きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

米国の税制「改革」法案 法人減税競争に拍車

2017-12-08 12:16:45 | 経済・産業・中小企業対策など
米国の税制「改革」法案 法人減税競争に拍車

トランプ米大統領が選挙中から公約に掲げてきた法人税の大幅引き下げが議会で大詰めを迎えています。現在35%の連邦法人税を20%に引き下げます。日本では経団連が早速これを受けて法人税のさらなる引き下げを要求しています。経済協力開発機構(OECD)が警告している「有害な税の引き下げ競争」に拍車をかけることになりかねません。
(山田俊英)

11月に下院、12月2日に上院でそれぞれの税制「改革」法案が賛成多数で可決されました。今後両院で一本化し、大統領が署名すれば施行されます。法人税減税は上院案で2019年開始、下院案で18年開始と実施時期に違いがありますが、連邦法人税を20%に引き下げる点は同じです。
米国では現在、米企業の海外子会社からの配当に35%の税率で課税していますが、これを廃止します。
個人所得税については、所得額による税率の段階区分を減らしたり(下院案)、最高税率を引き下げたり(上院案)します。



12月2日、ニューヨーク証券取引所近くで政府の税制「改革」に抗議する人たち(ロイター)



与党からも懸念
トランプ政権や与党、共和党は減税が海外から投資を呼び込み、経済が成長すると主張します。しかし、米議会の合同税制調査委員会は、経済成長が見込めるものの、減税によって拡大する財政赤字は今後10年間で1兆ドルを超すと試算しました。
トランプ政権は減税などの成長戦略によって「年3%成長」が実現し、税収が増えるとしていますが、疑問視されています。上院では与党からも財政悪化を懸念する声が上がり、税率引き下げを22%にとどめる案も出されました。米国の財政赤字の拡大は世界経済にも悪影響を及ぼします。

恩恵は富裕層に
米国の民間世論調査機関、ピューリサーチセンターが行った調査では43%の人が「大企業の法人税を上げるべきだ」と答えました。「下げるべきだ」は24%しかいません。「一部の企業は応分の負担をしていない」と答えた人は62%に上りました。
法案の所得税「改革」については、シンクタンクのタックス・ポリシー・センターが、所得上位1%の人に減税分の6~8割が集中すると試算しました。ピューリサーチセンターによると、60%の人が「一部の富裕層が応分の負担をしていない」と批判しています。

日本経団連も早速要求
経団連の榊原定征会長は4日の記者会見で「米国がどんと下げたから、先進国の中で日本は圧倒的に法人税が高い国になる。(法人実効税率)25%への切り下げは今まで以上に強く要請しなければならない」と強調しました。




日本の法人実効税率(国税と地方税を合わせた税率)は「世界で一番企業が活躍しやすい国をめざす」安倍晋三政権によって12年度の37・0%から16年度29・97%に下げられ、18年度にはさらに29・74%に下げる計画です。経団連はそれでも不十分だと言うのです。
大企業には研究開発減税や連結納税制度などさまざまな優遇措置があり、大企業が実際に払っている法人税が利益に占める割合は法定の税率を下回っています。
もともと法人実効税率は1980年代末には50%程度でした。歴代自民党政権は財界、大企業の要求によって次々に引き下げ、消費税をその穴埋めにあててきました。法人税のさらなる減税は大企業の利益を増やすために国民を犠牲にするものです。
財界、大企業が口実にしてきたのが他国の税率との比較です。国同士が法人税率の引き下げや大企業優遇税制を競う「有害な税の競争」が1990年代から国際的に大きな問題となってきました。各国が競って大企業減税をすれば、税収が減り、庶民増税や社会保障の削減となって国民にしわ寄せされます。OECDは98年に報告書をまとめ、「有害な税の競争」が税の公正さを損ない、「労働、財産、消費に対する税負担が重くなる」と警告しました。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年12月7日付掲載


法人税や富裕層への税率の引き下げ競争は、貧富の格差を増長、税収の落ち込みなどがあり、OECDが警告。
アメリカはもとより、日本の政府もその指摘を重く受け止めるべき。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする