万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

起きるべくして起きたビットコイン急落-取引所は“カジノ”?

2018年01月18日 16時07分47秒 | 国際政治
ビットコイン、半値に=一時1万ドル割れ
仮想通貨ビットコインについては、かねがね投機によるバブルが懸念されておりました。今般、その価格は、僅か一か月半の間に一時一万ドルを割り、半値に急落したそうですが、その原因は、経済における同通貨取引所の空虚性にあるのではないでしょうか。

 ビットコインについては、中国や韓国など、厳格な規制が課せられている諸国があるものの、日本国を含む各国においては専門の取引所が開設されており、これらの取引所での売買が同通貨の相場を決めています。ところが、ビットコインの取引所を経済史に照らしてみますと、その存在理由は空虚と言わざるを得ません。何故ならば、通貨の取引、即ち、異なる価値を有する通貨を相互に交換する両替とは、貿易決済といった実体経済における“もの”や“サービス”等の取引に伴って必要とされる機能であるからです。広域的な銀行ネットワークが誕生する以前の時代にあっては、ヨーロッパ各地の市場には、必ずと言ってよい程、両替商が店を構えていました。通貨取引とは、通商に伴う必要性を母として生まれているのです。

 ビットコインを見ますと、その民間運営者による通貨発行が先行しており、マイニングも、実体経済上において何らかの付加価値をもたらす事業ではありません。また、その取引所は、貿易決済のために開設されているわけでもありません。況や、一部の事業者が顧客に対してビットコインによる支払いを認めるなど、決済手段としての貨幣機能が備わってきているとはいえ、その相場の不安定性から一般の消費者にまで広く普及するには至っていないのです。言い換えますと、ビットコインの取引所とは、相場上昇による売買益を狙う投機を目的とした人々が主として集う場であり(一種の“カジノ”)、実体経済からは凡そ乖離しているのです。

 経済活動上における合理的な必要性を基盤を欠く通貨の取引所は、経済メカニズムにおいても確固たる居場所を見つけることは困難です。ビットコイン急落は、起きるべくして起きているように思えるのです。

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コメント (4)
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