460)なぜ、がんが増えているのか

図:古代社会ではがんは極めて稀な病気であったと言われている。現代社会においてがんの発生が増えているのは、人為的な発がん要因が社会の近代化とともに増えているためである。タバコ、オゾン層破壊による紫外線増加、排気ガスによる大気汚染、環境や医療目的での放射能被爆、電磁波(携帯電話など)、飲酒(アルコール)、運動不足、高糖質高脂肪食、肥満、糖尿病、ストレス、交代制勤務、加工肉や食品添加物、薬品や発がん物質などの発がん促進要因は近代社会になって出現し、年々増加している。がんの発生を予防するためには、食生活や生活習慣や生活環境の中から発がん要因を避ける努力が最も大切で、さらに積極的にがん予防の対策(免疫力・抗酸化力・解毒力の増強など)を実践することが重要である。

460)なぜ、がんが増えているのか

【日本では現在1年間に約100万人が新たにがんと診断されている】
がんは日本において1981 年より死因の第 1 位であり、全死亡の 30%以上を占めています。
国立がん研究センターによる予測によると、2015年の1年間に新たにがんになる患者数(がん罹患数)は約98万人で、1年間のがんによる死亡数は約37万人というデータを発表しています。
人口の高齢化に伴い,日本におけるがんの罹患数は男女とも1970年代後半から増加し続けています。今後も増加し続けると考えられています。
がん罹患数の増加は人口の高齢化だけによるものではありません。人口構成の影響を排除した年齢調整がん罹患率でも増加しています。つまり、日本では、同じ年齢で比較してもがんの発生が増加しているのです(下図)。

図:日本の場合、年齢調整のがん罹患率(1年間にがんが発生する率)は、男女とも「1990年代前半まで増加しその後横ばい、2000年前後から再び増加」となっている。

2005 年のがん罹患数は 676,075 人で、1975 年の約 3.2 倍です。年齢調整罹患率で比較すると、1975 年に比較して、2005 年 の年齢調整のがん罹患率は男性では 約1.5 倍、女性では 約1.4 倍になっています。
罹患率や死亡率の年次推移を比較するとき、年齢調整した罹患率や死亡率で比較されます。 年齢調整(age-adjusted)というのは、基準となる集団の年齢構成(基準人口)に合わせて補正した値で、年齢調整した(同じ年齢構成と仮定して計算した)数値を比較することによって、高齢化などの年齢構成の変化の影響を取り除くことができます。
日本では昭和60年の人口構成が基準にされることが多く、米国では2000年の人口構成が基準にされることが多いようです。
年齢調整がん罹患率が増加しているのは、日本ではがんの発生率を高める要因が増えていることを示唆しています

【がんの年齢調整死亡率は減っている】
日本や米国のような先進国では、1年間のがんの発生や死亡の絶対数は増えています。 これは、人口の高齢化が原因です。 (日本人の女性の乳がんは高齢化とは関係なく、年齢調整罹患率も死亡率も増加しています。出産回数の減少や初潮年齢の低下、閉経年齢の上昇、不規則な生活など高齢以外の要因が乳がんリスクを高めているためと思われます)
日本の場合、数年前(2008年)から人口が減少しているので、いずれがんの発生や死亡の絶対数は減ってくるはずですが、それは30年くらい先の話です。総人口は減っても65歳以上の高齢者の絶対数は2045年頃まで増え続けると予測されているからです。
国立社会保障・人口問題研究所の『日本の将来推計人口』によると、65歳以上の人口は2013年の約3000万人から2043年の約3650万人まで増え続け、それ以降は減少するということになっています。
絶対数では増加していますが、年齢調整死亡率で比較すると、日本も米国も1990年代後半から年齢調整がん死亡率は減少しています。(下図)

図:日本における全がんの年齢調整死亡率(10万人あたりの全がん死亡数)の年次推移を示している。年齢調整がん死亡率は女性では1960年代後半から減少し、男性は1990年代後半まで増加し、それ以降は減少している。全体として全がんの年齢調整死亡率は1990年代後半から減少している。

図:米国における全がんの年齢調整死亡率(10万人あたりの全がん死亡数)の年次推移を示している。米国では1990年頃からがんの年齢調整死亡率は減少している。

年齢調整のデータで、がんの罹患率が増加しているのに死亡率が減少しているのは、 診断法の進歩で早期に見つかるがんが増えてきて根治率が上昇したことと、治療法の進歩によって治療成績が向上したことが主な理由と言えます。
例えば、全がんの5年生存率は1970年代は50%程度でしたが、最近では65%程度に向上しています。 がんの発生を減らすことができれば、がん死をもっと減らすことができます。 理論的にがんの発生を半分にできれば、がん死も半分になります。
問題は、日本ではがんの年齢調整罹患率が増えていることです。がんの発生を促進する原因が増えていることになります。その原因を理解して、それに対処していかないと、がん死は減らないと言えます。

