万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

第三次世界大戦の責任は日本国に-岸田首相のタイム誌事件

2023年05月16日 15時30分39秒 | 国際政治
 先日、日本国の岸田文雄首相が、世界初のニュース雑誌として知られるアメリカの『タイム』誌の表紙を飾ることとなりました。本来であれば、海外トップ誌における日本国首相の華々しいデビューとなり、首相自身も誇らしく思うはずなのですが、内容が内容であるだけに、日本国内の反応は極めて厳しいものとなりました。首相の顔が如何にも悪巧みでもしているような悪人相に描かれている上に、「日本の選択」として、「岸田首相は数十年間の平和主義を捨て、日本を真の軍事力を持った国にすることを望んでいる」とする一文が添えられているのですから。

 同表紙を目にした読者の中には、第二次世界大戦時の日本国を思い出した人も少なくなかったはずです。戦後80年近くを経た今日、日本国が、再び軍事大国化の道を歩み始めたとする印象を与えるからです。台湾有事が取り沙汰されている今日の国際情勢からしますと、アメリカのメディアが、同盟国である日本国を‘悪者’かのように扱う理由はないはずです。日米同盟は、対中抑止並びに防衛の要と説明されています。不自然な出来事の裏には、得てして何らかの目的が隠されているものです。それでは、一体、『タイム』誌、あるいは、その背後にあってアメリカを含む全世界のメディアの手綱を握っている世界権力の狙いは、一体、何処にあるのでしょうか。

 第一に考えられる目的は、近い将来において予測される第三次世界大戦の責任を、日本国に負わせることです。ウクライナ紛争のみならず台湾有事についても、アメリカの民主党バイデン政権は、本心では開戦並びにこれを機とした第三次世界大戦への拡大を望んでいるのではないか、とする疑いが指摘されております。三度の世界大戦は、世界権力が、自らを全人類に対する‘支配者’の座に押し上げるステップともされているからです。これには、戦争利権、及び、デジタル全体主義やカーボンニュートラル化に伴う経済利権も絡んでいるのでしょうが、大多数の人類が平和を望みながら、この世には、戦争を渇望している勢力も存在しているのです。中国を好戦的な独裁国家に仕立て、鉄砲玉としての利用価値から北朝鮮の核保有や大陸弾道弾ミサイルの開発を許しているのも、世界権力なのでしょう。

 この目的を達成するためには、全世界の諸国を戦争に巻き込み、抵抗勢力となりそうな諸国民にダメージを与える必要があります。日本国民もまた世界権力から‘敵’認定されていますので、戦争への参加と戦争被害はシナリオに書き込み済みです。実際に、米軍が策定したとされる台湾有事のシミュレーションでは、同盟軍として自衛隊は重要な役割を果たします。そして、日中間のミサイル攻撃の応酬により、日本の国土がウクライナの如くに破壊され、多くの国民の命が失われることも織り込み済みなのかもしれません(日本国捨て石作戦・・・)。

 もっとも、バイデン政権が第三次世界大戦を引き起こしたとなりますと、モンロー主義の伝統も根強いアメリカでは、共和党支持者を中心に世論が強い反発を示すことが予測されます。そこで、あくまでも戦争の責任は台湾を武力で併合しようとした中国にあるとした上で、バイデン政権は、ウクライナ紛争と同様に、自由主義並びに民主主義を護るためにアメリカは台湾を支援するとするスタンスを採ることでしょう(しかも、アメリカでは台湾関係法、並びに、これに基づく台湾保証法も制定されている・・・)。同スタンスからすれば、中国を適役とすれば十分、ということになるのですが、仮に、上述したシナリオにおいて日本国を‘捨て石’にするならば、それなりの理由を要します。つまり、日本国は、‘捨て石にされても仕方のない国’でなければならないのです。

日本国捨て石作戦を前提としますと、『タイム』誌の表紙の意味も自ずと理解されます。同表紙によって、台湾有事から連鎖して第三次世界大戦が起き、日本国が壊滅的な被害を被ったとしても、その責任は軍事大国化の道を自ら選択した日本国にある、とする印象を読者に持たせることができるのですから。

 第二の目的は、中国をターゲットとした対日敵愾心の誘導です。バイデン民主党政権は、中国脅威、並びに、台湾危機を煽りつつも、どこか中国に対して手緩いところがあります。バイデン一家にはハンター・バイデン氏をはじめ中国利権に関する疑惑があり、表向きはともかくとしても、本心では対中関係を維持したいのかもしれません。一方、これまでのところ、中国もアメリカに対して敵意を剥き出しにする様子は見られません。第二次世界大戦時にあっては国民党政権下でありながらも共に連合国の一員であり、かつ、今なお経済的結びつきも強いアメリカに対しては、正面から本気で対峙したくはないのでしょう。言い換えますと、米中両国とも、日本国が‘敵’であるほうが好都合なのです。中国も、アメリカではなく日本国が相手であれば、第二次世界大戦に対する同国の‘歴史認識’に基づく報復感情も手伝って、躊躇なくミサイルを撃ち込むことでしょう。これを裏付けるかのように、4月28日には、中国の呉江浩駐日大使は、台湾有事に関連して「日本の民衆が火の中に連れ込まれることになる」と発言しています。

 このように推理しますと、『タイム』誌の表紙は意味深長です。おそらく、日本国政府は同社に対して抗議し、同社も変更に応じたそうですが、世界権力を後ろ盾としている岸田首相も、‘悪役’を引き受けることに同意しているのかもしれません。杞憂であればよいのですが、現状を観察しておりますと‘日本国捨て石作戦’の存在が強く示唆されていますので、今般の『タイム』誌の表紙は、図らずも日本国民に対して危機が迫りつつあることを知らせているように思えるのです。

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