遊心逍遙記

読書三昧は楽しいひととき。遊心と知的好奇心で本とネットを逍遥した読後印象記です。一書がさらに関心の波紋を広げていきます。

『原爆写真 ノーモア ヒロシマ・ナガサキ』 黒古一夫・清水博義 編 日本図書センター

2022-08-21 15:10:06 | レビュー
 地元の図書館に本の返却に行くと、原爆関連書籍のコーナーが特設されていた。8月6日ヒロシマ、8月9日ナガサキ、77年目が巡って来た後、1週間余が経っていたが、その中から2冊借り出してきた。その内の1冊である。

 本書は、2005年3月に初版第1刷として刊行されていた。本書のことは知らなかった。
 原爆がヒロシマとナガサキに投下されてから、60年という時が経った時点で編纂された本。先日、『ヒロシマの空白 被爆75年』(中国新聞社)が目に止まり読んだ結果をご紹介した。本書はさらに15年前に、No More を主張するために編纂された本だった。

 冒頭の表紙に見るとおり、日本語・英語のバイリンガルで記されている。その意図は明らかに、本書が日本人に対して、原爆の悲劇が過去の事でなく、今もなお継続している進行形の問題であることを主張すると同時に、世界に向けた発信という意図で英語併記しているのだろう。非核が60年を経た時点でも進展していないことを訴えている。一方で、原爆についての事実が風化を始めていることへの警鐘を鳴らす書でもある。日本人に対して、そして世界に向けて。
 風化への懸念は、『ヒロシマの空白 被爆75年』にも一層色濃く反映している。
 原爆投下により発生した事象と事実、それが未来に向い継続進行している問題であり、その点を自覚するうえでも、決して意識を風化させてはならないと再認識させる書である。

 本書の「はじめに」の後半に記されたメッセージを引用する。
「戦後60年-その歴史の原点に、この被爆体験がある。それは平和の原点であると同時に、人類が直面している『核時代』の原点でもある。
 原点を風化させてはならない。事あるごとに原点に立ち返り、私たち自身のありようや日本・世界の未来を考えねばならないと強く思う。」

 本のカバーを開くと、最初に「広島被爆地図」が載っている。裏のカバー内側には、同様に「長崎被爆地図」が載る。この地図にも英語が併記されている。すべてバイリンガル。 次の見開きページの左1/2に「はじめに」のメッセージがあり、残り1ページ半には、広島に投下された原子爆弾が炸裂した後に3機のB29爆撃機のうちの1機が撮影したキノコ雲の写真が大きく背景に使われ、内表紙となっている。
 ひょっとしたら、「キノコ雲」と聞き、「それ何? シラナイ」という世代、人々が既に増えてきているのではないか・・・・・・そんな危惧を抱く。つい先日のあの「フクシマ」でさえ、意識の風化が始まっているかもしれないのだから。

 本書は生々しく悲惨この上ない原爆写真を中軸にして、広島・長崎で何が起こり、どんな状況が発生したのかを提示する。どういう問題事象が継続しているか、何をしなければならないか。そして、まず、No More Hiroshima, Nagasaki の実現をめざすために、原点を風化させてはならないと警鐘を発しているのだ。

 目次の大項目並びに内容の一端をご紹介しよう。
   広島            原爆写真とその説明文
   長崎            同上
   表現された「地獄」の諸相  絵画に表現された事例を取り上げる
   原爆遺品          3人の中学生の衣服・三輪車・解けたビン・時計等
   被爆を超えて、いま     被爆者の体験記(山岡ミチコ・谷口稜嘩)
   外国人被爆者        外国人被爆者がいた事実・実態、その後
   核なき世界を求めて     60年間の動向と諸相。この時点での事実データ

 そして、峠三吉の『原爆詩集』の序
   「ちちをかえせ ははをかえせ 
    としよりをかえせ
    こどもをかえせ
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
の詩を皮切りに要所要所に、栗原貞子作「生ましめんかな」、中川美苗作「学徒」、福田須磨子作「花こそはこころのいこい」、原民喜作「コレガ人間ナノデス」、山田かん作「武器」の各詩が挿入されていく。
 
 目次項目の各項には、5編の寄稿文も併載されている。「新しき生き方を」(平岡敬)、「若い人たちへ」(林京子)、「悪魔の申し子を、だれが-」(井上ひさし)、「広島を何度も歩いた」(広河隆一)、「もう一つの福竜丸のこと」(松谷みよ子)。
 原爆写真は折りにふれ見る機会があった。だが原爆写真の示す事実は幾度見てもその都度衝撃的である。その次に本書で井上ひさしの寄稿文が強烈に印象に残る。
 井上ひさしの寄稿文は、冒頭のパラグラフの末尾「けれども、投下までの事実の経過を正確に克明に辿って行くと、びっくりすることに、共犯者が大勢いたのです。」から始まる。そして「・・・・こう考えがまとまってからは、わたしは指導者というものを一切、信じないことにしました。」と最後に著者は決断する。その内容は実に衝撃的だった。

 次の事実をあなたはご存知でしょうか?
 広島 ウラニウム原子爆弾 TNT1トン火薬爆弾の1万2500倍以上のエネルギー
 長崎 プルトニウム原子爆弾 TNT1トン火薬爆弾の2万2000倍以上のエネルギー
     ⇒エネルギーの15%が熱線、50%が爆風、15%が放射線エネルギーと推定
 これらの原子爆弾は1945年時点での開発結果である。
 その後、更に現実には核兵器開発が促進された。原子核兵器は性能がはるかに強化された一方で小型化もされてきたという。それが世界に配備され溢れている。

 No More 
 HIroshima,
 Nagasaki

 まだまだ、緒についた域をでていないと思う。原点を風化させてはならない。

 ご一読ありがとうございます。

本書から関心の波及で、ネット検索してみた。一覧にしておきたい。
「この傷を、撮りなさい」 原爆を撮り続ける覚悟  戦跡-薄れる記憶-:「NHK」
被爆直後のヒロシマ 写真で見る惨状の記録「人」編  :「中國新聞」
原子爆弾  :ウィキペディア
ヒロシマ型原爆(ウラン原爆)  :「原爆先生の特別授業」
ナガサキ型原爆(プルトニウム原爆) :「原爆先生の特別授業」
Bombings of Hiroshima and Nagasaki - 1945 :「Atomic Heritage Foundation」
Science Today TV: What Actually Happened To HIROSHIMA & NAKASAKI(Mind Blowing...) YouTube
Hiroshima: Dropping the Bomb YouTube
The Effects of the Atomic Bomb on Hiroshima and Nagasaki YouTube
Hiroshima Bombing Story | Tour around the Atomic Hypocenter ★ ONLY in JAPAN
YouTube
75 Jahre Hiroshima: Als die Sonne vom Himmel fiel | DER SPIEGEL YouTube
Atomic bombing of Nagasaki - BBC YouTube
What a Nuclear Bomb Explosion Feels Like YouTube

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こちらもお読みいただけるとうれしいです。
『ヒロシマの空白 被爆75年』  中国新聞社  中国新聞社×ザメディアジョン
『原爆供養塔 忘れられた遺骨の70年』  堀川惠子  文藝春秋 
『決定版 広島原爆写真集』「反核・写真運動」監修 小松健一・新藤健一編 勉誠出版
『決定版 長崎原爆写真集』 「反核・写真運動」監修 小松健一・新藤健一編 勉誠出版
『第二楽章 ヒロシマの風 長崎から』 編 吉永小百合 画 男鹿和雄 徳間書店


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