【糖尿病が増えている】
平成19年
国民健康・栄養調査結果(健康局総務課生活習慣病対策室)によると、 平成19年の時点で、20歳以上人口(全体約1億400万人)のうち、糖尿病が強く疑われる人は約890万人、糖尿病の可能性を否定できない人を合わせると約2,210万人と推計されています。
このデータは今から8年前のデータで、現在ではもっと増えています。 糖尿病は1960年代くらいまでは極めて稀な病気でしたが、現在では5人に一人が糖尿病と言われるくらいに増えています。(下図)

図:日本における2型糖尿病の有病率の年次推移を示す。1960年代まで糖尿病は稀な疾患であったが、現在では20%を超えている。

糖尿病ががんの発生を増やすことは多くの研究で確認されています。 多くの疫学研究で、糖尿病が発がんリスクを高めることが確認されています。
日本で行なわれた大規模調査では、糖尿病と診断されたことのある人はない人に比べ、20~30パーセントほどがんの発生率が高くなることが報告されています。
 最近のメタアナリシスによると,糖尿病は非ホジキンリンパ腫,膀胱がん,乳がん,大腸がん,子宮内膜がん,肝がん,膵がんなどの発症リスクを高めることが示されています。

さらに、糖尿病があるとがんの進行が早く転移しやすいことも指摘されています。
高血糖や高インスリン血症ががん細胞の増殖を促進するからです。(216話参照)
様々なメカニズムで、糖尿病はがんの発生や進展を促進するので、日本で糖尿病患者が増えていることは、がんの発生が増えている原因の一つと言えます。 

【男性の肥満と女性の低体重が増えている】
がん予防では標準体重に維持することが重要です。肥満も痩せ過ぎもがんの発生を促進します
男性の場合、肥満が増えています。女性の場合は、特に若い人で痩せ過ぎが増えています。 肥満ががんの発生を促進することは多くのエビデンスで支持されています。 肥満はインスリン抵抗性を高め、高インスリン血症を引き起こし、インスリンはがんの発生や進展を促進します。(155話参照)
多くの疫学研究から、大腸がん、乳がん、膵臓がん、子宮体がん、腎臓がん、胆のうがん、肝臓がんなど多くのがんの発生率が肥満によって増えることが示されています。
 さらに、肥満ががん治療後の再発率を高め生存期間を短くすることも多くの報告で明らかになっています。肥満ががんの発生や進展を促進する理由の第一は、インスリンの血中濃度が高くなるからです。(375話参照)
痩せ過ぎも免疫力や抵抗力を低下させ、がんの発生や再発を促進することが明らかになっています。
肥満度の指標としてBMI(Body Mass Index)が使われます。これは体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)で求められ、このBMIの標準値は22で、標準から離れるほど有病率が高くなることが知られています。

痩せ過ぎは太り過ぎよりも短命であることが、多くの疫学研究で明らかになっています。 痩せた人では、免疫力や治癒力が低下し、呼吸器感染症などによって死亡する率が高くなるようです。
痩せががんの発生率を高めることも明らかになっています
日本人ではBMIが30以上の高度肥満の人の割合は2~3%程度であるので、肥満によるがん発生の影響はあまり問題になっていません。日本ではむしろ痩せ過ぎによる発がんリスクの方が問題視されています。 (152話参照)
つまり、標準体重から離れた人の割合(男性での肥満と若い女性での痩せ過ぎ)が増えており、これもがんの発生を増やす原因になっています。

図:肥満(BMIが25以上)と低体重(BMIが18.5以下)の割合の年次推移。男性では肥満者の割合が増えており、女性(特に20~40歳代)では低体重(痩せ)が増えている。肥満も低体重もがんの発生率を増やす。

