伊勢崎市議会議員 多田稔(ただ みのる)の明日へのブログ

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自治体予算等の研修報告 パート2

2013-07-24 15:25:34 | 行政経営
石原俊彦教授の研修報告2回目です。
話の流れで過去のブログと重なる話もありますが
ご容赦ください。



(ファシリティ・マネジメントとアセット・マネジメント)

行政改革などでミクロな部分(木)にばかり目を奪われてはいけない。
大きな問題(森)にも目を向けよ。公共施設白書などでは、道路などの情報が抜けてしまう。
これからは、過去につくってきた水道、道路、橋、下水道などの
インフラが老朽化するので、それらの更新や大規模修繕が必要になってくる。
その費用負担は膨大なので、自治体の将来負担を考える上で見逃してはならない。

ファシリティ・マネジメント*1は、
今存在する公共施設について最適な管理運営を追及する活動。
しかし、これでは不十分。
「そもそもその施設がその自治体にとって今後も必要なのか?」
から議論を始めなければならない。
保有する全ての不動産に関する財務分析、資産価値の評価などを行い、
不動産経営全般の総合管理の有効活用法を提案する
アセット・マネジメント*2に取り組むべき。

 *1)公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会は、
 FMを「企業・団体等が保有又は使用する全施設資産及びそれらの利用環境を
 経営戦略的視点から総合的かつ統括的に企画、管理、活用する経営活動」と定義。

 *2) Asset Management:計画的に施設の整備や維持・管理を行うことで
 寿命を延ばしたり、利活用や統廃合などで無駄をなくし保有総量を小さくしたりする。
 1970年代後半のアメリカで生まれた考え方とされ、日本では大都市圏を中心に
 同様の取り組みが始まっている。

<多田感想>
構想日本が実施している事業仕分けにおいても、
個々の施設や事業の有効性や効率性を検討する前に、
「そもそも、その自治体にそれが必要なのか?」を検討します。
その段階で不要と判断されれば、予算をつけたり運営方法を検討する必要もありません。

必要と判断された施設の運営については、ファシリティ・マネジメントも有効ですが、
まず大事なのは、自治体が保有するインフラの範囲を全て見渡す作業。
これはアセット・マネジメントの領域です。

日本では、戦後たくさん作ってきた道路や水道などの膨大なインフラが
これからは老朽化のため更新期を迎えます。
これまでの公共事業は、ひたすら新しいものだけ作っていれば足りました。
しかしこれからは、国土交通省も予測しているとおり、老朽化したインフラの更新や
大規模修繕に予算をまわさなくれはなりません。この点を自治体や議員は
よく自覚しておく必要があると思います。



(国・県事業の市町村負担金を見落とすな)

インフラの老朽化にともなう市町村の負担増について、
見落としてしまいがちなのが負担金である。国が行う国道や河川事業について、
法律に基づき地元の市町村に「直轄事業地方負担金」*1が求められる。
また、県が行う事業についても同様な「市町村負担金」*2が求められる。
市町村は自ら所有するインフラの将来負担費用だけでなく、
国や都道府県から求められる費用負担についても把握しなければならない。

 *1)直轄事業地方負担金:国が行う直轄事業にかかる費用の一部を
 地方公共団体が負担する制度。地方財政法により地元自治体に
 費用の一部負担が義務付けられ、道路法・河川法などに国と地方の
 負担の割合が定められている。直轄事業負担金制度。地方負担金制度。
 直轄事業のうち道路・河川事業については、国が一方的に計画・実施し、
 地方は費用負担のみ求められてきた。そのため、必ずしも地域の実情に
 そぐわない事業が行われたり、地方自治体の財政を圧迫していることが
 指摘されるようになった。

 *2)市町村負担金:公共工事など国直轄事業の費用の一部を市町村が支払う
 直轄負担金制度と同様に、県実施の事業費の一部を市町村に課している。

<多田感想>
道路まで含めて、自治体が保有する全ての資産をアセットマネジメントで管理しても、
まだまだ見落としがありました。それは国や県が実施する公共事業の負担金です。
将来、いつの時期に、どれくらいの金額が請求されるのか予測できなければ、
自治体経営はできません。大きな問題であると感じました。



(人口減少の影響)

日本の人口は長期的に減少するので、税収の減少などの影響がある。
しかし、一番影響が大きいのは地方交付税の減額。
交付税は人口や面積などの要素を基に算出される。

ある市の例では5年毎に行われる国勢調査の結果を反映して、
5年毎に4億円収入が減っていくことが分かった。
これまでのような行革や、職員削減などの対応では追いつかない。
各自治体は影響を試算しておく必要がある。

市町村合併後に総合支所を残しているような自治体は
合併のメリットを生かしたコスト削減ができていない。
しかし今のところは地方交付税の中に総合支所分の費用が算入されているので、
行革で総合支所を減らした自治体は交付税が減るので、
自治体の収入の面からだけ見れば、行革をがんばった自治体が
損をするような仕組みになってしまっている。

