢を整えた瞬間。チャンミンが勢いよく埋まった。


「…どうした」
「ユノ!さくらって知ってる?」
「…さくら?」
「ピンクの…小さくてきれいなお花!」
「…あ、ああ」
「今日ね、さくらの日なんだって!僕、さくらを見に行きたい!!」
「…そうか」

きらきら光る目を見れば…。いや、見なくても…チャンミンの願いなら叶えるだけだ。本来の姿に戻り、チャンミンを背に乗せ、窓から飛び立った。







「寒くないか…?」
「だいじょうぶ!!」

チャンミンが望むのは…。上空から下界を眺め…最適な場所を探す。あちこちにそれらしき場所はある。けれど、何処もゆっくり落ち着けそうにない。賑やかさは必要ないと思いながら、空を旋回した。

チャンミンは空を走るだけで、楽しげに笑っている。このまま…違う世界まで走り抜けようとも思ったが…チャンミンはまだこの世界で過ごしたいと、表情で示す。

「ママがね!おはなみべんとうを作ってくれるんだって!だから、お昼までには帰ろうね!」
「…ああ」
「ママといっしょに、おはなみしたいけど。そのまえに…ユノといっしょにさくらを見たかたんだー!」
「…そうか」




俺が一番だと聞かされると、単純に喜びたくなる。丁度、誰も居ない場所を見つけた俺は、気分良く…桜が咲く場所へと降り立った。





「うわあっ!見て、ユノ!さくらがいっぱい咲いてる!」

元気よく駆けていくチャンミンは手を広げ、はしゃいだ声を上げている。風を起こすと花は散ってしまう。加減しろと言い掛けたが…その必要はない。

一通り、走り回ると…満足げに笑うチャンミンが突撃してきた。腕を広げ、チャンミンを抱き留めると、柔らかで温かな風が吹き抜けた。



「ユノ。さくらって…ほんとにきれいだね…」
「ああ、そうだな」


落ち着きを取り戻したチャンミンは、胸元に埋まりながら桜を見上げる。

「年に1度だけ。少しの間だけしか見られないから…きれいなのかな…」
「そうなのかもな…」


桜について聞いた知識を口にするチャンミンは、少し寂しそうにも見える。

時折、見せる…大人びた表情は…俺だけが知る特別なものだ。

ぼんやり見上げるチャンミンに、はらりと花弁が舞い降りる。


「…年に1度でも…いつの間にか咲き誇り、春の訪れを知らせる健気な花に…今しか出来ない感謝をしようか…」
「うん!」


チャンミンの額に唇を押し当てると、先に落ちていた桜の花びらが張り付いたのだろう。チャンミンはニコリと笑い、俺の唇に吸い付いていた。









おしまい。