きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

生き物はぐくむ宝箱・水田

2010-10-28 18:37:51 | 環境問題・気候変動・地球温暖化について
生き物はぐくむ宝箱・水田

 多様な生き物をはぐくむ場として、水田を中心とした農村の役割が注目されています。名古屋市で開かれている生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)でも水田の重要性が議論されます。水田と生物多様性について長年研究を続けている、山本勝利・農業環境技術研究所上席研究員に聞きました。(間宮利夫)

国際生物多様性年
 水田とその周辺には、メダカ、トンボ、カエル、さらにタカの仲間のサシバのような鳥から、秋の七草にあげられる植物まで、実にいろいろな生き物が見られます。水田は人間がつくったものなのに、これだけ多くの生き物がいるのは、水田がつくられている場所と関係があります。



水田とその周辺には、それぞれの環境に応じたさまざまな生物がすんでいます(山本勝利・農業環境技術研究所上席研究員提供)


もともと水
 歴史的に見て、最初に水田がつくられたのは、水がわき出ているところや湿地のような、もともと水があった場所でした。そこには以前から水生植物や水生毘虫など、水を必要とする生き物のすみかでした。水田になっても水は一年中ありましたから、以前と変わらず利用できました。
 江戸時代になって土木技術が発達し、大きな川のそばにも水田をつくれるようになりました。そこは、トキやコウノトリのような大型の鳥の餌場でしたが、水田に変わった後も同じように餌をとることが可能でした。
 水田の周りには水を供給するための水路やため池があります。ギンヤンマやゲンゴロウのように、季節によって水田とため池を使い分ける生き物は、両方存在することで生きていけるのです。水田は、水が張られた田面と、乾いたあぜで成り立っています。両者が混在することで、水がある所と無い所を必要とするカエルが生きていけます。多くの水田は林と隣接しており、サシバのような鳥は木の上からあぜなどにいるカエルを探すことができます。草原も水田の周りにふつうに見られました。かつて、田起こしや運搬といった作業にウシやウマは欠かせませんでしたから、餌を確保するのに草原がどうしても必要でした。そこにはキキョウやオミナエシなど、秋の七草に数えられる草花が生えていました

風土に応じ
 水田自体にも、風土に応じたさまざまな形態があります。たとえば谷津田です。ゆるやかな谷につくられた水田と、それを取り囲む雑木林からなる谷津田には、森林性の植物から草原性の植物、湿地性の植物までいろんな植物が生えていて、それぞれの植物を利用するさまざまなチョウなどの昆虫が生息しています。
 一つの谷津田で、ゲンジボタルとヘイケボタルがすみわけているのを見て調べたことがあります。谷津田では周りの雑木林からしみだす水がいくつもの水路をつくり、水田を潤します。原因はその水路の違いでした。
 ゲンジボタルは流れの速いところを好むカワニナを餌にしているのに対し、ヘイケボタルはほとんど流れのないところを好むタニシを餌にしていたのです。水田がつくりだす生物多様性を実感した事例の一つです。
 トンボはもっと極端です。水田のトンボ、水路のトンボ、ため池のトンボ、大きな川のトンポと、みんな種類が違います。ですから、谷津田のようにさまざまな要素がそろったところと、都市の水辺にいるトンボの種類を比較すると、谷津田の方が約2倍多いことが明らかになっています。
 水田とは、あぜや水路、ため池、雑木林、草原などがセットになって成り立つシステムです。それだからこそ、水田は多様な生物をはぐくむ場となってきたといえます。ところが、いま、水田を中心とした農村の風景は大きく変化し、それにともなって、そこにすんでいたさまざまな生き物が姿を消しつつあります。メダカのように、だれでも知っている生き物が絶滅の危機にひんしているということさえ起こっているのです。(次週へ)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2010年10月25日付に掲載


同じ水辺でも、水田、農業排水河川、わき水の土水路、ため池などいろんな形態がある。同じ林でも、松林、神社林、雑木林、まぐさ場などいろんな形態がある。それによって、生物の多様性がたもたれているんですね。
人間が一手間、手を入れているからこそ保たれている貴重な自然です。
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