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一応、秘密の…ホミンのお話置き場です。

王子さまと花嫁。11

2019-04-30 | 王子さまと花嫁。

 



「…っとに、何だったんだろう」

ユノ君を教室まで送り届けてから猛ダッシュした。授業が始まるギリギリに戻れたけど、走ったせいで割増された嫌な焦りは中々消えてくれなかった。


何だか、食べた気がしない。ゆっくりと過ごすばかりだった…今までとは違う時間を過ごした結果、授業に集中出来ないで、色々な事を考えてしまう。

ユノ君の方が早く終わる。僕が自由になるのは掃除してからだし…放課後に会えないと言うべきだったか?待たせるとは言わなかった。でも、迎えに行かないと…ユノ君は悲しむだろう。

きらきら光る笑顔を曇らせなくない。でも、僕は今まで通りに過ごしたいんだ。

ぐるぐる考えている間に、授業は終わっていた。


早く行かないと…って、思っている訳じゃない。でも、交わしてしまった約束を守ならいと…人として終わる。そんな風に思うから?何だか、忙しなく動いてしまう。

それでも掃除を放棄したくない。いつも通り、真剣に掃き掃除をしていると…いつもはしない明るい声が響いた。


「ユノ君!」
「ここに花嫁さんが居るわよ!」

「親切な方々!感謝申し上げる!チャンミン!待ちきれなくて会いに来た!」


「ユ、ユノ君!」


昼間に来た生徒を引き連れて、ユノ君が現れる。


「チャンミンは何をしているのだ?」

「お掃除みたいね」
「花嫁修業とか?」

「母上も掃除が大好きだ!ボクも手伝うぞ!」

「ちょっと、ユノ君!?」


元気に飛び込んで来るユノ君に、周りからの視線が集まる。だけど、見知らぬ生徒達が人払いをしたから…。何故か、教室内には僕とユノ君だけになった。







「チャンミン、ここを拭けば良いのか?」
「ユノ君は掃除しなくて良いって!」
「そんな事は言わないでくれ!ボクも手伝いたいのだ!」


チャンミンは何もするなと繰り返す。だけど、ボクは引き下がれない。ジッとなんてしていられなくて、チャンミンの傍に駆け寄る。



「チャンミンは綺麗好きなのだな!」
「そんな事ないから」
「ならば、人の役に立つのが好きなのか?」
「それも違う。ただ僕は…与えられた役割をきっちり果たしたいだけで…」
「チャンミンが与えられた役割なら、ボクも担うぞ!」
「だから、ユノ君は関係ないでしょ!」
「何を言う!チャンミンの伴侶としてその位の責任は負うぞ?」
「ユノ君!!ふざけないで!」


ボクはいつだって本気だ。ふざけてなどいない。そう言ってもチャンミンは、納得してくれないようだ。


気にせずにいても良いのか、もっと真摯に訴える方が良いのか。どちらが適切な対応なのか分からず、黙っていると…それまでプリプリしていたチャンミンが少し優しい口調で言葉をかけてくれる。



「急に黙られると… 気になるんだけど」

「気にしてくれるのか!」

「どうしたのかなって、思うだけ!」

「チャンミンに想われて、ボクは嬉しいぞ!」

「想ってないし!」


チャンミンからの告白に、ニマニマしていると…ガラガラと音がして、扉が開いた。


「ユノ様、お迎えに上がりました」

「あ!爺や!」


聞き慣れた声にハッとして、振り向く。


「爺や!ボクが見つけた花嫁のチャンミンだ!」

「ちょっと、ユノ君!」


「おお、貴方様が!ユノ様のお相手でございますか。なるほど。血は争えないものでございますな…」


嬉しげに目を細める爺やに駆け寄り、ボクは得意気に報告をした。













王子さまと花嫁。10

2019-04-30 | 王子さまと花嫁。


 

 

 

