伊勢崎市議会議員 多田稔(ただ みのる)の明日へのブログ

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公務員を受験するにあたって

2013-04-26 18:35:52 | 行政経営
公務員希望者の方とお話しする機会がありました。
これからの公務員をめぐる厳しい状況と、
参考になる本などについてお話させて頂きました。

「公務員は安泰」という幻想を抱かずに、
それでも公務員を志す熱意のある方の
就職と活躍を御期待いたします。



<日本の状況>

人口は長期にわたって減少します。かつて無いほどの高齢化が出現します。


むかしは11人の勤労者で一人の高齢者を養っていました。現在は2~3人です。
これからの公務員は、一人の勤労者が一人の高齢者を担げるように、
歳出の削減や、歳入の拡大を実現しなければなりません。


高度成長期につくった公共財が建て替えの時期を迎えます。
新規の建設費に回す予算はなくなります。


日本の国の借金は、GDP比でギリシャ以上に拡大しています。


昨年の国の予算です。
歳入に占める税収は42兆円。
一方歳出は、地方交付税と厚生労働省の予算だけで税収を超えてしまいます。
事業仕分けでいくつかの事業を廃止するどころではありません。
どうやってプライマリーバランスを達成したらよいのか。




<ネバダ・レポート>

国の借金がふくらみ、GDP比で200%を超えました。
破綻危機のギリシャでさえ140%です。このままでは、国の財政破綻が本気で懸念されます。
破綻した場合に備えて、公務員はどのように備えたらよいのか、研究しています。

以前ご紹介した世界通貨基金が作成したとされる「ネバダレポート」には、
日本が財政破綻し、IMFの管理下に入ったら、次の8項目が実行されるだろうと
指摘されています。
 1 公務員の総数、給料は30%以上カット、
  及びボーナスは例外なくすべてカット。
 2 公務員の退職金は100%カット。年金は一律30%カット。
 3 国債の利払いは5年から10年間停止。
 4 消費税を20%に引き上げる。
 5 課税最低限を引き下げ、年収100万円以上から徴税を行う
 6 資産税を導入し、不動産に対しては公示価格の5%を課税。
 7 債券、社債については5から15%の課税。
 8 預金については一律ペイオフを実施し、第二段階として、
  預金を30%から40%カットする。
国民に大きな影響が出ますが、地方公務員にとっては1と2が直接影響します。



<夕張市の事例>

近年財政破綻した夕張市の例です。(人員60%減)退職手当は
5年間で最大4分の1まで削減するため、18年度の3月末で退職したほうが、
5年後の給与と退職金を合算した所得よりも多くなる職員が続出。
職員が計画を上回って60%減少したため、市役所機能そのものが崩壊の危機。

夕張市職員の年収は4割から5割減少、月額給与は3年間約3割減、現在は約2割減。
もし破綻すれば、住民感情としては、政治家だけでなく、
行政を担ってきた公務員に対しても非難の矛先を向けると思います。

もし、国の財政が破綻すれば、地方交付税や補助金など、
多額の国からの収入を得ている地方自治体もただではすみません。
国民、住民に大きな負担を強いることになるのですから、
財政再建や行政改革を実行する前に、まず政治家や公務員が
自分の身を切る姿勢が強く求められると思います。

夕張市が破綻した時は、夕張市だけの破綻でしたので、
札幌などへ行けば通常の雇用はありました。
しかし、国の財政がもし破綻した時は、全国の自治体で
いっせいに職員数削減や、給与削減が行われると思います。
これでは、求職者があふれ新たな転職先を見つけるのは
相当の人材でなければ採用されないと思います。

このような状況に備えるには、役所内だけで通用する人脈や仕事のノウハウではなく、
世間一般でも通用する仕事力を伸ばしておく必要があります。
もちろん、仕事力が高まれば、転職しなくても公務の中でより質の高い仕事が行えます。
また、採用先がなくても力があれば自分で起業する道もあります。

高い倍率の公務員試験を経て入った時は優秀でも、
民間と比べてぬるま湯と言われるお役所体質に何も考えずに
何十年もどっぷりとつかってしまうと立派なお役人になってしまいます。
世間では「お役所仕事」はほめ言葉ではありません。

しかし、行政職員の方は、能力や成長していく可能性を
もっともっと持っていると思います。
役所仲間だけでのつきあいや価値観を持つのでなく、広く社会や学びの場、
交流の場にみずから飛び込んで、自分を磨いてください。