また、身長が高い人ほど発がん率が高いことが知られています。
500万人を超えるスウェーデン人男女を対象とした研究で、背が高いほどがんリスクが高いことが示されています。
この研究では、成人時の身長が10cm増えるごとに、がんリスクが女性では18%、男性では11%高まることが判明しています。長身の女性は乳がんの発症リスクが20%高まるほか、男女ともに身長が10cm増えるごとにメラノーマ(悪性黒色腫)のリスクが約30%上昇することも示されています。(詳細はこちらへ
身長が高いということは体表面積も体積も大きくなるので、皮膚に発生するメラノーマになる細胞も、がんになる細胞も増えるので、個体当たりの発がんリスクが上がるのは簡単に納得できます。
身長が高いほど寿命が短いことも良く知られていますが、身長による寿命と発がんリスクへの影響は類似のメカニズムで説明できます。(390話参照)
国民健康・栄養調査による計測値では、日本人の男の平均身長は、1950年の160.3cmから2010年の171.5cmへと10cm以上(7.0%)伸びています。女性の平均身長も、同時期に、148.9cmから158.3cmへとやはりほぼ10cm(6.3%)伸びています。
明治時代から比べると、男女とも15cmほど身長が伸びています。 身長の伸びだけで、10~20%程度の発がんリスクの増加を説明できます。

【24時間営業が増えている】
人間は昼間働いて、夜暗くなれば眠るというのが自然です。夜間も明るい電気が灯っているという状況はがんの発生を促進します。 夜間に光を浴び続けると、メラトニンの分泌が低下し、免疫力が低下し、がんの発生が増えることが報告されています。
メラトニンはヒトの体内時計を調節するホルモンとして、快適な睡眠をもたらし、時差ぼけを解消するサプリメントとして評判になりましたが、最近の研究で若返り作用や抗がん作用や免疫増強作用なども報告されています。

がんの発生率を検討した疫学研究のメタ解析では、国際線の乗務員では70%、交代制勤務の職種では40%の乳がん発生率の上昇が認められています。前立腺がんに関しては、国際線の乗務員では40%の発生率の上昇が認められています。(Naturwissenschaften 95: 367-382, 2008)

世界保健機関(WHO)の附属組織で人間への発がんリスクの評価を専門に行っている国際がん研究機関(IARC)は、2007年に概日リズムを乱す交代制の仕事(shift-work)を、発がん作用の可能性がある(group 2A)と分類して発表しています。
24時間行動可能な近代のライフスタイルは生体の概日リズムを乱す要素が多くなっており、人間のがんの発生リスクとして無視できなくなったことを意味しています
概日リズムの乱れが発がんリスクを高め、がん細胞の増殖を促進する理由は様々な要因が関与していると考えられます。

メラトニンの分泌は光によって調節されています。目から入る光によってメラトニンの産生は少なくなり、暗くなると体内のメラトニンの量が増えて眠りを誘います。
メラトニンには免疫力や抗酸化力を高める作用や、がん細胞の増殖を抑える効果があるので、睡眠が不規則になってメラトニンの体内産生が少なくなるとがんになりやすいという意見があります。
概日リズムの乱れた生活は、体調不良や免疫力の低下、内分泌系や消化器系の不調の原因になり、がん細胞に対する抵抗を低下させることは容易に予想できます。 (122話参照) 

図:(上図)メラトニンは脳の松果体から分泌され、体の概日リズム(サーカディアン・リズム)の調節に重要な役割を担っている。夕方になって暗くなると松果体からメラトニンの産生が始まり、夜間にメラトニンの血中濃度が上昇し、真夜中(午前2時から4時ころ)にピークに達する。メラトニンは分泌開始から10~12時間で分泌を中止し、急激に血中濃度が低下し、午前7時ころに最低になって覚醒する。
(下図)概日リズムの乱れた生活は、体調不良や免疫力の低下、内分泌系や消化器系の不調の原因になり、未病を引き起こす重要な原因になっている。さらに、がん細胞や病原菌や様々なストレスに対する抵抗力を低下させ、様々な病気の発症原因となる。規則正しい生活と十分な睡眠は未病や病気の改善に大切である。