「チャンミン。ここは食事をする場所なのか?」
「うん、そうだけど…。ユノ君、お金、持ってない…よね?」
「ん?」
「まあ…そうだよね。仕方ないか。今日は僕が奢ってあげるから、好きな物を食べれば良いよ」
「…それはどう言う意味なのだ?」
「勝手に食事をしたら、お母さんに怒られるとか、ある?」
「ボクの母上は滅多に怒ったりしない!」
「ああ、そう?んん、何にしようか。ユノ君は何が好き?」
「ボクはチャンミンが好きだ!」
「そ…、そうじゃなくて、食べ物の話だから!」
「ボクはチャンミンと同じ物で良い!」


ユノ君は少し変わった子だ。話し方も使う言葉も独特で、ただ者じゃないって感じる。

それに、不思議な魅力があるって言うか…年齢はかなり下で体付きも幼いのに、包容力のようなものも感じるような…。

でも、表情や反応は年相応な部分もあって、どう対応するのが正解なのか、よく分からず…戸惑いは継続中だ。

 

こんな場所は初めてだって言うユノ君は、目に入るもの全てに興味津々な様子だ。簡単な説明でも大袈裟に反応し、感動込みで納得する。まるで異世界から迷い込んだ王子様みたいだって思った。


適当に選び、会計を済ませ、端っこの席へと座る。向かい合って座ろうと思ったのに。ユノ君は当たり前のように、僕の膝に座ろうとした。


「ユノ君?席はあるんだし、僕の膝に乗らなくても良いんじゃない?」
「ここに座っては駄目か?」
「駄目って訳じゃないけど…。恥ずかしくない?」


そう尋ねると、ユノ君はブンブンと首を横に振る。


「ボクは片時も、チャンミンと離れたくないのだ!」
「そ、そうなの?」



自分でも物凄く不思議なんだけど、何を言うんだって、突き放す事が出来ない。小さな子に声を荒げるのは違うと思うせいか、ユノ君の物言いに気圧された僕は、膝へ乗れるように隙間を作っていた。





「ユノ君、ゆっくりしていたら、授業が始まるから。急いで食べよう」
「急がねば駄目か?」
「うん、駄目だね」
「そうか」

チャンミンとの時間は流れるのが速いのだろうか。ならば、余計にゆっくりと昼食を楽しみたい。そう思うけれど、チャンミンはまるで母上のように、真顔で厳しい事を言う。


自分の想いを優先させるのではなく、ルールに従う。これか母上の仰る社会の厳しさと言うものなのだろうか。

そうと分かっても、急ぎたくない。急げば…チャンミンと離れる事になるからだ。



「ユノ君?」
「……」
「どうしたの?急に静かになって」


こんな時はどうすれば良いのだろう。我が儘を言えば、チャンミンに幻滅されるだろうか。黙って考えていると、チャンミンがボクの匙を取る。


「ほら、もう少しでしょ?早く口を開けて?」
「あ、ああ…」

 

チャンミンは母上のように優しく対処してくれる。最近はして貰えなくなっていたが…料理を口へ運びれて、嬉しさと気恥ずかしさが入り混じり、頬が熱くなる。


「なあ、チャンミン」
「何?」
「授業が終わってから、会って貰えぬか?」
「え?」


チャンミンは困った顔をした。それが分かったから…ボクはもう一度、頭を下げて懇願する。



「頼む!チャンミンに会えないと思うと…食事が喉を通らない…」
「…ユノ君、そんな顔をしないで?」
「お願いだ!チャンミン!」


更に頭を下げると、チャンミンは仕方ないと呟き、また会ってくれると言った。


良い返事を貰えると、食欲は直ぐさま復活する。


「チャンミン、そちらの料理も口にしたい!」
「これ?」
「早く運んでくれ!」
「元気になったなら、自分で食べて」
「チャンミン、早くだ!」


ニコニコとはしていないけど、優しいチャンミンに料理を運ばれる度、ボクは旨さだけでなく、幸せも噛みしめていた。









 

 

 

 


王子さまと花嫁。9

2019-04-29 | 王子さまと花嫁。


 

 

チャンミンに会えた!それだけで嬉しくなってしまい、ボクは間違いなく舞い上がっている。


チャンミンはとても優しい。それでいて頼もしい。ボクを抱えて走り、誰も居ない場所へ連れ込んでくれた。

誰も居ない所へ来たのは…何か理由があるのだろうか。チャンミンの胸元へ収まっている状況は良い事ではないのかも知れない。でも、母上のように温かな場所からボクは降りられないでいる。
 