<公務員は行政のプロ>

行政の使命は、より質の高い行政サービスを、より効率的に提供すること。
そのために行政職員と行政組織は、絶えず自己研鑽して行政改革を進めなくてはなりません。
行政職員は、その仕事をすることで給料をもらっているのですからプロです。
社会は絶えず変化していますので、行政も絶えず適応していこうという主体的な意識が必要です。



<キャリア・デザイン>

主体的に仕事に取り組むことは、自分の「キャリア・デザイン」を意識することでもあります。
長い職業人生の中で、自分は何がしたいのか、何に喜びを感じるのか、
どのように仕事に取り組もうとするのか、を意識する作業です。

「公務員になりさえすれば一生安泰」は過去の話です。
もしも公務員に「なること」が目標だった人は、なった時が能力と意欲のピークで、
あとは下がるばかりでしょう。公務員になったときはゴールではなくスタートです。
いかに、より良いサービスを、より安く住民に提供できるか工夫することが仕事の本番。
そのためには絶えず勉強が必要です。

「言われたことしかできない」あるいは「言われないとできない」ならば、
正職員として雇う必要はありません。必要なときだけ来てもらって、
指示した作業をしてもらえば終わりです。
これからの職業人生が長い若い方には、ぜひ、
「あなたでなければできない仕事」を意識してほしいと願います。



<デザイン>

よい仕事をする上で、デザイン力はとても重要です。
ここで言う「デザイン」は、物の外形をデッサンすることではありません。
たとえば、その地域の将来の姿を構想したり、市場の変化を予測して
どのように対応していくべきか考えたり、今の組織の体制や仕事のやり方を、
再構築したりすることです。

行政や個人レベルにおいても、「デザイン」とは、本当の課題とは何かを、
ぎりぎりまで追求し、自分や組織は、どのように取り組むべきかという
基本姿勢を追求する作業です。「決断」とは、あれこれ色んな事を考える事ではなく、
ムダなものをそぎ落として行く作業です。デザイン作業の前半部分に似ています。

一番大事なものを見極めたら、それに対してどのように取り組むべきか、
自分の取り組み姿勢を考え、仕事の構造や手段、手順を考えることが
デザイン作業の後半部です。

デザインにおいて「今だけ良ければ良い」という考え方では。
発展はおろか存続もできないでしょう。将来の時間軸も考慮し
環境の変化を織り込んで仕事や人生のデザインはしなければなりません。
自治体職員にとってもデザイン力は仕事をする上で最も必要な能力の一つでしょう。
地域の将来の姿を構想し、それを達成するためには、今からどのように準備し
取り組んでいかなければならないのか考えます。

公務員として、「デザイン」を意識して主体的に仕事に取り組むのか。
逆に、上司に言われたことを、決められたとおりにするだけで定年を待つのか。
意識するとしないとでは、仕事の質が全然変わります。
見えないものが見えてくるのです。

どんな職場でも、デザインを意識した仕事を重ねていけば、
どこへ転勤・転職しても、通用する能力が育ちます。



(参考図書)

仕事
「働き方革命―あなたが今日から日本を変える方法」駒崎弘樹 筑摩書房756円
「僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか?」星海社新書 860円+税

デザイン思考は仕事に役立ちます
「佐藤可士和の超整理術」日経新聞社 2007年 1575円
「佐藤可士和のクリエイティブシンキング 」日経新聞社2010年 1575円
「デザイン思考が世界を変える」ハヤカワ新書 1300円+税

実務
「新版 問題解決プロフェッショナル―思考と技術」
「問題発見プロフェッショナル」―「構想力と分析力」
「問題解決ファシリテーター」―「ファシリテーション能力」養成講座



(重要なおまけ)

高知県庁を舞台とした映画「県庁おもてなし課」がまもなく公開。とても楽しみです。
同名の小説を基にした作品です。若手公務員の掛水が、なぞの人気小説家の指導を受けて、
県庁アルバイトの多紀ちゃんと一緒に高知の観光振興に取り組みます。

私は高知大学で5年間学びました(ドイツ語の単位が取れなくて)。
サイクリング部に所属し、高知の山や海、川を走り回りました。
映画に出てくる風景をみると、その場所の風や匂いも感じられます。

公務員を目指す方にとっては、これから厳しい環境が待っていますが、
この映画はさわやかな風を運んでくれます。

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