万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

‘ポスト安倍’競争とは-評価者は誰?

2019年09月12日 15時01分49秒 | 日本政治
 昨日9月11日、第4次安倍再改造内閣が発足しました。‘安定と挑戦の内閣’と銘打ち、憲法改正を成し遂げる長期政権の総仕上げとして位置付けられているようですが、その一方で、同内閣は、‘ポスト安倍’の試験期間ともされています。新たに任命された閣僚達のうち、誰が最も首相の座に相応しいのか、その政治手腕や実績が審査されると言うのです。

 これまで安倍首相の下で自民・公明両党による長期政権が続いてきたのですが、同首相については健康不安説がありながらも、‘安倍一強時代’とも称されましたように、代わりになる人物が見当たらない状況にありました。そこで、第4次内閣では、憲法改正を実現する傍ら、‘ポスト安倍’となる人材を準備しておこうと言うことなのかもしれません。しかしながら、ここで不自然に感じることは、閣僚の人選を恰も‘ポスト安倍’の候補者選びとして扱いしながら、マスメディアは、誰がそれを評価するのか、敢えて触れていない点です。

 通常であれば、日本国は民主主義国家ですので、評価者は参政権を有する国民のはずです。ところが、今般、ポスト安倍の候補として名が挙がっている閣僚達の就任に際しての談を聴きますと、見ている方角が国民ではないように思えるのです。例えば、再改造の‘目玉’ともされた小泉進次郎環境相に至っては、そのスタンスは明瞭です。何故ならば、環境問題は解決すべき国際的な課題であることを真っ先に述べつつ、最後の方で、取ってつけたかのように日本企業にもビジネスチャンスとなると語っています。しかも、本来の環境相の管轄は環境政策の分野なのですが、福島原発事故における放射能汚染問題に言及し(福島を訪問する予定…)、エネルギー政策にまで足を踏み入れようとしています。純一郎元首相共々、持論である脱原発政策への足掛かりとしたいのかもしれません。さらには、‘社会改革相’と名乗り、育休のみならず、夫婦別姓と言ったリベラルな政策にまで関与しようとしているように見えるのです。

 それでは、一体、こうした改革志向の政策は、誰のために行おうとしているのでしょうか。安倍首相も、何故か、新内閣発足に際して社会保障制度改革を訴えておりましたが(全世代型の社会保障は共産主義の発想では…)、リベラルな方向‘社会改革’に対し、その破壊的な効果故に警戒心を抱く国民も少なくありません。仮に、‘ポスト安倍’の候補者たちが、それぞれこうした破壊的な政策方針を以って政策運営に当たり、それが、‘ポスト安倍’に選出される実績となるならば、評価者は、有権者である一般の日本国民ではない、ということになりましょう。つまり、‘ポスト安倍’に選ばれるのは、日本国民の抵抗や反対を上手にかわし、日本国、並びに、国民に不利となる政策を実行した悪賢い政治家、ということになるのです。

 仮に、上記の推測が正しく、今後、候補者たちの間で激しい‘売国合戦’が繰り広げられるのであれば、日本国民は、忌々しき事態に直面していると言わざるを得ません。日本国民の評価と‘ポスト安倍’を選任する者の評価とが、全く以って正反対なのですから。‘改革’や‘前進’という言葉に聞き飽き、政治家の怪しさが表面化している今日、日本は独立国家と言えるのかどうか(得てして国民はより悪い状況に追いやられる…)、真剣に問うてみる必要がありましょうし、国民は、形骸化してしまった民主主義を取り戻す手立てを講じるべきなのではないかと思うのです。

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