夜間中学訪問レポート その１

何回かに分けて、自主夜間中学活動と、
夜間中学（夜間学級）を見学の報告をします。
　訪問日　平成２８年２月２３日（火）
　場　所　「えんぴつの会」　墨田区墨田5-49-5「旧隅田小学校」内(４月移転予定)
　　　　　「墨田区立文花中学校（夜間学級）」　墨田区文花１丁目２２－７
関係の皆さま、たいへんお世話になりました。
ありがとうございました。



（自主夜間中学）

私と、群馬在住で夜間中学校の支援活動をされている
Ｓ氏の２名で「えんぴつの会」を訪問・見学。
なお、生徒さんに余分な緊張を与えないように、
事前に連絡して、スーツではなく普段着で訪問させて頂きました。





自主夜間中学である「えんぴつの会」は、
もと夜間中学の教員だった方たちがボランティア講師となり、
夜間中学の卒業生たちを教えている活動。

そこで学ぶ生徒たちは高校進学を目指して勉強している。
夜間中学を卒業しても学力が足りないため、自主的な勉強会を続けている。

３クラスに分かれ、数学や国語、日本語学習などの授業が行われていた。
年配の生徒が多いが、とても向学心にあふれ、
真剣で温かい雰囲気の中で授業が行われていた。
教育の原点を見た思いです。

授業見学後、
会代表の見城氏と講師の関本氏、事務局長の澤井氏から事情を聴取。


「えんぴつの会」見学終了後、
見城氏、関本氏のご案内により４名で文花中学校へ移動。



(夜間中学）

夜間中学は正式な名称でなく、正しくは既存の中学校の夜間学級。
墨田区文花中学校夜間学級を見学させて頂きました。

文花中学校の場合は、昼間の教員の職員室と、夜間の教員の職員室や
教室などは別になっています。

校長は昼と夜間の兼任、副校長は二人体制で、それぞれ昼と夜間の専任。
夜間学級の授業のようすを見学後、副校長の片庭氏から事情を聴取。
見学の合間に、見城氏と関本氏からも各地の夜間中学の活動や
自主夜間中学の動き等について聴取。

夜間学級は３学年あり、それぞれ学年に複数のクラスがあり学力別編成。
９教科を学んでいるが、そのほかに日本語が不自由な外国人用に
日本語習得クラスが設けられており、まず日本語の習得を半年程度学んでから、
学科のクラスに合流します。



生徒の構成はさまざま。
高齢者は戦後教育の機会を得られなかった日本人の方のほか、
在日の外国人の方が多いようです。
もっと若い成人の生徒は、中国から帰国した日本人の関係者の方など。
１０代の若い生徒さんは、いろいろな国から来日された方が、
高校受験資格を得るために学ばれれている例が多いようです。

概して、若い方は学ぶスピードが速いので、
半年ほどで日本語を使えるようになると、
２年生に編入し、その後１年勉強して、合計２年ほどで高校受験という流れ。
あまり夜間中学で時間をかけてしまうと、進学や就職のニーズに間に合わず、
結果的にドロップアウトしてしまうのでスピード感を持って指導。



（墨田区の夜間中学の歴史）

都内には８つの夜間学級があり、墨田区では文花中学が唯一の学校。
平成１１年、吾嬬第三中学校と曳舟中学校が統合され文花中学校が開校。
夜間学級は、統合された曳舟中学校の夜間学級を引き継いだので、
学校よりも夜間学級の歴史のほうが長い。

曳舟中学校に夜間学級が設置されたのは昭和２８年(1953年)5月。
当時墨田区は、都内で最も小規模・零細な工場が密集した地帯だった。
生活のため家業などを手伝っていた義務教育未修了者がかなり多く、
墨田区内の長期欠席率は3.4％だった。(27年度の伊勢崎市の中学生の不登校率は3.3％)。
（データ：学校基本調査・中学校）

夜間中学が開設された5月の在籍者は76名だったが、翌月には151名に倍増。
学齢児は推計で約3分の1。
生徒の毎月の平均欠席率は2日と少なく、生徒の要望によりその年の夏休みは
ほとんどなくして授業を行うなど、働きながら学ぶ生徒たちの学習意欲は
目を見張るものがあった。

現在の文花中学夜間学級の卒業式には、区教育長を始め、全教育委員、
区議会議員、全中学校長、全ＰＴＡ会長、地元の自治会長さんなど、
70名もの来賓が出席されます。すごい応援団です。
苦労して学んだ人を区として祝ってあげようという昔からの区の伝統だそうです。

文花中ではクラス数や教職員の配置、教室の教育設備などたいへん充実しており、
区の総力をあげて夜間学級で学ぶ人を応援していることが伝わってきました。