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「朽ちていった命 被曝治療83日間の記録」 NHK「東海村臨界事故」取材班

2024-05-07 00:01:16 | 読書
実は、NHKのドキュメントでやっていたのをみている。
書籍版がこれで、様々に出版社を変え今の最新はこの新潮文庫版だ。
映像でみたのと今回文字でみるのではまた印象が違うが、映像の再確認ができる。
少し読んで、時代だろうか?この取材班の上から目線感が伝わる気がする。この主人公は、大内さんである。猛烈に被曝し、直後に嘔吐し意識を失う。病院に運ばれたときはまだ意識があり、数日は理性的に会話もできたのだ。このノンフィクションでは、医師たちが、未曾有の事象で勝ち目のない戦いに立ち向かっていく勇ましい姿を描いている。だから医師たちは呼び捨てでいいだろう。しかし、この患者である大内さんを呼び捨てにしているのには違和感を感じる。もちろん、定められた手順に従わず、逸脱した手順で製造していた点では、違反者(咎められるべき対象)ではある。だからといって、大内と呼び捨てにされていいのだろうか?被曝以来、悪い人物だと言う視線で見ながら、回復することなくただ朽ちていく運命の人物をあたかも好奇心で見ているようにしか思えない。いや、朽ちていった命(という表現自体が、対象をものとしている気がしないでもないが)に対して尊厳がない。今(2024年)ならアウトだろう。
前川はリーダー。平井は無菌治療部。東大病院救急部婦長小林。同じく看護師の細川。
平井が大内の細胞の写真を見ると染色体が区別できないほどバラバラになっていた。59ページに実際の写真がある。
妹から造血幹細胞を移植された。妹は体格が小さかったため、G-CSFで増やす処置を受けていた。
被曝11日までは大内さんは気丈にかつ普通に回りに接していた。
それ以前の10日。疲れやすくなる。大内さんはチェルノブイリの事を知っていて、自分にそれを重ねる。また、胸に貼った医療用テープ剥がすと皮膚がそのまま持っていかれ再生しなくなった。それゆえ、医療用テープは使用禁止となる。
被曝27日目。大内さんの右腕から体の右側の皮膚が再生しなくなり、包帯を変えるたびに皮膚が剥がれていく。また目蓋は閉じない状態に。ときどき目から出血し、血の涙を流しているようだった。原爆の被爆者もこうだったのではないかと名和純子看護師は思った。
被曝から約3週間。培養皮膚を移植することになる。自家培養は不可能なため妹の皮膚を太股から2×4cm採取し愛媛大学に送られ培養された。
20240507。NHKのドキュメントを録画したものを見つけた。ブルーレイではなかった。記憶違いだった。ブルーレイの無い時代だったためパソコンで録画したものをDVDにしたものを保存していた。これがみたかったのだ。と思っていたら、直後にYouTubeにあるのを見つけた。
被曝59日目。
心停止が起きる。3回心停止が起きたが蘇生措置により3回蘇生する。ただ、合計49分心拍が途絶えたため、腎機能不全となり透析を開始。肝臓も不全となった。
 
被曝した時点でほぼ運命は決まっているのだろう。直後は全く普通の人と変わらない。それ以降再生、修復という活動は不能となる。細胞分裂はもちろん、蛋白合成もされないのだから、生理現象は営われない。この恐ろしさ、虚しさ。
広島長崎の原爆も、熱線、爆風で命を失ったほか、実際には放射線による、こういった症状で命を落とした人たちもいるだろう。
そしてあえてこれを狙った中性子爆弾というものもあるらしいが、最悪な兵器だ。
 
20240503読み始め
20240507読了