【ストレスは免疫力を低下させ、がんの発生を促進する】
1936年にハンス・セリエ博士がストレス学説を発表してから、心が重要な因子となって体の病気を引き起こす「心身症」という病気が理解されるようになりました。
ストレスとは元来、ひずみ応力を意味した力学的用語ですが、セリエ博士によって精神と身体のひずみへと拡張されました。
種々の感情がどのようにして身体の機能に影響を及ぼすのか、情緒が神経系や内分泌系や免疫系に影響するメカニズムが研究されています。
脳の働きが免疫系の機能を左右するといった考えは1970年代までは多くの研究者から受け入れられず、免疫系は独立して機能する生体防御システムであると考えられていました。しかし、精神(心)と神経系や免疫系の関係を研究する精神神経免疫学(Psycho-neuro-immunology)という研究領域も認知され、感情がホルモンや神経伝達物質を介して神経系に作用し、さらに免疫機能を始めとする種々の生体機能に影響することは、今や常識となっています。
ストレスは、肉体的であれ精神的であれ、適度であれば生体機能を活性化して治癒力を高めることになります。しかし、過度のストレスは逆に生体機能の異常をきたす原因となります。
過度のストレスが健康に及ぼす最大の悪影響は免疫力を低下させることにあります
人間はストレスが与えられると、交感神経が刺激され、副腎皮質からステロイドホルモンが分泌されます。
副腎皮質ホルモンは抗ストレス作用があるのですが、免疫細胞のリンパ球はこのホルモンに弱く死滅していきます。またマクロファージの貪食能も低下させます。
不安や恐怖心などの精神的ストレスがあると、食欲がなくなり、不眠に陥って体調が崩れます。交感神経の緊張は消化管運動や分泌を抑制するので、このような状態が長く続くと、消化吸収機能の低下の原因となり、栄養障害から免疫力の低下の原因になります。
交感神経の過緊張は、血管を収縮させて組織の血液循環を障害し、新陳代謝や治癒力を低下させてがんが再発しやすい体質にします。 胸腺・脾・骨髄・リンパ節などの免疫担当器官へも自律神経が分布しています。自律神経はこれらの免疫器官の血管を支配し血流調節を司るのみならず、一部は免疫器官の実質に終わりリンパ球に直接作用して免疫反応を調節することが明らかになってきました。
例えば、脾臓のNK細胞活性は交感神経活動によりアドレナリンβ受容体を介して低下します。
このようにストレスによる交感神経の異常緊張は体の免疫力を低下させて癌に対する抵抗力も減弱させてしまうわけです。
逆に笑いや精神的な安心がNK細胞活性を高めることも良く知られています。
現代社会は、様々な理由でストレスの多い生活を強いられるようになっています。
平成19年の
国民健康・栄養調査では、ストレスの状況は、「大いにある」、「多少ある」と回答した者は、男女ともに、20~40歳代で7割を超えていました。 ストレスの多い社会生活もがんの発生を増やす要因になっているようです。

図:ストレスは様々なメカニズムで免疫を抑制し、がんの発生を促進する

【運動不足はがんの発生を増やす】
平成19年の国民健康・栄養調査によると、運動習慣のある者(1回30分以上の運動を週2日以上実施し、1年以上継続している者)は25~30%程度です。
日常生活における歩数の平均値は、男性で7321歩、女性で6267歩となっており、「健康日本21」の目標値である男性9200歩、女性8300歩に達していません。
適度な運動は心身両面から体の治癒力を高めて病気を予防します。
適度な運動は様々な方法で治癒系の働きを活発化します
血液の循環をよくし、体の代謝を盛んにし、気分を爽快にして、ストレスを緩和し、リラクセーションと快適な睡眠により体の治癒力を向上します。
適度な運動によって、ナチュラルキラー細胞活性の上昇など免疫機能が高められることも報告されています。
動物が繰り返しストレスを受け、そのストレスを吐き出す身体的なはけ口が与えられないと、体の状態がどんどん悪化します。しかし、動物がストレスを受けても、体の運動ができる場合には、ダメージを受ける量は最小限ですむという研究があります。
運動がストレスの適当なはけ口になると免疫力と高めることにもつながります。つまり、規則的に体を動かすことは、ストレスの結果おこる生理的産物をうまく吐き出させるための手段として、一番適当な方法であり、体の自然治癒力や防御能を刺激する作用があります。
運動には、身体的な利点と同時に、大きな心理的変化も起こすことがあります。
規則的に運動している人は、運動していない人に比べて、考え方が柔軟になりやすく、自己充足感が高く、抑うつ感情も軽減します。抑うつ感情は健康維持に悪い影響を与えるため、規則的な運動によって抑うつ状態から抜け出すことは、心身を健全な状態にもっていき、免疫力にも良い影響を与えます。
運動は様々なメカニズムで体に良い影響を与え、生活習慣病を予防し、がんの発生や再発を予防する効果もあります。
米国がん協会は、通常の健常人の場合、がんや心臓疾患や糖尿病の発症リスクを減らすためには、週に5日以上、1回に30~60分間の中等度から強度(かなり活発)の運動を行うことを推奨しています

