万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

力を以て仁を借る者は覇なり

2009年08月28日 15時52分37秒 | アジア
中国、武装警察法を採択 暴動鎮圧・テロ対策を正当化(朝日新聞) - goo ニュース
 孟子の言葉に、”力を以て仁を借る者は覇なり”という名言があります。これは、「兵力権力などで天下をとり、表面だけ仁者をよそおうのは、実は、王道の仁をかりものにしているもので、覇道を行う覇者のやりかたである(『中国古典名言辞典』、講談社学術文庫より)」 という意味なそうです。

 現在の中国の様子を見ますと、まさに、この言葉が戒めた覇者の道を進んでいるようです。現代風にアレンジしますと、”力を以て合法性を借る者は覇なり”と表現すればよいでしょうか。法律さえ制定すれば、如何なる非道な行為も正当化できると信じているのですから。今月27日に、全人代の常務委員会で制定されたという武装警察法の制定は、武力弾圧を、公に法律で認めたに過ぎないのです。

 元より独立の権利があるチベットやウイグルの人々に対して、対話での解決を拒絶する一方で、抵抗運動を力で弾圧する態度は、到底”仁”を備えた者の行為とは言えません。武装警察法は、覇者に手段を与える悪法なのではないでしょうか。

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6 コメント

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Unknown (あき)
2009-08-29 09:15:41
ブッシュ時代のアメリカにも言っておけば、説得力があろうに。
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あきさん (kuranishi masako)
2009-08-29 15:26:54
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 イラク戦争の場合には、大統領のフセインが、自国民を弾圧するという”仁”に反する行為を行っておりました。この点に鑑みますと、一方的に、チベットやウイグルの人々を弾圧している中国と同列に論じることはできないと思います。
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Unknown (あき)
2009-08-29 18:41:11
フセインが自国民を弾圧していたからといって、何でアメリカがでしゃばる?大きなお世話というのだ。
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あきさん (kuranishi masako)
2009-08-30 08:37:31
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 国際社会では、人道的介入が許されております。チベット人やウイグル人に対する虐殺もまた、大量殺戮と認定されれば、外国の軍事介入を受ける可能性があるのです。あきさんの論理は、児童虐待を放置し、死に至らしめることを認めることに他なりません。
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Unknown (あき)
2009-08-30 15:08:19
 そんな理屈を言えば、中共を利する。ダライラマの封建政権は、農民を虐待していたから、追放したと言っている。
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あきさん (kuranishi masako)
2009-08-30 15:31:57
 ご返事をいただきまして、ありがとうございました。
 イラク戦争の場合は、国民を弾圧したフセイン政権を倒した後、イラクに主権を返還し、民主的な制度の下での再出発を促しました。中国は、チベットに主権を返したでしょうか。それどころか、自国に併合したのではないでしょうか。また、東トルキスタンの併合に際しても、合法的な手続きすら踏んでおりません。
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