「チャンミンは直ぐにでも城に来てくれるのか?」
「ねえ、ユノ君。さっきからずっと…言っている意味が分からないんだけど」
「何が分らないのだ?」
「んーっと、色々あるけど…」
「何でも聞いてくれ!」
「花嫁って…誰の事?」
「それはチャンミンの事だ!!」


笑顔で応えると、チャンミンは大きく目を見開く。

 

「チャンミンは目が悪いのか?その眼鏡、良く似合っているな!」
「め、眼鏡の事は良い!」
「ああ、そうだ。正式なプロポーズはまだだったな。直ぐに爺やに頼んで指輪を用意して貰う。場所は…  チャンミンは雰囲気重視する方か? 勢い任せで突き進むより、意見を取り入れて、最高のプロポーズをしたい!!」
「ちょっと、待って!!」
「何を待つのだ?」
「僕がユノ君の花嫁!?」
「ああ」
「それって誰が決めたの!?」
「ボクだ」
「……」
「チャンミンはボクの伴侶となるのだ!」
「…意味が分らない…」

 

顰め面をするチャンミンは溜息のようなものを吐き出す。

ああ、そうか。父上のようにボクは突っ走ってしまったんだ。母上がいつも言っているように、相手の気持ちを考えて、きちんと言葉を継ぎ足さなければ。

 

「ボクは運命の相手を探す為にここへ来た。そして、チャンミンに出会った」

「…僕は相手を探していないんだけど」

「急ぐ必要はないと思っても…ボクは早くチャンミンを…ボクのものにしたいのだ!」

「……」

「チャンミン。ボクと一生、添い遂げて貰えぬか?」

「そんな急に言われても…」

 

すんなり返事をしないのは、恥じらいがあるからだ。チャンミンの淑やかさに感動するボクは、もっともっと想いを告げなければ!と意気込んでいた。

 

 


 

ユノ君が一生懸命だってのはよく分かる。でも、これは一方的な話だ。僕が花嫁だと言う事はどうにも納得が出来ない。次々と繰り広げられる会話をどうやって止めようか。それを考えていると、グウッと大きな音が鳴った。

 

「ユノ君、お腹空いているの?」

「あ…そう言えば、昼食を取るのを忘れていた!」

 
小さく呟いたユノ君は頬を赤く染めて、恥じらっている。その様子が可愛くて…僕は思わず、笑ってしまった。余り笑うと失礼だろうか。慌ててユノ君を見返すと、呆けているようにも見える。


「どうしたの?」

「チャンミンの笑顔は美しいな!」

「…え?」

「お腹が鳴って恥ずかしいけれど、チャンミンの笑顔を見られたなら、良かった!!」

「……」


真っ直ぐに言われると、何も言えなくなる。屈託のない笑顔を見せられ…心の奥が少し動いたような気がしたけど、そこは敢えて無視をして立ち上がった。

 


「チャンミン?」
「午後の授業もあるからね。きちんとお昼ご飯は食べないと」
「チャンミンも一緒に食べてくれるか?」
「…僕は」
「一人での食事は寂しいからな」
「…ユノ君、一人なの?」

 

一緒には無理だって言いたかった。でも、ユノ君にお願いされると断れない。

 
「仕方ないから、カフェに行こうか」
「チャンミンとなら、何処へでも行く!!」

 

元気な返事を貰ったから仕方なく。予定になかった行動を散る事にした。

 

 

 


王子さまと花嫁。8

2019-04-29 | 王子さまと花嫁。



「…今日も良い天気だな」


ぼんやりと空を見上げ、独り言を呟く。

昼休みになると教室内は多少、静かになる。他のクラスに行ったり、購買や食堂へ行き、ここに残っているのは物静かな子達ばかりだ。

それぞれに適度な距離を保ち、お互いに干渉しない。だから、僕もここに居られる。

辺りを見回し、こっそりと昼ご飯を頬張る。隠す必要もないのに、目立ちたくない僕はいつものように穏やかな時間を過ごす。

…つもりだったのに、何処からか…有り得ない言葉が聞こえる。


最初は聞き間違いだろうと思った。でも、次第に大きくなる声は…僕の名前を連呼しているような…。



「ここに、シム・チャンミン君って居る?」


はっきり聞こえた声に動揺した。咄嗟に身を屈めてみても間に合わない。余計な説明をしてくれたクラスメイトのお陰で、誰かが近付いてくる。


「貴方がチャンミン君?」
「貴方を訪ねて来た子が居るんだけど」

背後から聞こえた声と重なり、可愛い声が上がる。


「まさに!ボクが探していたチャンミンだ!!」


聞き覚えがある声はまさか…。

ゆっくり振り向くと、小さな身体が飛び付いてくる。


「チャンミン!!」
「ユ、ユノ君?」


咄嗟に抱き留めた小さなユノ君は、念願叶うと叫び、満面に笑みを浮かべた。






 

「ねえ、ユノくん。この子が花嫁さんなの?」
「何だか、想像と違うような…」

 
「間違いない!このチャンミンがボクの探していたチャンミンです!!」


ユノ君は元気一杯に返事をしている。発せられる言葉に色々と気になる部分がある。

けど、最も気になるのは僕を見定めるような生徒達の事だ。ユノ君と呼んでいるって事は…知り合いなのか?それ程、親しいようにも見えない。ギロリと睨み、怪しい奴らを観察していると、そんな事は気にも留めないユノ君が大きな声を上げる。

 

「チャンミン!ボクは其方の事を詳しく知りたい!爺やにも早く紹介したいのだ!!」

 

言っている事の意味は分からないけど、大声での会話は止めて欲しい。次々と集まる視線に耐えられない。立ち上がった僕はユノ君を抱えたまま、逃げるように教室を後にした。

 




 

「チャンミン、何処へ行くのだ?」
「取り敢えず…ひとけのない所!!」

 
どうしてこうなっているのか、納得も理解も出来ない。でも、さっきみたいな子達にユノ君が攫われたら大変だ。関係ないと突き放す事は何故か出来ない。喜ぶユノ君をしっかりと抱え、廊下を走り抜けた。

 

 

「…ここなら、誰も居ない筈…」


扉を閉めて、ホッとしたのは…視線から逃れられたからだ。


僕は注目されたくない。出来るだけ目立たずに、平穏な学生生活を送りたい。そう思い、ひっそりと息を潜めていたのに…何が起こったと言うのだろう。走ったせいで速まっている鼓動に違和感を覚えていると、胸元から元気な声が響いた。


 

「チャンミン、ここは何処だ?」
「えっと、ここは…資料室だよ」
「チャンミンはここで何をするのだ?」
「別に何もしないけど…って。ユノ君。どうして僕を訪ねて来たの?何の用があるの?」
「ボクはチャンミンの事を知りに来た!!」
「え?」
「花嫁になる相手の事を何も知らないのは問題だからな!チャンミンは幾つだ?」
「僕は17だけど…」
「やはり、年上か!」
「あのユノ君?さっきから花嫁とか言ってるけど、それって…」
「年下で申し訳無いが、ボクは全力でチャンミンの事を護る!だから、チャンミンは何も思わないで欲しい」
「あの…ユノ君?」

 

ユノ君は話し方が独特だ。そのせいだけじゃないだろうけど、微妙に会話が成り立たない。そう思うのに…会話を遮り、ハッキリと問い質せないのは…ユノ君が凄く嬉しそうな笑顔を浮かべているからだった。

 

 

 

 

 。

 






王子さまと花嫁。7

2019-04-28 | 王子さまと花嫁。

 

 

「ユノ様」
「爺や!何か分かったのか!?」
「あの学園には同姓同名の方が多数在籍されております故、もっと詳細な情報を得なければなりませぬ」
「そ、そうなのか?」


ボクが見つけた花嫁の事は、爺やと二人だけの秘密にしている。まだ正式な返事を貰えた訳ではないし、相手の素性も知らない。父上は兎も角、母上に余計な心配をおかけするのは嫌だったからだ。

