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松井ゆみ子のアイルランド・キッチン・ダイアリー「外食」

2006-08-21 01:33:03 | 松井ゆみ子のキッチン・ダイアリー
 減量大作戦を敢行して以来、幸か不幸か胃袋が少し縮んだようで、レストランで食事をする機会が、以前に比べてぐっと減りました。特にディナーは、よほど気をつけて注文しないと、食べきれずに辛い思いをしてしまいます。

シーフードの盛り合わせ。この量はふたりでシェアしてちょうど。
 モダンな料理を出す店では、量も洗練されて小ぶりになってきてはいますけれど、まだまだアイルランドのお客さんたちは、どーんとたっぷりの食事を好むので、シェフたちは彼らの腹をたっぷりと満足させるのに懸命で。草食動物のわれわれ日本人としては、アイルランドでの外食は体力が要ります。

 まー、トシのせいもあるのですが、年々「おいしいものをちょびっとずつ食べたい」と、わがままなことになってきてまして。日本の美しい食文化に「晩酌」があげられると、最近つくづく思うのです。ちまちまとした肴をつまみながら、お酒をいただくシアワセ。

 アイルランド人は、夕方家でしっかり食事をした後、パブに繰り出すという習慣が今も続いていて、飲むか食べるか、ふたつにひとつという姿勢を貫いています。食事とワインを楽しむ人はずいぶんと増えましたけれど、飲むとなったら生ビール!という点は、変わっていないように見受けられます。

 マークも私の影響で、酒のつまみ、という新たな概念を植えつけられ、パブでも「何かつままないとビールがすすまないようになっちゃった」といって、クリスプスなんかをかじっています。

 また彼は、レストランで3コース(スターター、メイン、デザート)を制覇できなくなったといいます。ごめんね、これも私の影響だな。家にいるとき、お昼はパスタやサラダにワインとか、夜も揚げ物にビールとか、日本風なおつまみ系が登場することが多いのですが、マークにとってこういう食べ方は一種のカルチャーショックなのね。

 長く貧しい暮しをしてきたアイルランドでは、お腹いっぱい食べることが、ごちそうのうちと思われてきました。マークもそれが正しい在り方と信じて疑わなかったのでしょうね。今ようやく「腹八分目」という日本の食の美学を学んでいるとこです。

 そんな私たちが外食をするとき。たいていランチか、アーリー・バードとよばれる夕方、ディナーには早い時間帯を選びます。鉄則は、注文しすぎないこと。ふたりでスターター2種とメイン1種をシェア、これにワイン1本というのが基本。まだイケるというときは、デザート食べられるし。

 スターターのメニューはほとんどがとても魅力的です。最近では、天ぷらなんかもあるし。チーズのフリッターも増えましたね。サラダもたいていスターターの中にいます。小さいポーションのムール貝のワイン蒸しとか、生牡蠣とか。気楽な店なら、スターターをふたりで3、4種類頼んでタパス風の楽しみ方も近頃では可能になってきました。

 実際にタパスを売り物にする店も増えてきています。まだ勢いのあるケルティック・タイガーたちは、さかんにホリデーを旅行に費やしており、ヨーロッパ各地で食文化の在り方を体験してきているので、今後はアイルランドの外食産業もさらに変化していくはず。でもね、そうなるとまた、昔ながらの肉と温野菜どーんの食事が懐かしくなったりして。食いしん坊の注文は、いつだってわがままなもんです。


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