北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

国産国消

2013-08-06 23:50:16 | Weblog

 もう15年も前に、ドイツへ視察へ行かせてもらったことがありました。

 ドイツでは初めて見るいろいろなことに目からウロコの一週間でしたが、通訳をしてくれた現地在住の日本人女性の方と話をしていて、スーパーで売られている牛肉の話になりました。

 ドイツでは、高いドイツの国内産牛肉と安い輸入牛肉が売られていましたが、その方は「輸入肉はどういう育てられ方をしているか分からないから、私たちは高いけれど国産の牛肉を買います」と言いました。

「では安い牛肉は誰が買うのですか」と訊くと、「それはトルコから移民で来た人たちでしょうね」とさらっと言うので驚いたのです。

 自分たちが作るものには安心と自信があって、それならば価格が高いことも許す、という考え方には、「安ければ安いほど良い」という、当時の日本の風潮よりもずっと進んでいると感じました。


    ◆    ◆    ◆
 

 相前後して、日本でもガット・ウルグアイラウンドで農産物の関税化移行とミニマムアクセスが導入されました。

 ウルグアイラウンド対策として細川内閣は、『事業費6兆100億円、国費2兆6,700億円のウルグアイラウンド農業合意関連国内対策事業費を予算執行した』と言われていますが、それはその後どのような効果を生み出したのか、どうも釈然としないところがあります。

 被害をこうむるであろう農家対策、農民対策、農村対策としての予算であったかもしれませんが、どうやらそれは国民向けの対策ではなかったようです。

 昨今のTPP参加問題で日本としては、コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖の重要5分野の関税維持を主張する方針とされていて、自民党でも5分野を関税撤廃の例外となる「聖域」として扱うよう政府に求めています。

 この先この交渉がどうなってゆくか分かりませんが、仮に求める成果が得られないままに開放されてゆくとしたら、それを防ぐのはわが日本国民の心の準備の要素も強いのではないでしょうか。

 今でも家庭がスーパーで農産品を買うときには、安い外国産とちょっと割高な国内産が選べて、国産を買うことはできます。

 しかしそうした『内食』はお米でも肉でも国内産を選べても、惣菜などの『中食』や、まして飲食店での『外食』となると、一体どこのどんな素材を食べさせられているかの表示もなければ選ぶこともできません。

 そんなことよりも関心は、宴会が3千円でできるか、4千円になるか、5千円になるかということの方が大きいものでしょう。

 各お店が、それぞれ自分たちが出す食材の産地表示などを丁寧に行って、それを店を選ぶ我々がどう考えるか、というような機会もきっかけもまだまだ少ないように思えます。

 居酒屋さんなどはときどき緑の提灯に星が描かれていて、地産地消度を表すような取り組みが行われています。

【緑提灯】 http://midori-chouchin.jp/

 TPPの議論で「入れさせるのか入れさせないのか」ということ並行して、「私たちが口にする食材をどう考えるか」というキャンペーンや運動論、価値観にももう少し火が着くような取り組みがあっても良さそうに思います。

 そうした後に初めて、単に安いだけではない安全で安心な食材を選ぶことの意味と意義が浸透して、TPPに負けない気構えにならないものでしょうか。

 ただそれにしても、国産へのこだわりが薄い砂糖や麦、あるいは海外物をありがたがる乳製品などは辛いかもしれません。

 もう充分に食料も輸入しないとやれない日本と分かっていながら、やはり食も一人一人の生涯学習が必要だと思うのです。

 

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1 コメント

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Unknown (亜果樹)
2013-08-07 05:43:37
安くて高度技術を駆使した工業製品や金融・情報商品などを輸出できる国は良いが、農産物や軽工業しかない国はそれを売って工業製品や金融・情報商品などを買うしかない。
それが国家間と言うより地域分業と言うものだろう。
日本が食の完全自給が出来ないというより、バナナや魚介類などは我が国では安くでは出来ないモノもある。
農地を所有しない大多数の国民の選択枝確保も国益であることが無視されてはならないと思う。
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