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中脇初枝 著 『世界の果てのこどもたち』

2016-02-09 | 本の紹介
中脇初枝 著『世界の果てのこどもたち』読了しました。
本屋大賞にノミネートされています。

表紙の絵が表しているように、3人の少女の成長物語です。
一人は、四国の貧しい農村から駆り立てられるように開拓団として家族で満州に移住した珠子。
一人は、日本の収奪から逃れて朝鮮から満州の片隅へ来た、朝鮮人の家族のムスメ、美子。
一人は、裕福な横浜の貿易商の娘として誰からも愛されて育ち、父親の仕事で旅行に来た茉莉。
この3人の少女が初めて偶然出会ったのは、第二次世界大戦中、場所は満州。

同じ年頃ではあるけれど、生まれた国も、言葉も、環境も、家族も異なる3人が、
ある一晩を一緒に過ごし、友情なようなものが芽生えます。
そして、その時の体験が、その後の彼女たちの人生の中で支えになっていくのです。
8歳の少女たちが、戦時中・戦後を生き抜く中、思いもかけない人生を歩むこととなります。

日本においての戦争の悲惨さを描くだけではなく、日本・中国・朝鮮の絡みがより物語を深くしています。
時代と国とに翻弄された彼女たちの人生に、深く考えさせられる物語でした。
日本の戦争孤児、中国残留孤児、朝鮮半島の分裂、人種差別問題、
第二次世界大戦は大きな問題を残したのですね。
そして今もなお、これらの問題は根本的には解消されていないことにも思いを馳せました。
ぜひ、若い人たちにも読んでもらいたい作品です。

作者の中脇さんは、40代の作家さんです。
巻末の参考文献の多さから、執筆に大変な準備が必要だったことがわかりました。
構想から執筆までに20年もの歳月がかかったそうで、作者渾身の一作であると思います。

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