万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ソフトバンクのエネルギー構想は現代の“元寇”か?

2017年07月12日 16時27分58秒 | 日本政治
 福島第一原発の事故以降のエネルギー危機に便乗するかのように、ソフトバンク社は、再生エネルギー事業に参入し、通信事業に加えてエネルギー分野にも進出することとなりました。この時、アジア諸国を送電網で結び、発電した電力を日本国にも輸出する構想(アジアスーパーグリッド構想)をも打ち上げられています。

 先日も、発電国をモンゴルとし、電源を太陽光や風力としてロシアルート、あるいは、中国・韓国ルートで日本に輸出する具体案が報じられおり、同社は、既に現地での土地買収や海底調査等に着手しているそうです。早ければ2020年には送電を開始するとされていますが、この攻めの一手の手法、鎌倉時代の元寇を思い起こさせます。あまりに身勝手ですので。

 再生エネルギー分野への参入に際しても、当時の首相であった菅氏と同社との癒着が指摘されており、十分な議論もなく、首相の辞任条件に加えることで再生エネ法が成立しています。いわば、奇襲的な方法で自らの事業計画を実現しているのです。本件に関しても、日本国内での政策上の議論や国民的なコンセンサスの形成を待つことなく、一方的に準備を進め、既成事実化を図っています。当計画が日本のエネルギー市場に与える影響を考慮しますと、民主的なプロセスを無視した傲慢さが垣間見えます。

 仮に、同構想が実現するとしますと、日本国の命運は、モンゴル、並びに、ソフトバンクの手に握られると共に、日本国内の発電事業は壊滅的な状況に至ります。しかも、ソフトバンクが、東日本大震災を機に再生エネの拡大を強力に後押した事実からしますと、他の同業者にとりましては、同社による安価なモンゴル産電力の大量輸入は裏切り行為ですらあります。原子力分野をはじめ、発電技術も日々進化し、エネルギーの“地産地消”を実現する技術も発展過程にありますので、同構想が日本国の唯一の選択肢であるとも思えません。

電力輸入が拡大すれば小売部門での競争が活発化するとして、肯定的に評価する専門家もおりますが、仮に、モンゴルの発電量がアジア全域の電力需要を賄える13兆キロワットに及ぶとしますと、競争どころか、日本国のみならず、アジアの電力市場はソフトバンクによる独占状態となる可能性もあります。鎌倉時代の元寇は、モンゴルと高麗の連合軍でしたが、今般のアジア送電網構想もまた、モンゴルと朝鮮半島との連合体であり、日本国にとりましては不吉な予感がするのです。

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コメント (8)
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