万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

共産主義の“解放”と新自由主義の“開放”

2016年10月19日 15時21分25秒 | 国際政治
英政府、「的絞ったビザ制度」で移民抑制 主要閣僚部会で対策
人間とは、本質的に自由を求めるものですので、束縛からの“解放”や開かれた世界を約束する“開放”といった言葉には弱いものです。しかしながら、これらの魅力的な言葉に、人は、しばしば裏切られます。共産主義の“解放”は、国家への隷従を帰結し、新自由主義の“開放”も、富やチャンスが偏った閉塞社会しかもたらしませんでした。

それでは、こうした期待外れの“どんでん返し”は、何故、起きるのでしょうか。その最大の理由は、唱道者達は、決して“その先”を明示しないところにあります。マルクスは、資本家階級からプロレタリアートを解放し、プロレタリアートによる独裁が実現すれば、搾取装置としての国家は消滅すると主張しました。搾取=国家の構図を示すことで、両者の同時消滅が是認されたのですが、その後に如何なる統治の仕組みが登場するのか、という問題については、殆ど何も語りませんでした。新自由主義者もまた、全ての障壁を取り除いて国境を開放すれば、個人の自由が最大化する理想社会が出現すると説いています。しかしながら、その先に、如何なる社会状況が現れるのか、という問いには口をつぐんでいます。結局、イギリス国民は、中間層の崩壊、アイデンティティーの喪失、治安の悪化、及び、社会的変質等…を伴う移民の大量流入に怖れをなし、国境管理の権限を取り戻すためにEU離脱を選択しました。

“その先”を明瞭に示していない思想への安易な同調は、行く先不明のバスに乗ることと変わりはありません。知らず知らずのうちに、逆方向に連れてゆかれるかもしれないのですから。共産主義の”解放”も、新自由主義の”開放”も、共に耳に心地よく響く言葉ではありますが、迂闊に騙されてはならないと思うのです。

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1 コメント

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国家と国境 (Bystrouska.Vixen)
2019-07-13 12:44:57
国家が肥大して喜ぶのは支那人という生まれながらの犯罪者。
国境が消失して嬉しいのは新自由主義者という犯罪者。序に、猶△教徒。
後ろ暗く腹黒く、脛も良心も傷だらけの輩が跋扈するのが21世紀。

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