爺やと会話が出来たのは、送迎の馬車の中だけ。爺やから助言を貰いながら、ボクは真剣に考える。

「では、上級のクラスを順に巡れば良いのか?」
「それが確実な方法でございますが、ユノ様には少々、難しい事ではございませんか?」
「ボクの花嫁に会えるのなら、羞恥心など気にせぬ!」
「ユノ様…」
「早く爺やに引き合わせられるよう、ボクは頑張るからな!」
「なんと立派なご発言でございましょう…」

 

爺やに驚かれ、少し恥ずかしかった。自分でも不思議だ。知らない場所へ自ら乗り込むなんて、今までのボクはしようとも思わなかった。でも、今は見えない力に突き動かされている。あの人に会いたい。その一心で急く気持ちを抑えるのは難しい事だった。

 

 


本当は直ぐにでも花嫁を捜索したい。そう思っても、授業は必ず出席するように、爺やから言われてしまった。爺やはボクの味方のようで、そうとも言い切れない部分もある。悪い事をすれば、母上に知らされてしまう。それは嫌だ。グッと堪えて、真面目に授業を受けた。

 

終了を知らせる音が鳴り、さっと教室を出ようとした。でも、誰かがボクの前に立ちふさがる。

 

「ねえ!ユノくんって王子さまなの?!」
「ほんもののおうじさま!?」


同じような顔をしているのは…何処の誰なのか。


「申し訳ないが…ボクは先を急ぐんだ…」


軽くお辞儀をして、横を通り過ぎたのに。

 
「ちょっとまってよ、ユノくん!!」
「ほんとうに、おうじさまなの!?」
 

その子達は賑やかな声を上げ、ボクの後を追い掛けてきた。

 




「竜くんからきいたんだけど!!」
「おうじさまって、おかねもち!?」


後ろから声が飛んでくる。何と言うか…こんな積極的さは苦手だ。かと言って、着いてくるなと叫ぶのも無礼だ。振り向かないで返事をしないで歩いて居ると、違う誰かの声がした。
 

「…他の男を追い掛けるとは…。良い度胸をしているな…」
「あっ!!ダーリン!!」


「チャミナ!!ポクじゃなくて、だれをみてるの!!」
「あ!ユノ!!」

 

それぞれ、現われた誰かに反応して、賑やかな声が離れていく。ボクと同じ名前が聞こえたような…。それでも振り向かないで、ボクは廊下を突き進んだ。

 


 

ここは城のように広い。まだ知らない場所ばかりだ。方向が正しいのかも分からない。きちんと調べてからと思っても…そんなの待てないと焦りがある。

ボクは父上の性質と母上の性質のどちらも受け継いでいる。爺やから、何度も言わきたけど、実感は無かった。こうやって、父上も待てなかったのか。そこが似ているのだろうと思いつつ、渡り廊下を進んだ。

 



「あら、可愛い子!」
「本当!!誰かを探しているの?」
 

空気感が変わった場所へ来ると、ほんの少し萎縮してしまう。優しく声を掛けられても、少し怖いと感じてしまう。ここは母上譲りなんだと思うと…ちょっと嬉しかったりする。



「あ、あの!こちらにシム・チャンミンと名を持つ者が居られるでしょうか!!」



微笑む姉様方に尋ねると、揃って首を傾げられる。

 
「シム…?」

「チャンミン…?」


「はい!とても美しく、聡明な方です!!」


「んん~」
「そんな子、居たかしら…」


お姉様方は腕組をして、首を傾げる。

 

「先生には何人か居るけどね」
「理事長の秘書さんもそんな名前だったような…」

「あ!生徒会長ちゃんの事?」
「でも、あたし達と同じ学年でって事よね?」

 
優しいお姉様方は親身になって考えてくれる。

 

「その子に何の用なの?」
「そう。知り合いなの?」



「その方はボクの花嫁になるのです!!」

 

笑顔で宣言すると、お姉様方はキラキラと目を輝かせ、興奮気味に前のめりになる。


「君は花嫁を探しに来たの?」
「はい!!」

 

深く頷くと、お姉様方は何故か歓声を上げ、花嫁捜しに協力してくれると言ってくれた。