碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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【新刊書評2024】 市毛良枝『73歳、ひとり楽しむ山歩き』ほか

2024年04月15日 | 書評した本たち

 

 

「週刊新潮」に寄稿した書評です。

 

市毛良枝『73歳、ひとり楽しむ山歩き』

KADOKAWA 1650円

山は眺めるものと思っている人間は、登山と聞くとややひるむ。重い荷物、苦行、危険といった言葉が思い浮かぶからだ。しかし、山歩きなら少しハードルが下がる。著者によれば、山は「自分らしくなれる場所」であり、「自分で見聞きしたことしか信じない」ようになったという。また自然を味わうだけでなく、山でしか出会えない人たちの魅力も伝わってくる。眺めても歩いても「山は文化」だ。

 

福田恆存『福田恆存の言葉~処世術から宗教まで』

文春新書 1100円

今年は福田恆存の没後30年にあたる。本書は1976年から翌年にかけて行われた全8回の講演録だ。常識と思われている「近代化」への批判も含め、福田ならではの視点で語っている。個人が人生を生きていくための「処世術」再評価。また社会生活は「自分以外は敵だ」というかたちで営まれており、敵情視察として「状況を読む」必要があると説く。生き方を「技術の問題」とする発想が新鮮だ。

 

尾崎俊介

『アメリカは自己啓発本でできている

 ~ベストセラーからひもとく』

平凡社 3080円

18世紀末にアメリカで誕生した「自己啓発本」。アメリカ文学・文化が専門の著者が、いわば「出世指南書」であるこのジャンルを徹底分析していく。成功への道をひらくための「自助努力系」と「引き寄せ系」の2大潮流にはじまり、ポジティブ思考、アメリカ流お金持ち哲学などが並ぶ。ちなみに本国以外で最も売れているのが日本だ。つい笑ってしまう「トホホ系」啓発本の実態も明かされる。

(週刊新潮 2024.04.11号)

 


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