万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

不可解な共謀罪一回目適用除外論ー誰を庇っているのか?

2017年02月22日 15時06分48秒 | 日本政治
 現在、日本国の国会のおいて立法手続きが進められている共謀罪について、金田勝年法相から驚きの発言があったそうです。”正当な活動をしていた団体が1回だけ重大な犯罪を行うと決め、準備行為をしたとしても「組織的犯罪集団」とは言えない”と言うのです。

 この発言、一体、何を意味しているのでしょうか。文字通りに解釈しますと、重大な犯罪を行うための準備行為を行ったとしても、最初の一回だけは共謀罪を適用しない、ということになります。しかしながら、現実に、このようなシチュエーションはあり得るのでしょうか。この発言の念頭にあるとされるオウム真理教の場合には、確かに連続事件となり、地下鉄サリン事件に至るまでエスカレートの一途を辿っています。しかしながら、当然に、最初の一回において大規模なテロ事件を起こす可能性もありますし、重大犯罪を計画しても一回目だけは許されると都合よく解釈する団体も現れるかもしれません。否、法相の発言は、組織犯罪を誘発するリスクさえ内包しています。実際に、一回目の事件で甚大なるテロ被害者が発生した場合には、法相は、どのように弁明するのでしょうか。

 あるいは、法相は、”準備行為”と述べていますので、重大犯罪を決意したとしても、実行に移す前に発覚した場合を想定しているとも考えられます。この場合には、テロ被害は発生しませんが、発覚する以前、あるいは、計画を自発的に停止しない限り、重大犯罪の準備作業は野放し状態となります。

 何れにしても、ここで不可解なのは、何故、金田法相は、敢えて共謀罪の効果を低下させるような発言を行ったのか、という点です。真に組織的犯罪集団と対峙する意思があるならば、犯罪者に”御目こぼし”や逃げ道を与えるような発言は決してしないはずです。そこで、推理を働かせてみると、この適用除外がないと、則、共謀罪に問われてしまう特定の団体が現に存在し、その団体を庇おうとしているのではないか、とする疑いが浮かぶのです。オウム真理教が政界進出に熱心であったように、日本国の政界には、様々な宗教団体が蠢いております。法相の発言は、宗教団体と組織犯罪集団との境界が曖昧となっている危うい現状を露呈しているように思えるのです。

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9 コメント

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Unknown (Unknown)
2017-02-23 15:38:36
当然ですよ。正当な活動をしている団体に最初から共謀罪を適用しようと思えば、電話の盗聴、メールの読み取り、さらにスパイの潜入などが必要です。ごく普通の団体に公安がそのような活動をするのを許容するのですか。
Unknownさま (kuranishi masako)
2017-02-23 20:23:23
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 ごく普通の団体であれば、たとえ考案に盗聴やメール内容を読み取られたとしても、痛くもかゆくもないのではないでしょうか。しかも、団体ともなれば、純粋なる個人ではなく、多数のメンバーを擁する以上、公的な性格をも帯びております。あるいは、公安による盗聴に反対なのであれば、宗教団体は、自らの活動を全てオープンにする義務を負うべきではないでしょうか。
Unknown (Unknown)
2017-02-24 04:44:24
そんなことはないでしょう。犯罪とは関係なくても公安にというか他者に知られたくないことはいくらでもあります。ま、それに電話を盗聴されているのは気持ちが悪いでしょう。あなたは電話を盗聴されてもよいのですか。そういうかつての全体主義国家みたいなことがよいのですか。
Unknownさま (kuranishi masako)
2017-02-24 10:44:59
 公安で収集された情報が、外部に漏れたり、悪用されない限り、問題はないのではないかと思います。否、民間団体が、SNS等を用いて犯罪を共謀したり、ブラックメール送るといった脅迫に利用する方が、余程、社会に対する害は大きいのではないでしょうか。団体において、他者に対して”知られたくない情報”とは、一体、どのようなものなのでしょうか?
Unknown (Unknown)
2017-02-24 12:50:27
痴話喧嘩とかあるいはボスへの悪口とかストレス発散とかいくらでもありますよ。「給料安いなあ」とか「あいつ、ろくに働きもせず俺たちより給料高いぞ」とか。京都の坊主なら「先斗町のあの姉ちゃん、ええぞ」とか。公安が聞いたら笑うようなことはいくらでも。そうそう、宗教団体でも全部、無税じゃないでしょう。「これ経費になるかな、ま、入れとこう」とか。うまく税務署を通ったら「やったぞ、今日は飲みに行くか」とか。あんまり聞かれても気持ちが良いものじゃないでしょう。それに公安から「お前ところの従業員、お前の悪口ばかり言っているぞ」と連絡があったらたまったものじゃない。物言えば唇寒しの1984の世界になるじゃない。
Unknownさま (kuranishi masako)
2017-02-24 13:19:52
 先のコメントでも説明しましたように、公安の職員の方々から失笑を買うような内容でも、それが、外部に漏れなければ、何の問題も生じないのです。公安も、国民の安全や犯罪に関わる内容でなければ、当該集団に通知を行うはずもありません。一方、脱税などはれっきとした犯罪ですので、公安に知られるとなれば、犯罪防止の効果は期待できます。やはり、この法案の反対している人々は、後ろめたい行為を隠したいのではないでしょうか。
歯止めしておけば良い (Suica割)
2017-03-21 17:30:18
懲役四年以上の刑(暴力的犯罪行為に結び付かないものを除く)とすれば、本来の目的以外には情報が使えなくなります。
まず、テロ行為とは何かをきちんと定義する (Suica割)
2017-03-21 17:39:27
その上で、テロ行為に関係ある懲役四年以上の刑罰について、共謀罪適用をすればいい。
それと関係なければ、脱税だろうが麻薬密売だろうが、発見しても、調査職員には守秘義務ということで泣いて見逃すように規定すればいい。

政府はテロ行為対策の法案と言っているのだから、テロ行為対策専門法のくくりにすれば、国民の反対を巻き起こさずにすむ。
Suica割さま (kuranishi masako)
2017-03-21 19:04:21
 コメントをいただきまして、ありがとうございました。
 私は、テロは組織犯罪の一つであり、資金源を断つことを考慮すれば、脱税も麻薬密売も厳重に取り締まるべきと考えております。今般の法律名の変更により、脱税や麻薬密売等については”泣いて見過してもらえる”と解釈されたのでは、政府が、自らの役割を放棄するようなものであり、組織犯罪を助長しかねません。また、仮にテロ対策に絞らないと法案が通らないようであれば、野党の真の反対理由は、表向きの”国民監視”ではなく、脱税や麻薬密売の発覚であると疑わざるを得なくなります。

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