【がん発生は発がんの促進因子と抑制因子のバランスで決まる】

がんの発生率は、食生活や生活習慣や生活環境によって大きな影響を受けます。
 世の中には、がんの発生を促進する因子(発がん促進因子)がんの発生を抑制する因子(発がん抑制因子)があり、そのバランスによってがんの発生リスクが決まります。

発がん促進因子の代表は喫煙や飲酒や糖質や動物性脂肪の多い食事です。その他、放射線や紫外線やディーゼルエンジンやガソリンエンジンの排ガスなども発がんリスクを高めます。
(トップの図参照)
世界保健機関(WHO)の付属組織で人間への発がんリスクの評価を専門に行っている国際がん研究機関(IARC)は、発がんリスクを5段階に分けて報告しています。

たばこ、紫外線、B型・C型肝炎ウイルス、放射線、アスベストなどは発がんリスクがある(Group 1)と分類されています。

ディーゼルエンジンの排ガスは発がんリスクの可能性が高い(Group 2A)、ガソリンエンジンの排ガスは発がんリスクの可能性がある(Group 2B)に分類されています。

2011年にIARCは携帯電話の電磁波が脳腫瘍の一種であるグリオーマや耳の神経の腫瘍のリスクを高める可能性がある(group 2B)と発表しています。
家電製品などから出る超低周波の電磁波も発がんの原因となる可能性がある(group 2B)と分類しています。

2007年には概日リズムを乱す交代制の仕事(shift-work)を、発がん作用の可能性が高い(group 2A)と分類して発表しています。夜勤の多い看護師や、国際線の乗務員のように概日リズムが慢性的に乱れやすい職業の人では、他の職業の人に比べて、乳がんや前立腺がんの発生率が高いことが報告されています。
放射線については、発がん作用があるのは確かですが、発がんリスクはその被曝量に比例します。累積被曝量が100ミリシーベルト以下では発がんのリスクは無視できるというのが一般的な意見ですが、それに反対する意見(低線量被曝でも発がんリスクに影響する)もあります。
 日本人の場合、CTなどの放射線検査による医療放射線被曝量(年間一人平均2~3ミリシーベルト)が自然被曝量(年間一人平均1.5ミリシーベルト)を超えていることが問題視され、医療放射線と自然放射線による年間一人平均3~4ミリシーベルトの放射線被曝が日本人に発生するがんの原因の3%程度を占めていると推測されています。3%というのは年間2万人のがん発生に相当します。(医療放射線被曝の問題については226話参照)

このような発がんリスクの原因をみると、社会の人為的な発がん原因が増加し、それによって人類のがんが増えているのではないかという推測ができます。


【現代社会では発がん促進要因が増えており、がんは文明病である】
がんは汚染や食事などの環境因子によって引き起こされる現代病で,ヒトによってつくり出された可能性が高い」とする研究結果が報告されています。
例えば、古い時代のミイラの遺体を検査した研究などで、古代においてはがんは極めてまれな疾患であったと推測されています。 がんの罹患率は産業革命以降、劇的に増加し、特に小児がんで顕著であったことから、がんの増加は単に寿命延長の影響ではないことが示唆されるとしています。
古代の自然環境にはがんの要因になるものは存在せず,がんは環境汚染や食事・ライフスタイルの変化が原因の人為的疾患と考えざるをえない」という意見です。
日本においてがんが年々増えていますが、この数十年に関しては、人口の高齢化が一番の原因です。がんは加齢とともに発生率が増えてくるからです。
しかし、この数100年間のがんの発生率の増加をみると、高齢化よりも、近代工業化に伴って人為的な発がん要因が増えてきたことの方が重要のようです
大気汚染や医療放射線被曝による発がんが増えています。交代制勤務による概日リズムの乱れや、ストレスの増大も発がんを促進するようです。アスベストや電磁波や食品添加物などここ数十年に出現した新たな発がん要因もあります。
近代化に伴って、生活は便利になり、寿命も伸びてきましたが、このような社会環境の変化ががんを増やす要因にもなっている点も注意する必要があります。
がん予防の基本は、発がんを促進する要因を減らすことです。避けられるものは避けるのが基本です。
しかし、完全に避けることはできませんので、がんを抑制する効果のあることを積極的に実践することが大切です。
食生活では野菜や果物や豆類を多く摂取し、ストレスをためない、適度に運動する、などがあります。さらに、免疫力や抗酸化力や解毒力を高める方法としては、ハーブや漢方薬が有効です。日頃から植物性の食品を多く摂取し、がん予防効果のあるハーブや漢方薬を利用する方法は、発がん要因の多い近代社会におけるがん発生の予防法として有効です。

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