万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

北朝鮮は“死の商人”?-イランとの違い

2017-09-11 16:40:33 | 国際政治
北朝鮮問題解決へ貢献の用意=イラン核対応参考に―独首相
 北朝鮮問題については、9月11日に、国連安保理において石油禁輸を含む新たな制裁決議案が採決に付される予定です。制裁に慎重な姿勢を示してきた中ロの出方を読み切ることは難しく、予断を許さない状況のようですが、水面下での交渉を経て採決にまで漕ぎ着けたところを見ますと、成立の可能性は相当に高いのではないかと推測されます。

 こうした中、ドイツのメルケル首相は、同問題について外交による解決に貢献する意向を示したと報じられております。同首相がモデルとするのは2015年の米・イラン核合意であり、北朝鮮もまた、イランと同様に制裁解除を条件として核・ミサイル放棄に合意すると見込んでいるようです。しかしながら、イランと北朝鮮とでは全く状況が違います。

 第一に、イランは核開発の途上にあり、未だに核兵器を保有していない状況にありました。一方、北朝鮮は、少なくとも核兵器については既に開発を済ませており、かつ、核という脅迫、並びに、攻撃兵器を手にした以上、それを易々と手放すとは思えません。

 第二に、北朝鮮が、厳しい経済制裁を受けてもなお核・ミサイル放棄に応じない理由は、それが、今後、北朝鮮の有力な外貨獲得の手段となる見込みがあるからです。北朝鮮はウラン資源に恵まれており、今般の行動でNPT体制が完全に崩壊すれば、核やICBM等を輸出品として諸外国に売却することができます。おそらく、イランなどの反米国家も、有力な取引先となりましょう。言い換えますと、北朝鮮は、核やICBM等が自国の有力な輸出商品となり得るからこそ、外部からの如何なる制止をも振り切って、商品の性能を潜在的“バイヤー”にデモンストレーションする場として実験を繰り返していると考えられるのです。

 イランのケースでは、核開発を停止することに経済的なメリットがありますが、北朝鮮の場合には、開発を停止しないことにメリットがあるのですから、両者を同列に論じることはできないはずです。もっとも、仮に、ドイツが北朝鮮の暴挙を押さえることができるとしますと、北朝鮮がウラン濃縮に使用している遠心分離器のPLC(制御装置)がドイツのメーカー、シーメンスの製品であることを利用する方法があります。

 パキスタンの科学者であるアブドゥル・カディール・カーン氏は遠心分離機を開発するにあたって同社のPLCを使用し、イラン、リビア、北朝鮮の三国に売却したされています。つまり、北朝鮮が、ウラン濃縮型の核兵器を増産して使用、あるいは、輸出しようとしても、シーメンス製のPLCを使用している限り、部品調達といったメンテナンスを含めて同社の販路や技術に依存せざるを得ないのです。PLC自体は汎用品なそうですが、かつて、アメリカがイランに対して実行したオリンピック作戦がシーメンス社製のPLCを利用したように、製造元であるシーメンス社の協力を得る、あるいは、供給経路を遮断することができれば、遠心分離の段階で北朝鮮の“核産業”を潰すことができます。もっとも、PLCの他社への乗り換えはソフトウェアの違いから困難とはいえ不可能ではありませんので、シーメンスのみならず、他のメーカーにも同様の協力や禁輸措置を要請する必要はありましょう。

 北朝鮮を“死の商人”と断定するにはより厳密なる検証を経る要しましょうが、北朝鮮の核・ミサイル開発は、物理的・技術的に阻止する方法がないわけではありません。交渉に持ち込まれることで危機が長期化する、あるいは、北朝鮮有利な展開となるよりは、ドイツ一国で動くよりも、国連決議等において、石油禁輸に留まらず、PLCを含む核・ミサイル開発に要するあらゆる関連機器の全面的な禁輸措置を講じた方が、北朝鮮が早々に白旗を揚げる可能性は高まるのではないかと思うのです。

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2 コメント

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Unknown (オカブ)
2017-09-11 22:42:50
倉西先生
いつもご指導ありがとうございます。
先生ご指摘の通り、私は北朝鮮が核を保有することにより、世界は二通りのリスクに曝されると考えます。
一つは、もちろん北朝鮮がICBMを運搬手段に用いて自ら核を行使するリスク。
二つ目は北朝鮮が保有する核が核非保有国はおろか、中東などの過激派勢力に拡散するリスクです。
特に後者の場合、自爆テロをも辞さない集団ですので、西側諸国の核抑止力はなんら効力を持たないことになります。
それどころか、北朝鮮が数年先に核の超小型化を実現して、それが過激派勢力に渡った場合、彼らはその"汚い核兵器"を用いて、西側諸国にこれまでとは異次元の大規模テロを行うなり、西側諸国を脅迫するなり、いかようにも現在の国際秩序を破壊できることになります。
それを防ぐためにも開催中の国連安保理で米国をはじめとする西側諸国は、長期的な展望に立って安易な妥協をすることのないよう覚悟を決める必要があるのではないでしょうか?
ご指導を賜れれば幸いです。
オカブさま (kuranishi masako)
2017-09-12 09:21:05
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。

 まことに残念ながら、石油禁輸を含む安保理決議案は全く以って骨抜きとなり、殆ど効果を期待できない内容のまま全会一致で採択されたようです。中ロへの配慮ということですが、”全会一致”、並びに、”早期採択”を優先した結果であれば、真の目的が置き去りにされており、本末転倒となりましょう。この問題につきましては、本日の記事で認めたいと思いますので、もうしばらく、お待ちくださいませ。

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