万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

金正男氏暗殺ー世界は野蛮に満ちている

2017年02月15日 15時15分42秒 | 国際政治
「韓国亡命阻止狙う」=金正男氏暗殺で韓国紙
 本日、北朝鮮のトップの座にある金正恩鮮労働党委員長の長兄である金正男氏が暗殺されたとする、衝撃的なニュースが報じられました。本国からの指令を受けた女性工作員による犯行との味方が有力なようですが、この事件の背後には、様々な思惑が蠢いているようです。

 第1に確認すべきは、暗殺された人物が、金正男氏本人であるのか、否か、という点です。北朝鮮では徹底した情報統制が敷かれていますし、”替え玉”や”影武者”も大いにあり得る国です。国外に滞在していたとはいえ、北朝鮮が工作を仕掛ける、あるいは、金正男氏自身が、自らの存在をこの世から消してしまうために、暗殺を装った可能性も否定はできません。

 第2に、暗殺された人物が本人であったと仮定した場合にも、解明すべき謎が残されています。金正男氏は、中国が金正恩委員長に代えて北朝鮮のトップに据えるべく、手厚い保護が与えられていたそうです。今般の暗殺については、韓国亡命阻止説も上がっており、中国に見放されたとする見方も見受けられます。それでは、何故、この時期に中国が金正男路線を放棄したのか、この点を推理してみますと、アメリカのトランプ政権の誕生により、金正男氏がアメリカ側への接近を図ったため、中国にとって危険な存在になったのかもしれません。つまり、アメリカをバックとした金正男政権の樹立を阻止するために、中国側が暗殺したとする推測です。

 第3の推理は、米中合意に起因するとする説です。先日、トランプ大統領は、一つの中国の原則を尊重する方針を示しましたが、その際の”取引”に、北朝鮮関連も含まれていたとする推測です。この仮説を補強する材料があるとすれば、トランプ大統領が、北朝鮮に関しては、特に中国の役割を期待する旨の発言をしていることです。米中間で、北朝鮮において金正男政権を樹立させるという合意が成立していた場合、それを察知した金正恩現政権が、先手を打ってこのシナリオを潰したとする見方も成立の余地があります。

 第4に留意すべき点は、北朝鮮の背後には、ロシアといった米中以外の国も蠢いていることです。仮に上述したように、米中間で何らかの合意が成立していたとしても、必ずしも、主犯は金正恩政権とは限りません。同政権をサポートしている第三国が、北朝鮮に対するコントロールを維持するために、戦略的な意図からこの暗殺を企てたのかもしれないのです。

第5に、事件発生から現在に至るまで、様々な情報が錯綜しているところにも、背後で国際的な情報戦が繰り広げられている様子が垣間見えます。何が事実であるのか、一般の人々には正確に伝わらないように、各国の情報機関等により隠蔽や捏造などが行われている可能性があります。

 ベトナム人とされる実行犯の女性二人は、既に口封じのために殺害されているとの情報もあり、真相究明は困難を極めることでしょう。しかしながら、白昼堂々と想像を絶する手段で暗殺が実行される現実を前にして、日本国、並びに、国際社会が、この世が野蛮や邪悪に満ちている現実を直視する機会となったかもしれません。如何にして野蛮や邪悪と闘ってゆくのか、その覚悟をも問われているように思えるのです。

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コメント (6)
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