<多田感想>
日本の人口は100年後には現在の3分の1になると予測されています。
現在の交付税制度が続くとすると、各自治体は国勢調査の結果に合わせて
5年毎に地方交付税が激減していきます。
これは1回きりではなく、ずっと続くのです。

したがってそれに対応するには、
一時的な人員削減や業務の廃止などでは追いつきません。
人口減少に比例して歳出を抑える仕組みを考えなければなりません。

例えば道路は山奥や田んぼのあぜ道まで立派に舗装されています。
しかしこれは今生きている人口に対応して整備・管理されているのですから、
人口が半分になるならば、道路にかける予算も半分にしていくことが
妥当ではないでしょうか。

私の住む伊勢崎市では、山奥の地域はありませんが
自治体によっては人が住まなくなった地区の市町村道を廃止したり、
交通量の少ない道路の舗装をやめて、砂利や土の道にしていくということが
これからの日本では現実になっていくのではないでしょうか。



(内部監査は財政課が行うべき)

自治体には内部監査機能が無い。監査委員は外部。
監査委員会事務局職員による事前調査が内部監査に当たるという意見もあるが、
事務局員は外部監査を行う監査委員を補佐する立場なので、内部監査とは言えない。
出納局などが行っているのは支出のための書類確認だけ。

自治体の中で事業の意味が分かっているのは予算をつけた財政課だけなので、
財政課の中に監査を行う機能を持たせるのが良い。
財政課は現場を知らないので2次情報しか持っていないが、
監査においては現場へ行って直接関係者の声を聞く1次情報が大事。

岡山県瀬戸内市は監査委員会事務局のほか総務課に内部監査室を置いている。
最近は、随意契約を逃れるための企画コンペ入札がすごく多い。
財政課は執行伺いの段階でよくチェックすべし。特定の業者に発注する
理由があるなら堂々と随意契約すればよい。
現在の監査委員の監査は3~5月は行われていないので、
この時期に不正が発生する危険がある。財政課はよく注意せよ。

長野県知事は、予算を削るのは自分と副知事だけだとうめいている。
部長は県庁全体の予算をぜんぜん考えていない。
監査を行うには専門的知識や能力が必要だが、小さな自治体では人の確保が難しい。
長野県知事は長野県の自治体が共同で利用できる監査機構を作ってもよいと考えている。

<多田感想>
内部監査は財政課が行うのが適しているという指摘は新鮮でした。
たしかに事業目的や事業内容を理解した上で財政課が予算をつけたのですから、
その趣旨どおりに執行されているかをチェックするのは財政課が適任です。

財政課の仕事は「予算をつけて終わり、あとは知らない」ではなく、
正しく執行されているか、意図した成果が出ているかまで
きちんと把握・コントロールできることが望ましいのです。

たしかに、事業費が大きな場合は、役所内部の執行伺いの段階で
財政課へ書類を合議していました。そのとき財政課がすべき仕事は
「予算書どおりの金額か確認して終わり」ではなく、執行方法についても
適切であるのかまで目を通す必要があるようです。
自治体の中で「予算作成→チェック→評価→予算作成」のサイクルが
機能しなければなりません。


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3 コメント

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読ませていただきました。 (神谷明彦)
2013-07-27 09:16:42
同じ研修に参加していた者です。
講義のポイントに、ご自分の理解・解釈を加えて、とても丁寧に整理されているのに脱帽です。
ブログ・FB等で引用・紹介させていただいてよろしいでしょうか?
返信する
コメントありがとうございます  (多田稔@伊勢崎市議 )
2013-07-27 19:37:12
神谷様、コメント頂きましてありがとうございます。他の自治体の財政課職員に混じり、町長さんが自らが二日間も研修に出席された姿勢には感服しました。研修の講義内容はボリュームありますので、何回かに分けてブログで報告する予定です。つたない文章でございますがご自由に引用・紹介していただきたいと思います。今後ともよろしくお願いします。
返信する
こちらこそよろしくお願いします。 (神谷明彦)
2013-07-28 10:21:24
さっそくのリプライありがとうございました。

私も2年ほど前まで議員をやっていましたので、皆さんと一緒に勉強することにさほど抵抗感はありません。

議会改革(いまちょうどフォーラムをやってますね。)にも興味があります(ました)が、さすが立場が変われば・・・で、ひいては住民のためとはいえ議会にあまり強くなってもらっては困るのも本音のところです。
昨晩、地域の夏まつりで議長さんと雑談していて「何の努力もなしにとりあえず議会を強くしようと思ったらすぐにできる簡単な方法があります。自治法にのっとって議長の任期を4年とすることです。」と申し上げました。もちろん、二元代表制の中で、本当の意味で議会を「強く」するには、議会として意思決定責任をきちんと負うことは言うまでもありませんし、住民参加も進めて、説明責任も果たすことが前提になると思います。

余分なことを書いてしまいました。今後ともよろしくお願いします。
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